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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第12章 ルルテとレイレイの剣術訓練
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ルルテとレイレイの剣術訓練 その1

▼登場人物


晶角士(男 24歳) ガリエタローング・ガリン・エンジシ

王女(女 12歳) ルルシャメルテーゼ・ルルテ・マレーン・ソノゥ

女官A(女 32歳)  ジレルンマーナ・ジレ

衛士 ストレバウス・オウジシ

半竜半人 レイレイ


マレーン次元文明暦13年 第1力期が終わり、季節はすっかり春になっていた。

第1力期には、初等教育機関の卒業や、元服の儀があり、慌ただしい初春であった。


そのルルテの元服の儀の1つとして、能力石の開放を行い、またレイレイも生力石を手に入れ、正式にガリンの養子となった。予定外ではあったが、レイレイはルルテの後見をも得た。

ないより予定外で言えば、『生涯の片翼』の件であったが、これはある意味ルルテに騙されたものでもあり、あの場に何かが決まった訳でもなかった。

それでも、生涯をルルテの護士として側にいること、宰相として重責を負う可能性が発生してしまったこと、更にはルルテの伴侶になるかもしれないこと、ゆっくりと研究をしたいガリンにとっては、非常に迷惑ともいえる状況であった。


それでも、ルルテの側にさえいれば、研究の資金や設備の援助を受けることもできそうだし、何より12歳の子供が仕掛けた一種の罠だ。王がどこまで事を真剣にとらえているかも、あの場でははっきりとはわからなかった。王はルルテをからかいはしたが、その場で約束は避けた。

まだ将来は未確定であるのだ。

これから、まだ領地巡察の旅があり、ルルテも大人に成長をする。それらのことは、また事が起きたときに考えればよいのだと、この時はガリンは、状況を未来の自分に丸投げにすることにしたのだった。


屋敷に到着したルルテは、居間でセルに迎えられて、ようやく落ち着いたのか、成人の儀の報告や宣誓後のガリン呆けた話など、一通りをその場にいなかったジレ、セルやストレバウス達に、自慢げに話をすると、ようやく何かから解放されたかのように、へなへなとソファーに身を任せた。

成人の儀からの帰路で、ルルテからあらかたの話を聞いていたジレがセルにレイレイの生力石のことや、養子となった事情等を説明すると、セルは、


「ルルテ様、お疲れでしたね。姫様の成人、誠におめでとうございます。お話を伺う限り筒がなく王族としての成人の儀のお役目を果たされ、姫様付きの女官としても誠に誇らしく思います。甘い紅茶をご用意致しますので、まずは、おくつろぎください。」


そう言って、ジレにルルテの着替えを手伝うように指示をだし、そのまま目でガリンの頭から足元までを一瞥した。そして、


「ふふっ・・・。」


と、右手で口許を隠してかみ殺した笑い声をあげて、お茶の準備のため厨房に向かっていっていった。

ガリンには、それが衣服のことだけなのか、あるいは、あの『生涯の片翼』を含めてのものだったかは判別は出来なかったが、とりあえず頭を掻いて気にしないことにした。


ストレバウスは、事情をわかったのかどうかはわからなかったが、真面目な顔で一礼をすると、玄関脇の詰め所に戻っていき、ジレは厨房に向かっていったセルの後ろ姿とガリンを交互に見比べて、うんうんと頷いた。


ルルテはさすがに疲れていたのか、ちょっと口を尖らせ掛けたものの、そのまま力なく笑い、この場では流すことにした。


場の雰囲気を感じることが出来なかったレイレイは、すぐに興味を失ったのか、甘いという言葉に魅力を感じたのか、お茶といえば焼き菓子を連想したのかはわからないが、すぐにセルの後を追った。


ジレは、ソファーに座り込むルルテに手を貸して、着替えるために居間を後にした。


1人だけ居間に取り残される形となったガリンは、再び、衣服か宣誓のことか、暫く思案を巡らせたが、


『生涯の片翼に関しては、極めて政治的な事項であり、秘匿性も高いことだろう・・・。ルルテだけで立てた作戦とは思えない、やはりセル達の入知恵なのか、いやそれとも・・・。やはり、一部は話している可能性もあるが、ルルテも王族であり、そのぐらいの機微はわかるだろう。全てを話した上でということはないだろうな。』


と、自問自答し、


『やはり、この格好か。』


そう結論付けて、改めて自分の全身を見て、


「私が選んだ服ではないのですが・・・。」


と、ため息をついた。一度言葉にすると、いつもの黒いローブが無性に懐かしく感じられ、部屋に戻っていった。


その後は、ガリンはセルが淹れてくれた甘い紅茶を飲んで、レイレイはセルからクッキーをもらい、そのまま眠りについたのだった。


ルルテの成人の儀、能力石の開封、予想していなかった宣誓と生涯の片翼の承認、レイレイの

生力石の移植と忙しい1日が終わりを告げたのだった。


ガリンにとっても驚き疲れた1日であった。特に、謀られたといえ一国の王女との『婚約』である。もちろん、すぐに公にされる類いのものでもないし、実際にはどうなるかはまだわからない。しかし、起こったことは全て事実ではある。


そして、成人の儀が終われば、ルルテが王族、そして第一継承権を持つ王女であれば、慣例に基づき、どのような人数の規模、構成になるかはわからないが、少ガリンと成人した王女であるルルテを含め数人で巡察の旅に出ることになる。王国内の領地とはいえ、絶対安全というわけではない。見聞を広げるための巡察ではあるが、ルルテの資質も試される。

これに、更に例の婚約だ。

2人の男女が、連れ立って旅をするのは都合の良い部分もあるが、相手は商家の娘ではない、王女なのだ。

ガリンにもどうなるかは、まったく予想が出来なかった。


それでも、王都を離れるには、準備も含め、まだ時間がある。それまでの間に整理をすれば良いだろう。

ガリンは、そう自分自身の不安を飲み込み、眠りに身を任せるのであった。


やっと、12章に入りました。

12章は書き終わってるので、校正しながらアップしていきます。

前の章の校正をいっきに行いつつになりますので、ちょっとゆっくりめですが

よろしくお願いします。


いのそらん

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