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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第11章 慌ただしい春の1日
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慌ただしい春の1日 その10


「もろもろの子育てに関しては、確かにセルの仕事としておりました。しかし、12歳であり、王女である我が、子育ての知識がないもの致し方がないことではないのですか。精神的な支えとして、我がレイレイを支えていたのです。」


またもや『我』を連呼して、ルルテが喰いさがる。

しかし、王は冷静である。


「仮に、そうであったにせよ、王女であるお前を、竜娘の母親として登録するということは、やはり護士の養い親、つまり護士と夫婦になることに相違あるまい。王族としてその判断は正しいのか。もちろん護士が婿に向いておらんということではないぞ。今、ここでその議論をすることが王族として正しいのかと、問うておるのだ。」


「うっ・・・。」


ルルテが言葉に詰まる。どう考えも王の言っていることは正論であり、また、この場で婚姻をすることもできない。言葉をなくしたルルテを見て、ガリンが安堵のため息をついた。


レンが王に頷き、ルルテに声を掛ける。


「お嬢ちゃんの気持ちは分かった。それでは、どうじゃ? マレーン国 第一王女として。身元引受人となるのはどうじゃ?」


光をなくしたルルテの目に、光が少しだけ戻る。


「王族であるお嬢ちゃんが、レイレイの後見人を直接引き受けることは難しいわけじゃが、何かあったときにガリンと共に身元を保証し、それこそガリンに万が一のことがあったときは、お嬢ちゃんがレイレイを引き取るというものなのじゃが・・・・。」


話を聞いた、ルルテの目が輝く。


「それは、ガリンについで、わたしがレイレイの養育に権限を持つということで相違ないか?」

「ある意味、そうでしょうな。」


レンが、したり顔で返答すると、


「わかった。良きに計らえ。」


ルルテは、満足げに提案を受け入れた。


王、レン、そしてガリンの目が合い、3人ろも苦笑いを浮かべた。

確かに、ルルテが、万が一の時の身元を引き受ける筆頭であれば、無関係な立場ではないが、逆に身分的には何のつながりもない。

いわゆる『関わっている人代表』みたいなものである。

マレーン文化圏においては、特に生力石に情報を記載する必要もなく、あくまでも緊急連絡先のような存在である。

3人とも、レンの詭弁が、面白い様にルルテに刺さったため、苦笑いを浮かべたのだ。


レンは、にっこり笑いながらレイレイに近づくと、生力石を撫でた。

特に登録が必要なものではなかったが、ルルテに提案した手前、何もしないのははばかられた為、おまけでルルテの保護を受けていることを情報として付け加えた。


「娘よ。これで満足してもらえたと思ってよいのだな。そこの護士との件については、別途、話し合いを持つことにしようぞ。

ルルテよ。護士の顔をよく見てみるとよいぞ。お前は、ちゃんと儀式の意味を正確に伝えて、血の口づけをしてもらったのか。

護士は、先程、『生涯の片翼』に関する話をしたあたりから、狐に抓まれたような顔をしておるぞ。

王族とその護士が交わした宣誓と承認の儀であるのだ。撤回はないのだぞ。」


そう、娘に問いかける。

ルルテは、視線をそらして、冷や汗を浮かべながら、


「も、もちろんです。嘘偽りなく我とガリンは、『生涯の片翼』としてお互いを認め合ってるのだ。しっかりと説明も行ったゆえな。」


王とレンが目を細くして訝しむようにガリンを見る。

ガリンが口を開こうとすると、ルルテがすかさず横からやってきて、ひきつった笑みを浮かべた。

それでも、ガリンが再度口を開こうとすると、今度は、ガリンの左足を思いっきり踏んだ。


ガリンは、一瞬だけ苦痛に顔をゆがめたが、この一言で黙る。


「護士よ。まさかとは思うが、余の娘に不満はあるまいな。」


王の目は笑っていない。

ガリンは、頷いているレンを見て、


「王女より、血の口づけの儀式については聞き及んでおります。限りない誉れでございます・・・。」


力なく、頭を下げたのだった。

ルルテは、満面の笑みを浮かべると、ガリンの横に並ぶように立って、同じく頭を下げた。

実際、王もレンも、


『十分な説明は受けれおらぬのだろうな・・・。』


とは、わかっていたので、ガリンに非がないことはわかっていたが、特に王とて子の親である。

少なくとも言葉で、2人の将来を否定する必要もないことと、娘の嬉しそうな顔をみて、話を一旦収めたのだった。


その後、ルルテとガリンは、レンから能力石はすぐに効果を発揮するものではないことや、能力石が身体的な影響を与える可能性があることの注意を受けた。

また、近いうちに、『元服の儀』があり、領地巡視の旅にでる準備もしなければならない。やることは山積みなのである。


『生涯の片翼』の件については、これから王宮内の派閥に関するいざこざ含め、何年もの調整が必要出ることも告げた。


レイレイもこれから、生力石を得たことにより、身体的な調整や、マレーン王国の国民としての様々な恩恵が受けられるようになる。

今後、それらを勉強しながら、常識を身に付けなければならないことなども説明をおこなった。


すべての話が終わる頃には、日がすっかり傾いてた。それを眺めながら、ルルテとガリン、2人を迎えに来たストレバウスとジレの4人で、屋敷への帰路についたのだった。


時は、マレーン次元文明暦13年 第2力期の終わり、ルルテの元服による能力石解放の儀当日の夕暮れ時である。

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