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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第11章 慌ただしい春の1日
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慌ただしい春の1日 その1

今回の章はいろいろ動きますよー


▼登場人物


晶角士(男 24歳) ガリエタローング・ガリン・エンジシ

国王(男 45歳) ルラケスメータ・メルタ・マレーン・コグソ

王女(女 12歳) ルルシャメルテーゼ・ルルテ・マレーン・ソノゥ

宮廷晶角士(男 111歳) イクスレンザ・レン・エンジシ

女官A(女 32歳)  ジレルンマーナ・ジレ

女官B(女 67歳)  セラミナーニャ・セル

衛士 ストレバウス・オウジシ

半竜半人 レイレイ

ガリンが護士になってから、ルルテとガリンの2人にとってはの最初の大きな通過点とも言える、初等教育卒業試験がようやく終わり、2人も屋敷も少しだけ落ち着きを取り戻していた。

ただ、そんな一方で、国としての状況は刻一刻と深刻な方向に進んでいることは間違いなかった。

文化圏同士の安全協定に綻びが見え始めているとも言い換えることが出来るのかもしれない。

実際、先日レンが話していたように、クエルスには次の密偵も、すでに派遣がされていた。


それでも、王国は春を迎え、大陸中央にあり比較的温暖で、四季がある、ここ王都マレーンは、木々に葉がつきはじめ、花も芽ぶきはじめた。

雪解けとともに、人々の脳裏からは闘技大会の惨劇さえ薄れ始め、表面上は、王国は一気に活気を取り戻し始めてはいたのだ。

ガリンとルルテが日々の生活を送っている、マレーン城左翼に位置する屋敷の小さな庭園も、全身で春を彩ろうとしている最中であった。


初等教育機関の卒業試験日から10日ほど過ぎた日、そして慌ただしい1日は、ルルテの元へ届けられた王国発行の正式な卒業証書から始まったのだった。


要職につく必要性のない、一般の王国民にとっては、この初等教育機関の卒業証書の受理をもって、成人の儀を受ける資格を得るのだ。

彼らは、国が定めた日に、おのおのが学院に設けらた生力石の更新施設で、生力石に初等教育機関を卒業した情報を追記する。これが一般国民の成人の儀である。そして生力石へのこの情報の追記が終わることにより、大人として社会に認められ、誰もが一人前としての生活が可能となるのだ。

例えば、職人であれば徒弟から一人前になる資格を有したことになり、婚姻も可能になる。

角士になりたいのであれば、この時点でようやくその出発点に立つことができたということになる。

それは王女であるルルテの場合も、基本同じであった。


7大文化圏において、生力石は直接その身分をあらわすものであり、身分により色が異なる。

そのため、すべての人間は、生まれると同時に生力石を、左肩、腕の付け根に移植される。

そして、その生力石には、色と共に、その身分を表す、貴族なら爵位も刻まれており、身分が変わると、その情報への書き換えにより、生力石の色も変化するのだ。

各身分の色と爵位は次のように定められていた。


王室・紫 国王コグソ女王ノゥス王女ソノゥ

公爵・紺 公爵キジシ公女キノゥ 

侯爵・赤 侯爵シンジシ

伯爵・橙 伯爵ハッジシ

子爵・黄 子爵ゴジシ

男爵・緑 男爵ナジシ

准男爵・黄緑 准男爵ラナジシ

技爵・青 技爵エンジシ

士爵・黒 士爵オウジシ

商爵・茶 商爵ソコジシ

国民・透明 国民ゴッペ


ガリンは、護士になることによりその生力石は、国民ゴッペを示す透明から、技爵エンジジの青に変わったという具合である。


外見から身分が簡単にわかってしまうため、身分が高ければ高いほど、然るべき場所以外では、俗人にそれらをみられてしまうような危険を侵さないような注意が必要なものであった。

ただ、技爵以下の身分であれば、それほど神経質になる必要もないのではあるが、ルルテはその身分上、生力石を表に出すことは公式の場以外では、まず無いといえた。

生力石は、財布がわりにもなるし、医療的処置の際の基本情報も登録されているため、すべての人にとって最も身近にあり、生活に直結した元力石であり、王族であるルルテが逆に特別ともいえた。


王族にとっての成人の儀は、生力石の情報書き換えよりも格段に重要な、能力石の開封の儀も執り行うことも意味していた。

秘匿性の高い能力石の開封の儀があるため、生力石の色を見られる危険性に加えて、ルルテは他の受験生と同じように学院に設けられた更新所に行くことは出来ない。そのためルルテの成人の儀は、宮廷晶角士であるレンが特別の城の本翼3階左手にある、小会議室で能力石開封の儀と併せて行うことになっていた。


ついでではあったが、この機会に、培養槽で育ち生力石を持っていなく、また、正式にガリンの養子となったレイレイの生力石の移植も行う予定であった。レイレイに埋め込まれる生力石の色は、王国民であることを示す、透明の生力石が用意されていた。


日が真上にあがる頃、ガリンは、ルルテとレイレイを連れて、レンが待つ小会議室に向かって、城の中を歩いていた。

季節もようやく春めいており、ガリンはここ最近ではすっかりお馴染みになった、とてつもなく白い派手なローブに身を包んでいたが、逆に儀式を受けるルルテとレイレイは、生力石の書き換えや移植時にそれらを見せやすい様に、2人とも厚手のローブを1枚着ているだけだった。


『なぜ自分だけがこんな派手な服で・・・。』


そう思わずにはいられなかったが、ルルテの要求は言うだけ無駄であるということも学習済である。ちなみに今朝のルルテの主張は、


「今日は、我の人生に、1度きりの大切な日なのだ。記憶に残るそなたが、そんな花のない装いで良いわけ無いではないか!」


で、あった。


2人のローブの中は、ルルテはメノウ色の髪に良く似合う若草色袖のないワンピースドレスで、レイレイはそれよりすこし濃い緑色のシャツと半ズボンであった。

レイレイは、まだ子供であり、飛んだり跳ねたりできるように、普段から出来るだけ動きやすい服を着ていたのだが、背中の羽と尻尾の都合で、どの服もみな色違いの同じものであった。


「ガリン、なぜ今日は学院ではなく、王城へと向かうのだ?」


ルルテの疑問に関しての答えの内の1つは王家で秘匿されている内容ではあったが、ぶっちゃけ知らない者はいない。正確には、その王家の慣例については表だって話題にはあがることは無いものの、すべての国民が当たり前のように知っているものである。能力石開封の儀のためである。


もっとも儀式の詳細は現王とその時の筆頭宮廷晶角士のみが継承しており、厳重に秘匿されていた。

王家の者は、義務教育としての初等教育機関を卒業すると、王家の者のみが身に埋め込んでいる能力石に開封の義を行い、王家に伝わる始祖レレルク・ミアンが残した能力向上のため紋様を活性化させるのだ。

これは王家の者を守る矛であり盾でもあった。


ある意味矛盾する表現ではあるが、王家の者が生誕と共にその身に埋め込む能力石は、どの能力石も同じ紋様が刻まれているのだが、その能力の開封を行うと不思議なことに発現する能力は個々により異なるのだ。


ここからはガリンの推測であったが、人に限らず、すべての生物は、その種としての本能とそれに加えて個体としての才能を有している。例えば、人はより良い生活をしたいという本能に従い文明を発展させることが出来、更に個々では、学の才能を有しており、更にその学の中でも特に紋様術に飛び抜けた才能を持っているといった風である。


ガリンは、種によっては本能は1つではなく複数ある場合もあり、また個々においても複数の才能を持っていることもあると推測していた。

この事は、種族特性やスキルといった言葉で古代の文献の中にも確かに存在していた。


とはいえ、現代の技術ではそれらを数値やスキル名で確認出来る古代のステータス表示という技術は失われており、あくまでも推測の域は出ないものではあった。


ガリン以外の研究者で、このステータスを表示させる元力石の紋様について専門に研究している者もいるが、今のところ成果はなく、証明には至っていなかった。


しかしながら、ガリンは王家に伝わる能力石は、この人が個々に持っていると推測されている才能の1つを強化するものではないかと考えていたのだ。


王家の血筋の人間は、能力石の封を解いた現時点で、突出した才能を開花させるものがたくさん居たからというのもあるが、それとは別に、王族だけではなくどの人にも才能があるだろうと思われる証拠は、いくらでもあるのだ。そうでなくては、努力だけで埋められる差ではないものが説明できなくなってしまうからだ。ガリンやそれを研究している研究者は、特定の分野で頭角を表す人は、かならずその分野に関連する才能を有していると考えているのだ。


その意味で、現時点ではルルテがどのような才能が強化されるのかは皆目見当もつかないが、それも今後、徐々に判ってくるのだろうとガリンは考えていた。

新章開始です。

書きためた分が無いので、投稿ペースが落ちるかもですが、頑張りますね!

いつも、ありがとうございます。

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よろしくお願いします!

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