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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第2章 叙勲式
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叙勲式 その1

・登場人物


晶角士(男 24歳) ガリエタローング・ガリン・エンジジ

国王(男 45歳) ルラケスメータ・メルタ・マレーン・コグソ

王妃(女 37歳) エレルメイサ・エル・マレーン・ノゥス

公爵(男 78歳) キムエラ・エラン・ウアラ・キジシ

王女(女 12歳) ルルシャメルテーゼ・ルルテ・マレーン・ソノゥ

軍角士・司(男 27歳) レパッタナーグ・ナタル・オウジシ

軍角士・司(女 29歳) ササレリアシータ・リア・オウジシ

宮廷晶角士(男 111歳) イクスレンザ・レン・エンジシ

その他兵卒


時は、マレーン次元文明暦12年 第3力期7日目。

マレーン文化圏における最大のお祭りである、「生誕祭」の初日である。


マレーン文化圏では、先史同様に、1年365日の太陽暦を使用しているのだが、月という考え方はなく、各文化圏をつなぐ、次元間の門「次元接合門」を維持している元力石へのエネルギーの放射周期(次元接合門を維持するためのエネルギーを元力石に蓄積をしなおす周期のこと)にあわせて、91日、91日、91日、92日の単位で区切っていた。それぞれを、第1力期、第2力期、第3力期、第4力期と呼んでいた。

このことを見ても、元力石の魔法技術により、特定の惑星空間や次元空間を次元接合門でつなぎ、それらの各文化圏を往来することによって成り立っているマレーン次元文明にとって、この次元接合門がどれだけ重要であるかを知ることが出来るであろう。

言うまでも無く、このマレーン次元文明の中で、もっとも多くの文化圏を保有し、それらを完全な王制により統治しているのが、マレーン文化圏、つまりマレーン王国となる。

マレーン文化圏の次に、多くの文化圏を保有しているのが、クエルス文化圏で、全部で5文化圏を保有しているのだが、マレーン文化圏がこれに比べて12もの文化圏を保有していることを考えれば、その大きさの違いが実感できるというものである。付け加えるのであれば、現在マレーン次元文明は、マレーン、クエルスを始め、全部で7の文化圏が存在していた。


今日この日は、各文化圏によって、領土の不可侵と各文化圏同士の安全協定を結んで以来の、マレーン文化圏--マーレン王国--における、晶角士、つまり技爵位の叙勲式である。それが最年少というものめずらしさも手伝って、各文化圏からも重鎮と呼ばれる身分の者達が列席を予定していた。

また、この生誕祭は、少なくとも表向きは、各文化圏同士が、国家間の政治的なしがらみから離れて、唯一同じ卓につき談をとる機会としても利用されていた。


今生誕祭を迎え、城内はそれらの諸文化圏からの客人、マレーン文化圏の各貴族たちが多く訪れており賑いを見せていた。


マレーン城は、大山脈であるギギガン山脈を背にしており、平城と山城の中間的な構造をしていた。

城下町の中央通りから、まっすぐ高台にあるこの城は、マレーン文化圏にある、他の諸侯達の城と比べても堅牢であり、美しかった。


生誕祭の行われる、王座の間は城内の中心に位置し、上階までの吹き抜け構造になっていた。その天井部分とその周囲の石窓には、美しいステンドグラスが配されていた。


今その王座の間では、生誕祭の宣誓と、叙勲式がまさに始まろうとしている。


諸文化圏からの賓客に加え、軍角士の官階級以上の官職を得たものに与えられる『士爵位』を持つ、リアとナタルの姿もそこにあった。


軍角士達は立ったままの参加となり、打剣を杖のようにして体の前に立て、直立の姿勢をとっていた。

貴族達は、かなり細工を施された凝ったローブを着ているものが大半であったが、ナタル達軍角士は、全員が式典に似つかわしくないともいえる、訓練時の軽装備を着用していた。


王座に王が居すると、楽隊によるファンファーレが、生誕祭の初日にふさわしい青空に放たれ、そして王座の傍らに立つ、キムエラ・ウアラ・キジシ(公爵)が凛とした声で宣告をする。


いよいよ生誕祭の始まりである。


「これをもって、マレーン王国生誕祭を開始する。」


公爵が一歩下がったと同時に、統一後のマレーン文化圏第1代マレーン国王、ルラケスメータ・マレーン・コグソ(国王)が、ゆっくりと立ちあがる。


王は、王座の間の中心部奥にある王座より、広間内に席を並べている、諸文化圏の賓客、王国の貴族達を悠然と見下ろし、言葉を続けた。


「勇をもって覇を唱え、暦をもって国と為す。人をもって智を得、術をもって強を為す。我がマレーン王国の銘である。

この日、建国以来、途絶えることなく、そしてこれからもこの誇りある祝日が続くことをこの銘に誓う。」


式典に参席している軍角士達が、王が誓いの言葉の宣誓を終え王座に腰を下ろすと同時に、杖にしていた打剣を、一斉に1回だけ、がつんと床に打ちつけた。

広間に、その音が響き渡ると同時に、王の宣誓に対しての拍手が沸き起こる。

そして、また一時置いて、軍角士達は先ほど同様に、打剣を床に打ちつけた。


拍手はぴたりとやんだ。


王は、王座に腰を下ろしたまま、先程よりは、幾分柔らかい声で、話をつづけた。


「今年は、栄えあるこの日に、我が国に新しい『智』が生まれる。

この日に、更なる栄光がもたらされることは、我が国民も大いにその幸せを感じているものと信ずる。

新しい晶角士を任じ、その者に爵位を与えるものとする。」


そういって王は言葉を引いた。

その言葉をついで、公爵が宣告を行う。


「続けて叙勲式を執り行う。准晶角士・ガリエタローングよ、前に。」


声が消えるのとほぼ同時に、広間の入り口から2人の衛士に付き添われた黒いローブを着た男がゆっくりと進み出た。

黒衣の男が中央まで進むと、2人の衛士はその場に膝をついて控える。


一歩前に出たその男のローブには無数の元力石が埋め込まれており、広間に差し込んでいる光に反射していた。

祝典の主役の登場に、広間内にもざわめきが走っていた。


他の軍角士同様、打剣を前について参席しているリアは、その黒衣の男が現れるのを見ると、隣に同じく杖をついて参席しているナタルにチラッと目を向けた。

ナタルは、リアの視線にすぐに気づき、憮然とした表情を返した。

リアが小声で、


「見て、あの晶角士、あの時とまったく表情が同じよ。眉をしかめてる。」


と、面白そうにナタルに話し掛けた。


「ふん。大方、『こんな面倒な式典・・・』とでも思ってるんだろうさ。なにせ・・・。」


リアが、ナタルの話の腰を折る。


「なにせ、俺に勝ったぐらいの大物だから?」


リアの声が明るくなる。


「なっ・・・」


ナタルは、一層憮然とした表情を返す

リアはおかまいなしに話を続ける。


「でも、あの格好・・・。この前とまったく同じよね。もうちょっとおしゃれしてくればいいのに。今度会ったときには、ナタル。いっしょに服見立ててあげましょうね。」


ナタルは、こんな場で一体何を考えているんだと多少の不謹慎さも感じたのだが、リアが、あのしかめっ面の晶角士に自分の趣味で服を薦めている姿を想像して、思わず声をだしてしまいそうになり、急いでそれを飲みこんだ。

そして、


「でもよ、これで、いよいよあいつも、俺らの上官扱いってことだぜ。ったく。」


とだけ、ナタルは返事を返した。


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