コードネームNo.1【紅月】
コードネーム『紅月』
最凶の殺し屋として裏世界の人間に恐れられている人物だ。
恐ろしく早く首を刈り取り誰一人としてその姿を見たことが無いことから
『不見の死神』と呼ばれている。
知られている情報としては主に使う武器がナイフとコルトM1911A1ガバメントの拳銃、という事だけだ。
もしかしたら今もどこかで殺しているかもしれない。
今彼がどこでどのように過ごしているかは誰も知ることは出来ないのだ。
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2025年 5月14日 日本
気温は少しづつ上がってきて春の陽気と呼ぶのに丁度いい暖かさになってきた。
俺の名前は『赫神 拓夢』。
ここ『楠木第1高等学校』に通う1年生だ。
というのは表の顔で裏の顔はプロの殺し屋で裏社会の奴らからは最凶と恐れられているらしい。
俺からしたらただただ前に歩いている肉の塊を肉片にしているに過ぎないのだが…。
しかし今は殺し屋も引退して元殺し屋となり、普通の学生として過ごしている。
この学校に入学した理由は『ターゲットの子供が通っているからどうにかしてターゲットに近づけ』なのだがそんなの気にせず俺は入学早々情報網を辿って夜中に侵入しおっさんの頭をガバメントで撃ち抜いて殺した。
そんな回りくどい真似をしなくとも殺せば終わりの職業なのだからものすごい楽だ。
なんだか依頼主は複雑そうな顔をしていたが俺はシカトした。頑張って得た情報が無意味な程に蹴散らされて任務ぎ完了したのだから仕方ないのだが俺には関係ない事だ。
じゃあ何故任務が終わってからもこの学校に居続けているのかが気になるところであろう。
その理由は簡単だ。
「おはよう拓夢くん!」
この目の前の少女に俺が惚れてしまったからだ。
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『綾瀬 夏』
オレンジに近い茶色い髪の毛と太陽のように美しい目の少女で俺と同じ楠木第1高等学校の1年生だ。
真面目だが天然で、学級委員長を務めているもののどこか抜けていて心配になるような子だ。
彼女と初めて話したのは入学式の日
俺が登校している最中に何やら木を眺めている綾瀬を見つけた。
どうしたのか聞いてみると木のところに持っていた紙が飛んでいってしまったようで見ると枝と枝の間に確かに紙が挟まっていたので俺は木を登って取ってあげた。
というのが俺と綾瀬との出会いだ。
その時にはもう惚れていたのでまぁ一目惚れと言うやつだろう。
しかし俺には大きな問題があった。
それは幼い頃から今までずっと殺し屋として生きてきたので恋愛は愚か女性経験も一切ないのだ。
今まで関わってきた女性といえば俺を捨てたクソババアと雇い主のあの女だけだろう。
クソババアやあとの名前も知らない奴らは全員殺した。
揃いも揃ってクソ野郎共だったからどうでもいいがな。
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「よぉ拓夢、今日も随分と仏頂面じゃねぇか」
「…なんだ界羅、わざわざ茶化しに来たのか?」
「おめぇが退屈そうに机に突っ伏しながら寝てるから関わりに来てやったんだろうがよ」
「余計なお世話だ…」
こいつは『石塚 界羅』
くっそムカつく面で俺にちょっかいをかけてくるやつだ。
くそ腹立つが俺はこいつを昔から知っているから遠ざけることも出来ない。
というかこいつも殺し屋で現在活動中の殺し屋だ。
コードネーム『常闇』
殺し屋の癖にアサルトライフルなんて扱いずらいものを使い大人数の敵を蹂躙し続ける。
そして付いた通り名が『中距離の狂戦士』だ。
と、仕事柄的にも他人事で済まされないような奴なのでこうしてしょっちゅう俺の元に来るのだ。
「あ〜石塚くん!今日もB組から来たの?拓夢くんと仲良いね〜」
「お、綾瀬っちおすおす!いや〜俺は仲良くしたいんだけどこいつがつんつんしててさ〜」
「うるせぇ…触んな」
俺は綾瀬と話しながら俺の頭を触っている界羅の手を叩き飛ばした。
「…そんで、なんか要件があるんだろ。さっさと言えよ」
「ありゃ〜バレちまってたか〜」
「何か用がある時に名前を呼んでから話を始めるのがお前の癖だ」
「ほぇ〜よく見てるねぇ〜。じゃあそろそろ要件を話すとしようかな」
そう言うと界羅は俺の机に肘を置いて指を指してきた。
「お前にある依頼が来た」
「おれはもう殺し屋は引退したぞ…」
「今回は殺し屋としてじゃなくて護衛としてだ。お前殺し屋の仕事のために護衛としての依頼も取れるようにしてただろ?」
「…完全に忘れてた」
3年ほど前に滅多に場に顔を出さない奴を殺すために護衛としてターゲットに近づき殺す依頼を受けた時にした契約を解除し忘れていたようだ。
「だけど今回の依頼自体はお前に言ったら絶対に引き受ける内容だと思うけどな」
「ほぉ。そりゃあ随分な内容なんだろうな」
界羅が俺を煽るように言ったので俺もそれに乗って話を聞いた。
「今回の護衛対象は他でもない。「綾瀬 夏」だ」
「…綾瀬が狙われてるって言うのか?」
あまりに予想外な名前で思わず前のめりで質問してしまった。
「大正解。綾瀬は実家が金持ちという事で誘拐などの色々な事件に巻き込まれる可能性がある。だからこそのお前への依頼って訳だ」
「なるほどね。事情はある程度わかった」
「じゃあ受けるのか?」
「…愚問だな。もちろん引き受けるに決まってるだろう。指1本たりとも触れさせねぇよ」
あんなに純粋無垢な子に汚ぇおっさん共のきったねぇ手の垢なんて付けさせるわけがねぇ
もしそんなことが起ころうことなら問答無用でぶっ殺す。
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「…というのが今回の内容だな」
「じゃあ綾瀬は僕が護衛として依頼されたのを知っている。そしてそれは綾瀬が自分で選択した。護衛期間は高校卒業までの3年間ね…」
「最凶と呼ばれた君なら女の子1人を3年間守るくらいできるだろ?」
「俺を誰だと思ってる。俺が最凶だろうがなんだろうが関係なく俺はあの子を守るだけだ。」
「かっこいいねぇ」
「茶化すな。そんでもうすぐ休み終わるから自分の教室に戻れ。ほいほ〜い、ほんじゃま」
界羅は俺の前にあった椅子から立ち上がって教室から出ていった。
俺は斜め前の綾瀬の席を見てため息をついた。