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㉑姫路城(姫路市本町)2

㉑姫路城(姫路市本町)2


■督姫の再婚

督姫は、家康からも秀吉からも北条家の家名再興を早急に考えると伝え聞いた。

それなりの答えが出るのを待つしかない。

それまで、思う存分、父からのご褒美だと、母に甘えて、姫と共に贅沢に暮らす。


すると、翌年、2月、夫は罪を許され、大坂城に移されて河内などに1万石を得て大名復帰したと連絡が入る。

督姫母娘に迎えが来た。

やっぱりすごくうれしい。


急いで小田原城から、大坂城に向かい夫と再会する。

ここで、長女、勝姫(1584 - 1593)と次女、万姫と4人での落ち着いた生活が始まる。

だが、つかの間の幸せだった。

その年、11月、夫は亡くなった。


処分を解かれ秀吉の元で北条家再興を果たした氏直だが、領地が少なすぎた。

秀吉も「北条家の新たなる始まりだ。以後、忠誠心と働きを認めれば加増する」と言った。

それでも、耐えて待っている家臣を召し抱えるには少なすぎた。


氏直は、より多くの領地を望んだ。

秀吉も、家康も、不満が見え見えの氏直を扱いにくいと感じる。

すると、まもなく病死だ。

氏直には、無念の死だが、督姫には予想できたことだった。


北条家嫡流は断絶した。

北条氏は、家康と親しい氏直の叔父、北条氏規の嫡男、氏盛が受け継ぎ、河内狭山藩1万1千石で明治維新まで続く。

政略結婚は、婚家の滅亡をもたらすことが多い中、夫、氏直の願いを実らせ、わずかの石高にはなったが北条家は大名として存続した。

「これで良い」と督姫は、自身に言い聞かせた。


督姫は、北条家が倒れ、一番利益を得た父、家康を冷静に見る。

秀吉は、天下人としての権威を誇示し、天下を統一したと高らかに宣言した。

一番の利益者に見える。

だが、その領地は本来、戦った武将たちに分け与えられてこそ、天下人の権威が光るはず。

ところが、ほとんどを家康に与えた。


家康は、北条氏以上の石高、250万石藩主となったのだ。

家康旧領は130万石程度、倍増に近い加増だ。

 秀吉は北条征伐で、臣従した武将たちに恩恵を与えることは少なかった。

秀吉への忠誠心が高まることはない。


それでも、家康は「関東の地への国替えは京からも離れ、慣れ親しんだ領地とも引き離され、とてもつらい」と大げさに嘆いた。

自らの譜代の臣に充分に分け与えられる領地を得て満足していたのに。

家康家臣の士気は上がり、主従関係は強くなり、家康の力は格段に高まった。


秀吉は、具体的利益を得ることの少ない北条攻めを強行しただけになった。

真の勝利者は、どう考えても父、家康だった。

督姫は、夫を亡くし、京の徳川家の屋敷に居る母の元に戻り、住む。

大坂城に入り、秀吉・ねね夫妻と挨拶して以来、父、家康のすすめもあり、北条家のためにもと再々ねねを訪ね、親しい関係となっていた。

 ねねから側に居るようにと言われ、秀吉からも京に住まい続けられるよう再婚先を考えると言われた。


夫、氏直を亡くしたが娘の将来を考えると、京・大坂に住まうべきだと考えた。

すべて父や秀吉に任せようと、京での母と娘との暮らしを満喫した。

苦しいことの後には安らぎと休養の日々が来ると実感する。

すると、ねね・秀吉は、池田輝政との再婚を勧めた。


輝政は、小牧長久手の戦いで家康の策に嵌った父や兄を殺され、以後、家康と疎遠になっていた。

そこで秀吉は、両家が親密になり、共に秀吉に忠誠を尽くして働くよう取り計らおうとしたのだ。


この頃、家康は、秀吉政権の中枢に入り込み、秀吉恩顧の大名たちと積極的に付き合っており「悪いことではない」と、督姫に話した。

父が薦める結婚だ、秀吉に「ご配慮、ありがたくお受けします」と喜び応じた。

督姫は、秀吉・家康の意図を考え、自分なりに再婚を受け入れる。


1594年、同じ年の生まれ29歳の督姫と輝政が結婚する。

とても遅い大人同士の再婚だ。

恋愛関係となるとは思えない。

笑ってしまうが、娘たちには良いことだ。


輝政には、先妻の残した嫡男がおり子を望まれてはいない。

徳川家と池田家を結ぶための結婚だ、目立たず控えめに池田家に嫁ぐと決めた。

慎ましい結婚にしたいと母に頼む。

母は笑顔で、豪華な花嫁調度を整え送り出してくれた。


伏見の池田屋敷で結婚式を執り行った。

家康は250万石、池田家は15万石の大名。

家康は、天下人、秀吉に次ぐ実力者だ。

池田家にとっては、もったいないような嫁だ。

家中挙げて歓迎する。


北条家は改易されたとはいえ、氏直は240万石の大大名だった。

しかも、自意識過剰で、わがままに、贅沢に育てられた家康の姫、督姫だ。

再婚とは言え、大大名に嫁ぐのは、当然だと思い待っていた。

ねね・秀吉が責任持って良い婿を見つけると言った割には、軽い扱いの再婚だ。

少しがっかりした。


それでも天下人と天下第2の父、家康が納得した結婚であり意味があるはずだ。

どのような経緯があったにしろ、池田家当主と嫡男が家康に殺されたのは事実だ。

憎しみがあるはずの池田家を父と友好関係となるよう繋ぐ役目は価値がある。

やりがいのある役目を与えられたのだ。

どこまでできるかわからないが、やってみようと気持ちを固めた。


池田家の歴史を詳しく知れば知るほど面白く、興味がわいた。

信長の乳兄弟として頭角を現し秀吉が信長後継になるため、多大な貢献をした。

秀吉に重用されたが、父と嫡男の兄を亡くした後、池田家の地位は落ちた。

後継となった輝政は、豊臣政権下で池田家の存在を示すために、悪戦苦闘し、ようやく、父、恒興以上の器量を見せることができた。


秀吉を唸らせる働きをして、督姫との再婚となったのだ。

督姫は、北条家で影響力を持ったように池田家にも影響力を持てるのではと思う。

格下であるだけに、北条家以上の面白い働きができるかもしれないと。

父、家康に考えがあるはずで、父と共に父の思いを実現しようと思う。


督姫は、高齢であり、輝政との間に子供が生まれるとは考えず、池田家との関係を緊密にすべく、氏直との姫を輝政嫡男、利隆と結婚する約束を取り付ける。

まずは様子見と結婚式を挙げた池田家を離れ、今まで通り母と娘と暮らす。

結婚前と変わらない暮らしを続け、池田家には時折訪ねるというような暮らしだ。

後妻だとわきまえ、極力、池田家の奥向きには関わらないようにおとなしくした。


それでも、池田家・徳川家・豊臣家との付き合いを重ね、次第に政権内部がわかってくる。

秀吉の老いが目立ち始めた。

政権末期の秀吉に近い重臣たちの内部分裂の様子も見た。

父、家康が策を練り縦横無尽に力を張り巡らしていく様子も感じる。

家康配下の武将たちが、鮮やかに動き回り豊臣恩顧の武将に取り入っていた。

督姫は、彼らの動きを感心しながら見て、父、家康の偉大さを思い知らされる。


家康は、周到な準備をし自分の勢力図を広げるために、駒を作り動かした。

将棋が得意で、次々手を考え勝負し勝った。

督姫は、その様子を幼いころから見ており、よく知っていた。

そのままを、現実世界でも行い、勝負に勝っていくのだ。

しかも、家康は焦らない、ひたすら勝機を待つ。

運が転がって来た時、受け止めるだけでいいと考える余裕もあった。


父、家康には、自分が動かなくても、周囲が動きまた周囲に動かされながら、望む位置に行く事が出来る、希有な人望があった。

督姫は、怪物のような父を持ったことに、喜びと恐怖を感じる。

自分の役目もわかった。


輝政は、秀吉政権で重要な位置を占めるようになった。

その輝政を、家康の婿として家康に近い存在とするのが望みなのだ。

そう考えると輝政により興味が湧いてきた。

池田家を訪ねるときを増やし、それとなく話す機会を増やしていく。


輝政も政権№2の家康への関心を深めていた。

督姫が思う以上に積極的に督姫に近づこうとし、会えた時は本当にうれしそうだ。

秀吉が亡くなる頃には、急速に、2人で過ごすことが多くなっていた。

督姫は輝政に家康の考えを伝え、家康が義理の息子として頼りにしていることを伝え、日常のこまごまとしたことも心優しい笑顔を浮かべ、話し続ける。


秀吉が亡くなると、督姫は氏直の説得に失敗した教訓を生かし、落ち着いて輝政を説得した。

輝政は、家康勢の先陣を切ると宣言するまで、家康との緊密な関係を築いた。

督姫を通じて輝政も、秀吉死後は、家康に従うと決めていた。

積極的に、豊臣恩顧の大名を家康方とするために働く。

二人の意思疎通は完ぺきだった。


天下分け目の戦いは家康の大勝利だ。

恩賞として豊臣恩顧の大名を家康方とした功もあり、播磨姫路藩52万石を得る。

その後、池田一族で100万石にまで領地を増やし、西国将軍と呼ばれる。

督姫は鼻高々だった。

「池田家の飛躍の道は、父、家康との取次ぎの任を担った私が創った」と。


 督姫がじっくり見た小田原城・大坂城・伏見城から思い描いた大城郭を、輝政とともに築きたいと願い、築いたのが姫路城だ。


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