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「……そういえば縁談の話は断っておいたぞ」
「えっ、ほんと?」
「料理もできないようじゃ嫁に行かせられないからな」
「うっ……それを言われると何も言えない」
料理の才能が皆無な私は頭を抱えた。
いや、でも掃除とか洗濯とか、そういう家事は人並みにできると思うんだけど。
ていうか、お師匠様の料理の腕がよすぎるのよ。
などとブツブツ考えていると、ふっと影が落ちてきて私は顔を上げた。
「お師匠様?」
先に食べ終わったお師匠様がいつの間にか私の横に立っていて難しい顔をしている。
そしてぽんと頭に置かれるお師匠様の手。
大きくてあったかくて包み込むような手。
さっき落とされたゲンコツとは比べもにならないくらいに優しい手つき。