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 ピュアーロ人さんが帰ってから、勝手口は普通のお店の裏口として戻っていた。

私は何だかちょっぴり寂びしかったわ。

とってもドキドキしたし、特に日本酒好きに悪い人はいないと思うもの。


 ところがどっこい。


「おえい⁉」

「どうしたの、(こうじ)くん!」


 お店の中を掃除をしていたらまたも勝手口の方から、麴くんの異様な声が聞こえた。


「ハーイ、マタモキテシマイマシタ♪」


腰を抜かす麴くんの向こう側ににっこり笑ったピュアーロ人さんが立っていた。


「オサケノオレイガイイタクテ。コンドハワタシノセカイノオサケ、モッテキマシタ!」

「本当か⁉」


 喜ぶ麴くんと私に、ピュアーロ人さんが不思議な形をした酒瓶を差し出す。

こんな綺麗な色の酒瓶は見たことが無かった。

どきどきとワクワクで私はガラスのコップにお酒を注ぐ。


「ほお……」


 麴くんが思わずと言ったように溜め息をついた。

お酒の色は、澄んだ透明な色。

一見、濁りの無い日本酒にそっくりだ。


こくり。


「うん、美味しい……」

「ああ……」


 口の中に含むと馥郁(ふくいく)たる香りが口内に広がる。

私と麴くんはぼうっとなった。

お酒に酔ったんじゃなく、純粋に美味しさでぼうっとなったのだ。

そんな私たちをピュアーロ人さんはにこにこと見守っている。


「ピュアーロ人さん、素敵なお酒をありがとう」

「ああ、本当に美味しかった! で、これどうやって作っているんだい? 気になるよ!」

「フフフ。ツクリカタハヒミツアルネ。ソレト、ワタシノナマエ、()()()デスネ」


 ピュアーロ人改めコールさんは茶目っ気たっぷりにウィンクした。


「そ、そんな。せめて清酒か合成酒か知りたかったのに……」

「麴くん研究熱心だものね」


 肩を叩いて麴くんを慰めている私に、コールさんは言う。


「コノオサケ、マダヘンカスルヨ」

「変化?」


 首を傾げる私の手から、まだ少し残っているお酒のコップを取ってコールさんは突如。


「ミラクルチェンジ・コール!」


 魔法の呪文の様なものを唱えた。

すると。

透明だった日本酒が、急に白く濁ったのだ!


「まさか!」

「どぶろくに変わったの⁉」


 コールさんはまた同じ呪文を唱えると、麴くんにも白く濁ったお酒を手渡す。

口に含んでわたしたちは本当に驚いたわ!

清酒だったお酒が、濁酒に変わったんだもの。

まさにミラクルチェンジだ。


「ピュアーロノセカイノヒト、オサケノマホウ、トクイネ。アナタタチモツカエルヨ」

「え?」


 私と麹くんはポカーンと互いの顔を見る。

一体どういう事?


「ダッテ、ピュアーロノオサケ、ノンダデショ? ダカラツカエルネ」


 コールさんは私たちがお酒に関する魔法を使えることを一通り説明してくれた。



「試してみよう……!」

「ええ!」


 まるで幼児に戻ったかのように、お互いの瞳が輝いている。

だって、魔法よ?

人生に何が起こるかは本当に分からないものね。

 麴くんとわたしはそれぞれお猪口やコップにお酒を注ぐ。


「ミラクルチェンジ・コウジ!」

「ミラクルチェンジ・ロミ!」


 呪文を唱えたコップの中身はキラキラと輝きを放って、本当に変化した。

変化したのだが。


「あれ?」

「ビールになった!」


 麴くんの日本酒は何故だか麦酒に。

私の日本酒は、


「これって、ワインじゃあ」


 何故だか洋酒に変化してしまったコップを掲げて私は首を傾げた。

決してビールやワインが嫌いってわけじゃあないけれど、コールさんみたいにはいかないのかしら。

やはりここは居酒屋だもの。

せっかくお酒の魔法が使えるようになったんだから、美味しい日本酒にも是非してみたい。


「マダマダ、シュギョウガタリナイネ」


 コールさんは愉快そうに笑っていた。


「ソレジャア、マタ。イセカイノトビラツナガッタラ、クルネ」


 私たちは厚くお礼を言って、コールさんを見送った。

もちろん、こちらの世界のお酒をまた手土産に持たせてあげたから、コールさんはステップを踏んで帰って行った。

 その晩、お店が開店すると厨房の隅で私と麹くんはこっそりとお酒の魔法を使ってみた。今度は上手く魔法が使えたの。

コールさんが帰ってから猛練習したわ。

酔わない程度に、だけれどね。

お店は大繁盛!

美味しいお酒が色々飲めると大評判になった。

 コールさんとはそれから何度も会えることが出来て、勝手口からピュアーロのお酒もこのお店で提供しても良いという許可も貰えたの。

もちろん、この世界のお金で売り上げを渡したから、多分大丈夫。

コールさんとの交流も続けれて本当に嬉しい日々が送れています。

人生何があるか分からないんだから。

 あなたも、このお店のお酒飲みに来てちょうだいな。

美味しい日本酒などを提供します!

魔法の言葉は「ミラクルチェンジ!」




ここまでお読み下さり、誠にありがとうございました。

お酒が飲めない作者ですが、精一杯書かせていただきました。


企画を主催してくださった黒森冬炎様、コロン様に厚く御礼申し上げます。


読んで下さった皆様。今宵も、美味しいお酒を飲めると良いですね。

乾杯!

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― 新着の感想 ―
可愛らしいファンタジーにほっこり╰(*´︶`*)╯♡ がっちりと繋がった異世界の扉と、たぶん…友情もしっかりできましたよね(笑 コールさんが陽気で楽しいですね。 二人のこれからの活躍が気になりました…
読ませていただきました。 時空さんの「ビタミンカラー」は読んでいたので、こっち(笑)。 夢のある話ですね。 酒が紡ぐひょんな出会いが幸せを運ぶ。 魔法の言葉ひとつでいろんなお酒へと変化する。 ハッピ…
お酒の魔法、面白いですね!(*´ω`*) お酒→お酒、なのに別の種類に変わるというところがなんだかツボです笑。 私もそんなにお酒強くないので、ビールに変わるくらいが丁度いいかなぁと思いました……笑。 …
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