ルビは優しさ♡
「うん! おもしろいよ。どんどん書いて!」
私がはじめて書いた小説。その第一号の読者は彼女であった。
普段は新聞も読まない彼女だが今はスマホを覗き込み、私の書いた小説を必死に読んでいる。
「どうだ?」
と聞く私に彼女は張りついていたスマホから顔をあげて、
「この小説、漢字多いよねー」
と眉を寄せながら言ってきた。
普段人との会話や小説や文集を人に薦めるうえで、たまに耳にする言葉がある。
『わたしは活字が苦手だから』
初めは新聞など活字の羅列が嫌いなのだろうと、そのように漠然と考えていた。
だが気づいたのだ。彼女が 「同じ言葉」 を言っていることに……。
そこで私は素直な気持ちで彼女に尋ねてみた。
「活字が苦手とはどういうことなの?」
すると彼女は少し俯きながら、
「……があまり読めないのよ」
と身体をもじもじさせて、テレながらそうのたまう。
そんなテレテレの彼女を見やりながら、
……まったく「誰とく」なんだよ。 還暦もとうに過ぎたばーさんがである。
そうか、漢字が読めないことを「恥ずべき事」だと思っているんだな。
自分も決して読める方ではないのだが、”小説家になろう”で書かれているライトノベル系の文章ぐらいならなんとか読める。
私は今までつきあってきた中で、彼女はごく普通の人間だと思っている。
そこで、ネットで一度ググって見ることにした。
検索窓口に入力したワードは3つ、
【漢字が読めない】、 【大人】、【 割合 】
しばらくググっていくと……。
なんとも驚愕する内容が打ち出されていたのである。
【日本人の3人に1人は日本語が読めない!】
ええっ! マジか。 更にググるが同じワードにぶちあたった……。
そして私は思ったのだ。
(な~んだ、そうなんだ。そこまで恥ずべき事でもないんだな)
読めないのなら読めるようにしてやればいい。
この時より、私は小まめにルビをふりはじめた。
「これはさすがにわたしでも読めたよー」
彼女は笑っていう。
私はそうかそうかと頷きながらルビをふる。
小中学校から頭角を現すスポーツ選手なども然り、勉学が疎かになっている人も多いだろう。
だから考えてほしい。もし、今読んでいる小説の所々に、【英語】や【ドイツ語】が使われていたら……。
パソコンなら別枠で検索が掛けられる。しかし、スマホではなかなかに無理があるだろう。
しかし、「ルビ」さえあれば読むことができるのだ。
「ルビ」は優しさ思いやり。
だから私は今日もせっせとルビをふる。
私の作品には、ルビが多くふってあります。 本当に読める人からすれば、邪魔なだけでしょうが、どうかご理解ください。 そして出来れば、私の作品ように「ルビふり」をしてくださる方が増えることを願っております。