運命
その後は、というと――
「あれ、気絶してる?」
すっかり2人の世界に入っていた俺らは気付かなかったが、主犯はどうやら気を失っていたようで。
俺はこっぴどく教師に叱られたものの、未来のいじめの件にも、ちゃんと向き合ってくれることとなった。……最初からそうしろよ。
あれから、未来は保健室登校をしながら、勇気が出た時は教室に向かう。いたたまれなくなってしまったら、保健室に行くか早退かを繰り返す、そんな毎日を過ごしていた。
――だけど、
「お前、本当にいいのかよ? 主犯らのこと許して」
「……はい。正直、主犯達にされたことは忘れられないと思う。一生の傷だし、一生のトラウマです」
「じゃあ、何で――」
「それでも、私はこれからもずっと、いじめてきた人達を憎んで、恨んで生きて行ったら、一生前に進めない。これからの人生、一生楽しめない。その為には、許す覚悟も必要だった」
「……」
強いな、こいつは。
「それに、私は――」
「?」
「歩くんと幸せになるんですから。加害者達のこと考えて生きたくありません」
「……!」
よくそんな恥ずかしいセリフを平気で言えるな――。こっちの気持ちも考えろ、バカ。
「あれ? 歩くん、もしかして照れてます?」
「うるせえ! あっち行ってろ!」
未来はクスクスと笑いながらからかってくる。ったく、偉くなったな。
「歩くん。……私達、屋上で出逢ったんですよね。あの時――屋上にいてくれて、ありがとう」
――そうだよな。もしもあの時、2人が屋上にいなかったら、俺達は出逢わなかった。これが――“運命ってやつなんだろうか。
……ああ、俺はいつからこんな乙女脳になってしまったのか。
「歩くん?」
確実に、こいつのせいだな……。
「いや……」
「どうしたんですか?」
「あの時――自殺と勘違いしてくれて、ありがとう」
一瞬きょとんとした未来は、「へへっ」と照れ臭そうにはにかんだ。