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5/8

逆プロポーズ

バンッと勢い良く扉を開く。



「!!」



なんと天宮は、柵によじ登っているところだった。



やめろ。天宮。死ぬな。いや――



死なないでくれ。



「天宮ァ!!」



俺は大声で名前を呼ぶと、天宮の身体を勢い良く抱き寄せた。そう、出会った(あの)時の天宮と同じように。



「お前、俺と結婚しろ!!」



俺はそう叫んだ。こんなプロポーズの仕方があるか、と思うが、無我夢中な俺の頭は、彼女を助けることで精一杯だった。



後ろから抱き留めているのだから、今、天宮がどんな表情をしているのかは分からない。お願いだ、お願いだ、俺の気持ちが届いてくれ。



「長谷部くん……?」



「何なんだよ、お前。何かあるならちゃんと俺に相談しろよ。ふざけんなよ! お前のことは俺が助ける。ずっとずっと傍にいる。俺達、結婚するんだろ!? 幸せな家庭作るんだよ! だからお前は生きるんだよ!」



「は、せべく……」



天宮の声が震える。



「逃げたっていいんだよ! 無理して学校来なくていいんだよ! 俺が毎日遊びに行ってやる! お前は1人じゃないんだよ!」



「う、うわああああん」



天宮は全身を震わせながら、泣き出した。



「も、もう、毎日辛くて、死にたくてっ……! そんな時、あなたが自殺するのかなって。死なないで、って思、って。私も死のうとしてたのにおかしいですよね……。でも、気付いたら、プロポーズしててっ。そしたら、結局長谷部くんはとってもいい人で」



天宮はヒクヒクっと喉を鳴らしながら、一息ついた。



「だけど、それでもやっぱりエスカレートしていくいじめに耐えられなくてっ……! 長谷部くんとの幸せな思い出を抱いて死のうって思ったんです。思い出作りは途中だったけどっ」



「ッ……! やめろ! 俺が一生お前の側にいる! お前は俺と一緒に生きるんだよ!」



「長谷部くんっ……!」



「ずっと1人で無理しやがって。お前には俺がいるだろ!!」



ああ、俺は今とんでもなく恥ずかしいことを言っている。それでも、俺の気持ち全部、こいつに伝えたい。



「っ……!」



天宮は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を、必死に上下に動かした。



「うううっ……!」



いつも通り泣き虫な天宮を、俺はひたすらに抱き締めていた。






――「そう言えば、お前の名前何て言うの?」



「あっ……! 確かに、名前言ってなかったですね。じゃあ、長谷部くんの下の名前から教えて下さいよ!」



「俺? ……長谷部、(あゆむ)



――下の名前も知らなかった、そんな2人の関係。それでも、俺達は――



「私は、天宮未来(みらい)です」



今日から、一緒に未来を歩んでいくと誓った。



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― 新着の感想 ―
[一言] めっちゃキュンキュンしました!感動して泣きそうです。 長谷部くんのキャラが好きです。
[良い点] そういえば、2人の名前が出てなかったですね。 未来を歩む。 とっても素敵な展開です。
[良い点] 更新お疲れ様です!  いやあ~……それにしても、甘酸っぱくも、切なく綺麗なお話ですねぇ(´;ω;`) 「自殺しようとした」という悲しい共通点を互いに持つ二人ですが、それを軽く塗り替えるよ…
2021/10/27 21:09 退会済み
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