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epic01 加護とギフト

説明回のため少し長いかもしれません。

誰かが泣き叫ぶ声が聞こえる。


次第に声がはっきりと聞こえるようになってくる。


「…て。…きてよ。起きてよ。」


体を激しく揺さぶられ、俺は目を覚ます。目を開けるとそこには涙で目を腫らしたであろう銀髪の少女がいた。


銀髪の少女…。ということは俺はあの白い空間でみた少年の中に入ってしまったのだろうか。


意識がはっきりしだしたと同時に逃げないとという感情が湧き上がってくる。状況は全く理解できていないがそれだけは理解していた。部屋を漁り、エスケープの魔法が入った瓶を割って発動させる。目を開けていられないほどのまばゆい光が少女と俺を包んだ。


まばゆい光が落ち着き、目を開けるとそこは古びた教会だった。あたりを見渡しても誰もいない。俺は初めてここに来た。でも初めてじゃない気がする。多分今の体に入ってる魂の記憶なんだろう。


「お帰り。待ってたよ。」


声がする方を見ると修道服を着た女性、つまりシスターが立っていた。


「直接会うのは初めてだね。体の調子は悪くないかな。」


「体は何ともないよ。お前が俺をこの世界に連れてきたってことであってるかな?」


シスターの発言と中性的な声で狭間で話をした人だと推測する。


「半分正解かな。僕一人じゃできなかった。その話は奥で話そうか。ついておいで。」


シスターが奥の部屋へと歩き出す。銀髪の少女の手を引いてついていく。部屋に着くと座るように促される。


「とりあえず自己紹介からしようか。そっちの子についても知りたいし。」


シスターがちらと銀髪の少女を見る。少女は怯えているのか少し体を震わせ、俺と繋いでいる手をきゅっと強く握った。


「わ…。私はサンゴ。あそこにいた人たちからはそう呼ばれていた。」


あそことはあの施設のことだろう。施設についても聞きたかったがとりあえず後回しにして自己紹介をする。


「俺はカイト。正直未だに現状は理解できていない。この体の持ち主についても、施設とか知りたいことは山ほどある。」


「まあ、そう焦らないでくれ。僕はアス。皆からはシスターと呼ばれているよ。好きなほうで呼んでくれて構わない。」


全員の自己紹介を終えたところで聞きたかったことを聞く。


「それで、俺を連れてきたのがシスターで半分正解というのは?」


「それを説明するには、この世界についてからだね。」


そう言うとシスターは戸棚から水晶玉を取り出してきて、俺の前に置く。


「この世界では生きている人間に神様からの加護が与えられるんだ。水晶玉に手をかざしてごらん。」


言われるままに水晶に手をかざすと、水晶に文字が映し出された。水晶が球体なので読みにくいかと思ったが頭の中に文字が浮かんでくる。


アリス 加護:ハデス

    ギフト 装具:死神

    

「うん。きちんと出たね。アリスは君の体の持ち主だ。アリスについてはまた後で話そう。加護は今言ったようにどの神様からの加護かを示している。この世界では12の神様がいてその神様から加護を受けられるよ。」


さらさらと紙に名前を書きあげていく。


ゼウス アテナ アポロン アフロディーテ アレス アルテミス 

デメテル ヘパイストス ヘルメス ポセイドン


ハデス ペルセポネ


「基本的にはこの12の神様から加護を受けられるんだけど稀にこういう子もいるんだ。」


今度はサンゴに水晶を渡す。サンゴは恐る恐る手をかざす。が、何も反応しない。水晶に近づいて確認してみるも何も映し出されていない。


「こういう子は無加護と呼ばれ、ひどい扱いを受ける。サンゴがいた施設も無加護の人間を使って人体実験を行っていたんだ。無加護の人の特徴として髪の毛が白髪か銀髪であることが多い。反対に加護を持つ人間も稀に贈り物をもらうことがある。君のようにね。」


「俺?」


「正確にはアリスの体だね。水晶を見たときギフトというのがあっただろう?あれは強い加護を受けている人にだけ現れるんだ。ようは神様のお気に入りだね。神様のお気に入りだったからこそ僕がアリスを助けたいという祈りにヘルメス様が反応してくれたんだ。ヘルメス様の魂を運ぶ能力でここまで運んできた。つまりヘルメス様が居なければ君をここには呼べていなかった。」


「神様のお気に入りって全ての神様から気に入られてるのか?」


「いや、そうでもない。けど、アリスの加護はハデス様のものだ。ハデス様は冥界を統べる神様なんだけどゼウス様、ポセイドン様に次ぐ力の持ち主だから大半の神様は味方してくれるよ。」


神様もお偉いさんには逆らえないってことか。神様の世界も人間の世界と変わんないんだな。ギフトの存在は分かったが装具:死神というのが引っかかる。アリスの魂を半分奪った神具のようなものだろうか。


「ギフトの装具ってのは何だ?」


「神様からの贈り物だよ。加護を受けている神様に関する能力がもらえるんだ。君の右手親指に指輪がはまっているだろう?それがギフトさ。使い方はまた使うときに教えよう。」


右手を見てみると確かに指輪が付いていた。能力か…。つまり今の俺は死神の能力が使えるのか。そもそも死神の能力ってなんだ?


「さっきから僕が説明してばかりなんだけど君にアリスの記憶はないのかい?」


能力について考えていると、シスターに声をかけられた。


「ないわけじゃない。ただはっきりと覚えていることは魂を抜き取られる寸前のことだけ。あとは霧がかかったようにはっきりしないかな。」


そう言うとシスターは頭を抱え、何か考えているようだった。


「まあ、ギフトだったり能力だったり消えていないなら大丈夫だ。これから次第に思い出していくこともあるだろう。今覚えている範囲でいいから施設内であったことを教えてくれるかな。」


俺は施設内であった出来事を話した。といっても逃げまどっていたことと男の人に魂を抜かれたこと位だけだけど。サンゴにも確認してみたが、施設内に一人でアリスと出会ってからは俺の記憶と一緒のようだった。


「神具:ハルペー。恐らく模造品レプリカだろうね。」


「レプリカ?」


「神様の武器を模した人間が扱える武器のことだよ。本物とは違って再度使用するのにクールタイムがあったり、威力が落ちてたりするんだ。ハルペーは本来死体から魂を取り出す武器として使用されるはずだよ。だからアリスのもう半分の魂はその男が持っていると考えていい。」


「つまりその男を見つけて、魂を取り返せばアリスを助けることができるのか。」


ここで1つの疑問が浮かんだ。


「確か魂と体の均衡がとれているから人は生きているんだよな。今の俺は一人分以上の魂が入っているはずだけど大丈夫なのか?」


「大丈夫だよ。今君の体にあるのは一人分の魂だから。」


一人分の魂?アリスの魂が半分を占めているわけだから必然的に残りの半分が俺の魂になる。ということはアリスの魂を取り戻した時、俺はどうなるんだ?

俺が首を傾げているとシスターが俺の考えていることが分かったのか声を出して笑った。


「大丈夫だよ。君の魂自体は全部入っているんだ。圧縮して半分の大きさにはなってるけどね。魂というのはいわば記憶データの集まりなんだ。つまり圧縮しても何ら問題ない。ま、そんなことができるのは神様ぐらいしかいないんだけどね。」


話していると教会のほうで声がした。


「シスター!オートマタがでた!」


オートマタというと自立機械が思い出される。この世界には人を襲う機械がいるのか。

なんて考えていると、シスターが立ち上がった。


「ちょうどいい。ギフトの実践練習と行こうか。」


こちらを向いたシスターはニッと笑った。

お読み頂きありがとうございます。

もう一話くらい説明回が続きます。説明をもっと上手にやりたいです。

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