アンタも他のヒトと変わらないってことかしら
【前回のあらすじ】
幼馴染みに誘われる!
「一体どういう心境の変化? 真面目なユキノらしくない」
「ふん、私だってやる時はやるわ。いい? もうこんな下らない、退屈な生活とはおさらばよ。きっと学校なんか行くのバカらしくなっちゃうわ」
「何言ってるんだ? 不良にでもなるの?」
「――ここから少し西に行った坂の上に、小さな旅館街があるじゃない? あの一角に一際大きなお屋敷……門に立ち入り禁止の看板のある――。そこに……ほら、出るのよ。これよこれ」
ユキノはそう言い淀むと、お化けの真似なのだろう両手を前にしてだらんと下げ、珍妙な効果音と共にその手を左右に揺らした。
しかし、そんなおかしな様を見て平常心でいられるほど、ノリは辛抱強くはなかった。
腹を抱えてゲラゲラと笑い転げるノリを、ユキノはいたって冷静に見据え、彼が落ち着くのを待った。
「ユキノ、そりゃないって。そんな持ちネタあったんなら言ってくれればいいのに、ずるいなあ」
「冗談で言ってるんじゃないわよ。これには確信があるの」
「これが?」
と言ってノリは先ほどのユキノと同じような動きをし、また笑い始めた。
ノリはユキノがお化けだなんて非現実的なこと信じる女の子ではないと知っているので、殊更におかしくてからかいたくなるのだ。それが彼女にはどうにも面白くないらしく、無言のままじっとノリを睨みつけ、責めた。
ユキノの放つ見えない圧力に負け、いたたまれなくなったノリは素直に謝罪した。
――即断であった。
「ごめん……やりすぎた」
「……まあ、アンタも他のヤツらと変わらないってことかしら」
「は? それってどういう……」
そのままの意味よ――とユキノは一言呟き、踵を返し歩き出した。
「ちょっと、ユキノ! どこに行くん……だ――よ」
ノリは小さくなっていくユキノの背中をただ茫然と眺めていることしかできなかった。
「ちぇっ! 僕よりほんの少しデカいからって偉そうに――」
彼らは幼少の頃からいつも一緒だった。
二人とも友達らしい友達は居らず、周囲の大人からは口々に、「仲がよろしいのね。将来が楽しみだ」と言って憚らず、未来を祝福されたものであった。
だからというわけではないが、ノリには彼女に対し多少横柄に接しても構わないという、ある種の慢心のような気持ちが無意識の内に巣食っていたのかもしれない。
――そういえば、ユキノはいつになく真剣な顔だった。
今更非礼を詫びようにも彼女の姿はもう見えない。
「そうだ――。学校……行かなくちゃ」
遅刻が確定しているせいか、急くよりも諦念の方が強く、幾つも道を外れわざと遠回りなどしていたら、学校に着く頃には昼を過ぎていた。
幼馴染みを追いかける
→幼馴染みを追いかけない