江戸っ子も嵌まった倒語
倒語とは、
「じゅんぎ君!」
その背に向って、いつものように明るく元気よく呼びかけると、
「やんな?」
振り向いたじゅんぎ君が、いつもと代り映えしない顔付きで、いつもとは異なった応え方をした。
「やんな?」
それは関西弁ではなかった。関西弁でなければ、東京弁なのか。東京弁でなければ、外国語なのか。思考力をフル回転させて発揮し、思いつく限りを考えたが、何も浮かばず仕舞いで、ただ、頭上をクエスチョンマークの????が、クルクルと飛び交っただけだった。
近頃のじゅんぎ君は、何や知らんけど、何や、何や、
「それや」
「どれや」
「おつむやのうて、おいどから言うてみ」
「おつむやのうて、おいどからやな。あッ」
「それや、それやがな。それを、倒語、ちゅうねん」
と、じゅんぎ君が得意げな顔して言い放った。
【倒語】
語の音節の順序を逆さにしてつくられる語。
【日本最古の倒語】
『日本書紀』に、神武天皇の即位の日に道臣命が秘密の策を受けて、「諷歌・倒語」で妖気を払ったと書かれてある。これが、倒語を用いるようになった始まりである。
【江戸っ子が嵌まった倒語】
「ドヤ」は「宿」の倒語
『根無草後編』
明和6年(1769年)刊:談義本五巻
作者:風来山人(平賀源内のペンネーム)
<閻魔のドヤが知れたれば>
「験をかつぐ」は「縁起をかつぐ」の倒語
1708年:近松門左衛門の浄瑠璃『淀鯉出世滝徳』の一節
<ぎえん直しに酒にせう>
※「縁起」を逆さにして「ぎえん」と言っていたが、それが徐々にいつのころからか「ゲン」と言うようになった。
「杯一」は「一杯」の倒語
江戸時代の洒落本:箱枕
<まあ杯一飲まうかい>
※ぱいいつとは酒を飲むこと。
<新しい>
元々は「あらたしい」と読んでいたが、江戸時代に流行った逆さ言葉で「あたらしい」と読まれるようになり、それがそのままの形で現在に至っている。
「要するにやな、やばとこさかさ」
じゅんぎ君がまたもの、どういうつもりなのか凝りもせずに逆さ言葉で言った。で、負けてはなるものかと間髪入れずに
「さかさことばや」
と、言い返した。
「ガハ、ガハ、ガハ、ガハ、ハハハ」
と、じゅんぎ君が自慢げにドヤ顔で笑った。
何や知らんけど、何や知らんけど、
【逆さ言葉】
明治43年:雑誌『白樺』を創刊
大正5年:同人の武者小路実篤が『白樺』に次のように書いている。
『白樺』を出したとき、新潮六号で、
「アホダラ経まがひにバカラシ」
と言って、からかわれた。
「バカラシの反対がシラカバだ」
しかし、そんな語呂合わせが何にもならないことはわかっている。ともかく軽蔑されてきたことは確かだ。
武者小路実篤は、楽天的とも言える人生観を嘲笑されたことにムカついたのであった。
「んきぎんゅじ!」
「何をゆうてんねん」
「わっからへんかったら、頭やのうてお尻から言うてみ」
「き、やのうて、く、や。間違い探しに感謝せぇ」
「何でやねん!」
追いつ追われつの攻防戦の末に辿り着いた原っぱに、
長さ:2.2メートル
幅:1メートル
重量:180キログラム
外装が木製の航時機が打ち棄てられ、
【キテレツ大百科】
漫画:」藤子・F・不二雄
その木箱の上に置かれてあった。
【タイムマシン】
2002年:アメリカ映画
監督:サイモン・ウェルズ&ゴア・ヴァービンスキー
「じゅんぎ君」
「なんや?」
「このタイムマシンでどこへ行きたい?」
「そうな・・・」
じゅんぎ君が考え込んでいる隙に、マシンに乗り込んで
「レッツゴー!!!!」
「なんでやねん!!!!」
じゅんぎ君を航時機にしがみつかせたまま、
【time and again】
邦題:ふりだしに戻る
1970年:アメリカのSF小説
著者:ジャック・フィニイ
概要:手紙に秘められた謎を解くためにタイムトラベルし、過去へと旅立つ。
月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。(奥の細道より)