表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

隣の隣の部屋の事情


彼は宿木やどりぎなのだ。

私は小鳥。やんちゃにあちこちを飛び回る。


「彼氏さん、いるんでしょ?俺とこんなことしてていいの?」


ベッドの上で聡は私の髪をくるくると指で弄る。


「いいの。心で繋がってるんだもん。あんたは遊びなんだから。それだけは承知しといてね」


”分かってるって”軽い調子で返事をした聡は、ベッドからぴょんと飛び降りた。


「どっかいくの?」

「どっかって、大学の講義。昨日言ったじゃん」


聡はズボンを履きながら、唇を尖らせる。

ズボンを履き終えると私にブラジャーを差し出した。


「ということで、美咲さんも早く出ていく準備をよろしく」



******




「たっだいまー」


ドアを開けると、甘い香りがした。

これは多分クレープだな。


「……」


リビングから、顔だけを出して、孝弘が手を振る。

私も手を振り返す。


「クレープ焼いてるでしょ?」


私がズバリそう言うと、彼は嬉しそうに頷いた。

私は脱ぎずらいヒールと格闘しながら、むくんだ足に文句を垂れる。


ふと、鼻についた聡の家のシャンプーの香りに不安を覚える。

一瞬の内に硬直した私の身体は、甘いクレープが焼ける匂いと心地よいフライパンの返す音で元通りになった。


緩くなった涙腺以外は。


(きっと大丈夫。孝弘はこんなことじゃ傷つかないもん)


私はようやくにして、窮屈なふくらはぎを開放して、軽くマッサージを始めた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ