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服部さんがシュークリームを食べ終わるまで、少々お待ちください①


彼女は、下顎をゆっくりと上下に動かしている。

それは、シュークリームを小さくして、喉を通りやすくする為の作業である。

それに彼女は、めっきりと集中していた。


彼女の両の目は虚ろで、目の前の空間の一点を見つめている。



僕は彼女が食事をする姿を好ましく見ていた。

ゆっくりと咀嚼する口周りの筋肉の動きを観察していると、何だか、昔飼ってた犬を思い出す。



やがて、彼女は30秒ほどかかって、ようやくシュークリームの一口目を、嚥下し、終えた。

次の一口目にいくその瞬間、僕の視線に気づいたようだ。

彼女はシュークリームを胸の前に戻し、迷惑そうな表情を浮かべた。



「そうジロジロと観るのは止めたまえ。余り人の趣味にどうこう言いたくはないが、気になって仕方がない」


「ああ、ごめん。何だか、服部はっとりさんが食べてる姿を見るの好きなんだよね」


「【何だか】……というのはいただけないな。何故、其が我の食べる姿を好ましく思うのか。具体的に述べなさい」


「えっと……昔飼ってた犬がドッグフードを食べてるのを見るのが好きで……それと似たような気持ちになるから、かな」


「それではまだ不十分だ。其は”類”を示したに過ぎず、我の納得には遠い」


「んー……花に水をやってるときに感じる気持ちとか、寝る前に壁掛け時計の秒針が進むのを見てるときの気持ち」


「すべて”類”ではないか。我に言われて、違う出方を試みようと考えなかったのかい?」


「僕の中ではっきりした答えが無いのは分かっているからね。だから、感情任せで喋ってみた」


「”挿話的な記憶”を並べて示そうとするのは、其がよくやる手法であるが、我は好まないな。それは、他者に多くを委ねるやり方だ。ただ右脳派の人間らしいアプローチではある」


「まあそんなことより、早くシュークリーム食べないと。一日かかっちゃうよ」



彼女が一旦話に食いついてしまうと、中々終わらない。



だから、ある程度のところで話を止めるのが吉である。



彼女が少し不満気な表情を浮かべている。

そして、その表情のまま、2口目をパクリと口にした。





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