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調和

作者: 生神真原

人間の存在を表現するときに重要視されるのはなんだろうか。

意思のある、人格的を持った肉体の有無だろうか。

それとも、自らの内面に潜む感情、情景を映し出すことであろうか。


黒から意識を引き戻す。目を見開く。

砂時計をひっくり返す。あと30分。

ふと鏡を見る、鏡に映る私はまるで洗濯したてのシーツに一滴垂れた万年筆インクのようだ。

茶髪に近かった黒髪だった私の髪の色は何度目かで完全に抜けきり、まるで老婆かのような髪色だ。

諦めるな。まだ、枯れ切ってはいない。

肌も白に侵されている。黄色人種であるはずの私の肌は石膏に

漆喰を塗りたっくたよりもなお白く無機質…そう、陶器のようだ。


でも、私にはまだ黒が残ってる、鏡を見つめる私の瞳は内面の黒を象徴しているかのような意志を宿す。

だがこの黒も白を食い破ろうと息をひそめている。

私はまさに薄氷の上で踊っているに過ぎない。


砂は半分ほど落ちた頃だろうか。

浴槽に液体を満たす音が止む。

暖かいのか、冷たいのか、そんな表情も忘れてしまった白い液体に身体を浸す。

白に私が侵食されていく感覚に浸る。

薄氷の境界線は破られた。

私の黒が滲み出ていく。

いつまでもこうしていたい。

霞む、霞む、思考が霞む。

視界が暗転する。でも意識はある。いつものことだ。


目を開く。砂時計をひっくり返す。

世界が白くなり始めている。

鏡を見る。

私自身は思考をまとめることができない。

だが、いま私は確かに考え思考を働かせている。

私の黒かった瞳も色が抜け始めた。

私に白が絡みつく。

私はそれでも身を任す。

私にあるのは諦めではない。

そんな私のそばで砂時計は色を失わない。

黒を上から下へ、無に有を詰め込むかのように私を見つめる。

夏企画に出すための作品を制作中の私です。


よければ感想頂けると幸いです。

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