エピソード3:都市の暮らし
ドムの日、朝。
シルビナ・ノワールの朝は早い。いつも5時には起き、身支度をしたら朝食を作る。
居候先の家主であるカンナは全盲だ。歩くにも介助が必要なほどで、食事の準備など自分ではできない。簡単な日常生活は妖精が手助けしてくれているようだが、妖精には人間の食事など作れない。よって、家事は自分の担当だ。
1階にある台所には魔鉱製品の調理器具が並び、四人が座れる卓がある。シルビナの城だ。
パンと新鮮なバター、それに野菜。乾燥肉をあぶっていると、カンナが起きてくる。
「おはようございます」
「おはようございます、先生」
家の中ならば、カンナは妖精の手助け程度で歩くことができる。食卓についたカンナと共に、朝食の時間。
その後、カンナに公式手合がない時などは、二人でアストラルサイドへ移動し、決闘の勉強などをする。日がな一日、決闘の鍛錬を積み続けてはや3年。さすがに毎日、朝から晩まで決闘漬けの人生を送っていれば、それなりにモノになってくる。
だが、それでも足りない。プロ決闘者は本当に幼い頃――早い者は3歳頃から、決闘漬けの日々を送っているのだ。スタートを切るのが遅かったぶん、シルビナは同年代の奨励会員と比べると、成績は遅れがちだ。努力をせねば。
茶をすすっていると、カンナが口を開いた。
「そう、シルビナ。ヴァンのことですが」
「はい?」
ヴァン・レクサス。カンナ一門に新しく加わった少年だ。
とはいえ、一番弟子のゼルや内弟子となったシルビナとは違い、彼は書類上の師弟関係というだけで、まだカンナの講義を受けたわけではない。
「ヴァンはまだ都市に来たばかり、そうですね?」
「ええ、そうらしいですね」
列車の中で出会った関係で、シルビナはヴァンの素性も少しは知っている。田舎から都市に出てくる者は珍しくない。特に若い者は、田舎では得られない生活を求め、都市に出てくることが多々ある。
「おそらくですが、彼は今日も公園で寝泊まりしているでしょう。食事も、街路樹あたりで果実をもいでいるか、兎でも狩っていると思います」
「……まさか。いくら常識知らずとはいえ、街路樹の果実を食べるなんて」
「地方ではよくあることと聞きますよ? 都市と違って、整備局の管理下にはありませんから」
「それは……」
イメージしてみる。公園で目覚め、そこらへんの樹から果実をもいでいるヴァンの姿。
――容易に想像できてしまった。
「これも推測ですが、彼は仕事を持っていないでしょう。都市に来て、仕事を持つとも思えません」
「仕事をしなければどうやって生きるんですか」
「彼の頭は決闘でいっぱいのようですから」
「そこまでの決闘バカじゃ……、いえ、決闘バカでしたね」
「そういうことです。ですので、彼も内弟子にしようと考えています」
「はあ、なるほど……。え?」
相槌を打ってから、シルビナは言葉の意味を考える。
「う、内弟子ということは、彼もこの家に住むということですか?」
「もちろんその通りです」
「先生? 何を考えているんですか?」
思わず言ってしまったシルビナにもカンナは表情を崩さない。
「彼は仕事を持っていない。かといって、普通の仕事も合わないでしょう。彼には決闘が全てです。ならば、決闘ができる環境を整えてやることもまた、師匠の務めというものです」
「それは、確かにこの家ならば決闘もできますが、そうではなく。彼は男性です」
「そうですね。ちなみに私とシルビナは女性です」
「知っています。……先生。貞操の危機とか、そういったものをよく考えてください。ましてや先生は目が見えないんですよ?」
「知っています。それに、大丈夫ですよ。その程度ならばどうにかなります」
「どうにかなります、って……」
食事を作ることも実生活をすることもままならないカンナが、男と同居。
カンナは全盲者としてはありえないくらい勘が鋭く、たまに見えているんじゃないかと思うこともあるが――それにしたって。
「私は反対です。男と同居なんて……」
「ゼルも男ではありませんか」
「ゼルは同居していません!」
「ですが、この家に出入りしていますし、たまに泊まることもあるでしょう」
「あれは一晩中、決闘をしているだけじゃありませんか!」
「同じことです。一晩が二晩、三晩となったところで。とにかく、これは師匠として命じます。シルビナ、ヴァンをこの家に連れてきてください。それが今日の課題です」
有無を言わせないカンナの笑顔に、シルビナの口から魂が抜け出そうだった。
◇ ◇ ◇
シルビナは師匠に持たされたバスケットを手に、奨励会館へ向かった。
会館は平日も開いているが、まだ朝早い時間。さすがにミーナも来ていないだろう。
そう思って隣の公園を覗くと、案の定と言うべきか、彼の姿があった。
「ヴァン……」
「おう、シルビナ。早いな」
公園でアルウェズと共に体操をしていた少年は、シルビナの顔を見るなり、太陽のように笑う。
「……。あなた、公園で寝泊まりして、食事はどうしているの?」
「そのへんにあるじゃん」
ヴァンは本当にそこらの樹を指さす。見れば、街路樹には赤い果物がなっていた。
「本当に……」
師匠の想像力に、思わずシルビナは頭を抱えた。
「ヴァン。あのね、都市にある樹は、全て都市管理局のものなの。果物が実っているからといって、勝手に食べてはいけないの」
「え? そうなのか?」
「そうよ。ほら、これを食べなさい」
そう言ってシルビナが突き出したバスケットには、パンがいくつか入っていた。これも師匠の想像通りだ。持ってきてよかったと言うべきか、なんというべきか。
「お、ありがとな」
「別に。先生が用意したものよ。たぶん彼はそこらで野兎でも食べていることでしょう、って」
「いやあ、このへん、兎ってあんまいないのな」
「いたら本当に食べるつもりだったの?」
何もかも想像通り。彼がわかりやすいのか、師匠の想像力が優れているのか。
「うめえな、これ」
「そう。お礼なら先生に言いなさい。というか、乱雑な食事は決闘者として問題ではないの?」
「そうか?」
「体調の良し悪しはアストラルサイドに移動しても影響するもの。ゼルなんて以前、手合の日にひどい下痢をして、ろくに戦えなかったことがあるわ」
「なんで向こうに行ってまで下痢してんだよ」
「実際に下痢をしているわけではないけど、言ってしまえば、平常時の自分をうまくイメージできなくなるからでしょうね。……あなた、そういう経験はないの?」
「オレ、風邪とか引いたことねーもん」
「どういう体をしているの……」
呆れたシルビナは続ける。
「それで、あなた、仕事はどうするつもり?」
「何も考えてねえ。村じゃまき割りと水汲みと鹿狩りしてたけど」
「都市ではどれも仕事にならないわね。水は水道で各家庭に引かれているし、燃料はみんな市場で買っているわ。あと、当たり前だけれど、野生の鹿はいないわ」
「おう、そうだろうな」
「田舎ではどうだか知らないけれど、今日はドムの日よ。学生ならば今日から五日間は授業があるから、学校に行くけれど」
「オレ、今さら勉強してもなぁ」
「あなたは少し勉強した方がいい気もするけれど、まあそうね。学校に入るならばお金も必要だし。あなたは働いて稼いだ方がいいかもしれないけど」
「そういうシルビナはどうしてんだ?」
「私は治安維持部隊にいた頃の給金が使い切れないほどあるもの。両親が遺してくれたぶんもあるし」
「あー、なるほどな」
「今はいいかもしれないけれど、本格的に仕事は考えておいた方がいいわ。あなたがどうなるつもりでもね」
「どう、って?」
「……知らないでしょうから言っておくけれど、決闘者にもプロ制度があるわ。プロ決闘者になれば、報奨金のかかった公式試合に出られるようになる。でも、勝ち続けなければ、生活もままならないわ。ほとんどのプロは、公式試合の手合料の他に、先生のように奨励会で講義をしたり、イベントに参加して報酬を得たりして生活してる。それがアマチュアともなれば、もっと大変よ」
「公式試合に出られねえから、ってことか?」
「そういうこと。報酬の出る公式試合に出られなければ、決闘でいくら強くなろうとも、お金にはならないわ。収入がなければ生きていけない。当然よね? 年齢制限もあるけど、アマは、だいたい親の世話になっている人が多いわ。ヴァン、あなたは?」
「金ならねえぞ」
堂々と答えるヴァンに、シルビナは思わず嘆息した。
どこまでも師匠の想像から外れない。なんというか、自分が負けた気がして、シルビナはますます気落ちした。
「ヴァン。先生が、あなたを家に連れてこいと」
「家? カンナのか?」
「そうよ。……あなたを、内弟子にすると」
「内弟子って?」
「師匠の家に同居して、決闘の勉強をする制度よ。今はあまりいないけど。私も先生の内弟子」
「ああ、なるほどな。ってことは、あれか、決闘していいってことか?」
「そうだけど、気にするのはそこでなく……。私やカンナ先生と同居するということで」
「よし行く」
「……ちゃんと考えてる、ヴァン?」
「もちろん。決闘していいんだろ?」
明るい笑顔で、当たり前のように言うヴァン・レクサス。
「……」
なんだか心配している自分がバカみたいに思えてきた。
◇ ◇ ◇
ヴァンをカンナの家に連れて帰ると、家主はにこにこと迎え入れた。
「いらっしゃい、ヴァン。どうですか、我が家は」
「おお、広いな」
「ええ、一人で住むには少し広すぎて」
カンナの家は、奨励会館からほど近いところにある一軒家だ。一見するとレンガ造りのようだが、その実、練り石という様々な種類の鉱石を練り上げた壁材で作られている。そのため、丈夫で寒暑に強く、過ごしやすい。
家そのものは2階建て。1階にはキッチンとダイニングを兼用している台所と客間、それに風呂などの生活に必要な設備がまとまってある。
上階はシルビナが与えられている一室とカンナの寝室、それにもう一部屋ある。
「今日からあなたもこの家に住んでもらいます。問題ありませんね?」
「おう、助かる。樹の上は寝るだけならいいんだけどな、雨が降るときっついしなー」
「手荷物はありますか?」
「鞄ひとつくらいだから場所は取らねえぞ」
「結構です。内弟子とはそうでなくては。では、さっそくですが、私と決闘しましょうか」
「お、カンナとか!?」
喜んで2階に行くヴァンとカンナ。シルビナには口をはさむ暇もなかった。
「2階、って」
上階にある部屋は自分が寝泊まりしている部屋とカンナの寝室しかない。残る部屋は確かに誰の部屋というわけでもないが、そもそも寝泊まりに適した部屋ではない――。
「……」
ヴァンは今日の夜、どこで寝るのだろうか。
シルビナはそんなことが気になるが、とりあえず先だって行ってしまった師匠と弟弟子を追いかける。
玄関にある階段をあがってすぐ右が自分の部屋。その隣がカンナの寝所。そして、その対面にある部屋は、少々趣が異なる。
「おおお、すげえ」
ヴァンが感動している声が聞こえる。遅れて、シルビナも室に入った。
そこは、広さはさほどでもないが、ただの板の間だった。ここだけ床が少し高くなっており、耐震対策もしてある。
つまるところ、ここは道場だ。カンナはプロ決闘者。この家を造った時に、どれだけ狭くても道場だけは自宅の中に作ると決めていたらしい。やはりと言うべきか、彼女もまた、筋金入りの決闘者なのだ。
「では、ヴァン。参ります。シルビナ、あなたも来なさい」
「はい、先生」
シルビナはひょい、と指を振るう。と、彼女の妖精が現れた。
虎縞模様の猫。いつも何かにじゃれて遊んでいるが、これでも立派な妖精だ。
「クルックス」
声をかけると、猫はしっぽをふりふり、シルビナをアストラルサイドへと連れて行く。
アストラルサイドでは、すでにヴァンとカンナの戦闘準備が整っていた。
今日のカンナは、講義の時に来ているようなワンピースではない、しっかりとしたバトルスタイルだ。鋲のついた手袋に、裾の開いた貫頭衣。垣間見える足元は鋼鉄製のブーツ。
武道家スタイル。弟子のゼルが継いでいるこの格好は、プロ決闘者にもあまり多くない、超近接戦闘専門のスタイルだ。シルビナの使う剣や、超遠距離型の魔導士スタイル、ガンナースタイルなどには苦戦を強いられがちだが、間合いに入った後の手数と、武器を持っていないがゆえの特徴的な魔法が使える魅力を持つ。
「さて、ヴァン。あなたは決闘のスタイルについて、どれほど知っていますか?」
「スタイルって、どういう戦い方かってことだろ? って言っても、剣を使うとか、その程度しかわかんねえ」
「結構。バトルスタイルはいくつかの分類法がありますが、大きく分ければ『近接』『中遠距離』の二択。剣や槍などの格闘武器を使った場合を近接スタイル、銃や魔法攻撃主体のスタイルを中遠距離と呼びます。あなたやシルビナは分かりやすい近接スタイルですね」
「おう」
「それぞれのスタイルに得意な相手、苦手な相手がありますが――。あなたのような近接スタイルは、いかにして間合いに入るか、それが肝要です。その点、局所型のあなたは、開ききった距離をひと足に詰めてしまえるため、問題ありません。あとは、いかに相手の攻撃を読み、かわすか。それが重要ですね」
「そんなのは勘だ」
「ふふ、結構。実際、相手の攻撃やフェイントを読み切るというのは、究極のところ勘頼りです。相手のやりたいことを読み、やられたくないことをする。これは戦闘の極意でもあります」
さて、とカンナは足を肩幅に広げる。
「まずは打ち込んできてください。あなたの呼吸、見せてください」
「おう、任せろ!!」
ヴァンは強く蹴り出し、カンナに斬りかかる。
シルビナはそれをかたわらで眺めていた。
「……」
やはり早い。動体視力の自信のあるシルビナでも、ヴァンの動きを捉えるのは集中力を要する。
右、左、フェイントを織り交ぜながらの連撃。それを受けられるカンナも凄いが、それを成すヴァンも、やはり只者ではない。
「にゃあ」
かたわらでクルックスが鳴く。その頭を軽くなでてやりながら、シルビナは戦いから目を離せない。さながら、それは舞のようだ。
アストラルサイドでは、魔力が満ちている。また、決闘者たちも魔力を貸与されているので、普段とはまったく違う動きが可能だ。
そして、それは自分自身の感覚さえも惑わしてしまう。魔力の練り方によっては、跳躍力が変わり、普段は砕けない岩塊も破砕できるようになる。あらゆる身体能力が変化するのだ。物理法則が変わらず存在するだけに、それがかえって足かせとなる。
最初――子供の頃、妖精と共にアストラルサイドへ来た者は、例外なく自分自身の能力を御しきれず、振り回され、あげく自滅する。子供同士のじゃれ合いならばそれでも結構だろうが、プロ決闘者を目指すならば、そんな程度では話にならない。
自分の魔力を隷属させ、自分自身の力を的確に把握する能力。決闘者に求められる、不可欠な能力だ。
それを、ヴァン・レクサスはすでに備えている。年齢で言えばシルビナと大差ない年ごろだろう。田舎出身で、都市のように競い合う子供がいたわけでもないだろうに、これほどの技量を持っているとは。
「本当に、不思議な男ね」
圧倒的なスピードと、勝負勘。
さすがにプロのカンナには通じないようだが、それでもヴァンは善戦している。たまに殴られ、放り投げられてはいるが……、それでもあきらめる様子がない。実に楽しそうに立ち向かう。
シルビナは、朝の不安も忘れ、そんな二人に見惚れていた。
◇ ◇ ◇
日がな一日、相手を変えつつ決闘をしたカンナ一門。
夕食を終え、軽く汗を流した後。三人は台所で卓を囲んでいた。
「……」
その中において、シルビナは落ち着かないでいた。隣に座るヴァンを見るのも怖い。
ヴァンはどこで寝るのだろう。聞かなければいけないが、聞くのが怖いのだ。まさか自分と一緒に寝ろとか言われた日には、無表情なシルビナも憤激する用意がある。
シルビナが内心、そんなことを心配していると、
「ヴァン。では、今夜はどこで寝ますか?」
カンナがそんなことを聞いた。シルビナは内心でどきりとするが、鉄面皮のおかげで表情には出ていない。
「どこって、選択肢あるのか?」
茶を飲みながら、ヴァンは問い返す。カンナは頷き、
「そうですね、さすがに客間で寝るわけにはいきませんので、この台所か、2階のどこかということになります」
そうじゃない、そうじゃないだろう。
シルビナは言いたかったが、言えなかった。私の部屋とか言われたらどうしよう。
もんもんとしていると、ヴァンはあっけらかんと返す。
「じゃあさっきまで使ってた道場。あそこでもいいか?」
そう答えた。ほっとするシルビナである。
「あの部屋は床が硬いと思いますが」
「ああ、そういうの気にならねえから大丈夫」
「なんなら私の部屋でも……」
「先生」
さすがに声が出た。カンナの顔がこちらを向く。
「先生は女性で、ヴァンは男性です」
「はいそうですね」
「先生」
にこにこと笑っているカンナの表情からは、その本心が読めない。
「何か問題がありますか、ヴァン?」
「オレは別にいいけど。でも、都市の連中って、同じ部屋で寝ないんじゃねえの?」
さすがにその常識だけはあったか。シルビナは嘆息しつつ、
「その通りです、先生。ましてや男性と女性が同じ部屋で寝るなんて。不純です」
「決闘者と決闘者が同じ部屋で寝ることに何か問題が?」
「……」
確かに。確かに、決闘者同士は夜半まで互いに練習手合をしたりするが。アストラルサイドへの移動は肉体的疲労こそないが、精神は現世と同じように疲労している。その関係で、決着が着くと同時、そのまま寝落ちしたりすることもたまにあるが。
他でもない自分が、ゼルと練習手合をやりまくった末、そのまま二人して朝まで寝入ってしまったこともあるが――!
「では、シルビナと同じ部屋で寝ますか?」
「先生!!」
さすがに大きな声が出た。自分でも、これほど大きな声が出たのは久しぶりだった。
「まあまあ。どうしたのですか、シルビナ・ノワール。鬼種のような顔ですよ」
「先生、目が見えていませんよね?」
「その通りですね。それと、クルックスがおびえていますよ」
はっとする。かたわらで、虎猫が震えていた。
「ご、ごめんね、クルックス。怒っていないから大丈夫」
本当か、という顔で自分を見上げる猫をなでてやる。別にクルックスは悪くない。猫を抱え、シルビナは再びカンナを見やる。
「先生。それはさすがに私も困ります」
「同門の姉弟ともなれば、男女も何もないでしょう」
「あります。もちろん。……先生、何を企んでいるんですか?」
「企むだなんて、そんな。私はいつだって弟子のことを一番に考えているつもりですよ」
「先生が一番に考えていることは決闘のことでしょう」
「おや、バレましたか」
くすくすと笑うカンナに、もはやシルビナも怒る気力さえない。
「では、ヴァン。あなたは道場で寝てください」
「お、おう?」
カンナとシルビナが交わしていた激論の意味を、果たして彼はどこまで把握しているのか。
「……はぁ」
思わず嘆息せざるをえない、シルビナであった。




