プロローグ
作者の好みのため、主人公ご都合主義や、ハーレム、ヒロインが登場から数話でコロッといくことはないので、理解のほどお願いします。
今日は少し風が強い。
屋上のフェンスがギシギシと音を鳴らし、風に揺られている。
春の季節だと言うのに、長袖の学生服は少しおかしい、と自分でも思う。
けど、こうでもしないと体のあざは隠すことが出来なかったのだ。
ここは太陽が近いからか、少し汗をかいてしまう。待ち時間は決めてないので、僕はずっと待ち続けなければならない。
それにしても、屋上での告白なんて余程の夢見がちなんだろう。今更ながら恥ずかしくなってくる。
人生で最初で最後の告白だから、青春は味わってみるべき……そんな考えで指定しまった馬鹿な話だ。
しかも相手は学年でも人気の高い、椎名 野乃。
成績優秀、スポーツ万能、品行方正な八方美人。つまりは高嶺の花だ。
ヒエラルキーぶっちぎりの彼女と僕とは正反対と言えるべき相手だろう。……ヒエラルキーぶっちぎりなのは一緒だけども。
僕は取り柄もなく、自他ともに認めるヘタレ。高校2年生になった今でもいじめを受けているぐらいだ。
それでも誰にも言えないし、立ち向かうことも出来ないのは、やはりヘタレだからだろう。
そんなことだから、こんな選択肢しか思いつかなかった。
――僕は今日、死ぬ。
人生の中でここまでの決意と覚悟を持ったことはない。
結局逃げることしか出来ない僕を、皆はどう思うだろう。死んでしまっては知る由もないのに気になってしょうがない。
緊張しないわけがないだろう。鼓動で僕はどうにかなりそうだ。
そこで、ゆっくりと階段を昇る足音が聞こえてくる。
こんな時間に屋上を訪れる人もいないだろうし、椎名さんで間違いない。
今日死んでしまうことより、告白することの方が怖くなってしまう。ヘタレの僕が自殺を決めた時点で、もう何も怖いことはないというのに、おかしなやつだ。
足音が止まり、ドアのガラスに人影が映る。
ドアノブが回り、僕の鼓動はピークに達した。
「あ、貴方のことがずっと前から好きでした!」
顔を見ることすらままならい僕は、頭を下げてから思いの丈をぶつける。
情けないやつなのは物心ついた時から知ってるが、一世一代の告白ですらこのざまなのは涙すら出てきそうだ。
実際に泣きかけだった。
返答を待つ僕の頭は、いつまで経っても上がらない。
そもそも反応すらなかった。
それほどに僕の告白が嫌だった、というわけではないらしい。
「――」
ゆっくりと頭をあげると、確かにそこに人影はあったというのに、目の前には誰もいない。
次の瞬間には僕も消えていた。
お読みいただきありがとうございました。
時間と色々の都合上、不定期な投稿になってしまいます申し訳ありません。
これからもよろしくお願いします。