瞬く魔
こんにちは、影斗です。
今回は調整のため、今週二回目の投稿になります。手は抜いていないので安心してください。
では、続きをどうぞ。
1
約束の17:00ごろ、俺らは約束の場所に来た。いるのは俺、義光、泉宮の3人だ。
この倉庫のような建物、近くで見るといかにも麻薬の取引が行われていそうな建物だ。
俺はドアをゆっくりと開ける。中は日が差し込まないため、真っ暗だ。
でも俺は耳は悪いが目はいい。千里眼と暗視魔法を使いこなすほどだ。こんな闇、昼と同じぐらいにみえる。
遥は俺の肩に掴まって進む。
「ん?あれ、誰かいるぞ。見えるか?」
「見えてるよ。誰か座ってるね」
「何が見えてるの?」
泉宮には、何も見えていないようだ。
ちなみに義光は、見るというよりは捉えている。義光は目が悪い代わりに耳がいい。
なので、反響定位の魔法を使う。音の反射で物体との距離を把握する魔法だ。
魔法使いじゃなくても使える人はほんの一部いるらしいが、そんな人よりも距離が正確に分かり、速さを計測することもできる。
「あれは、やっぱりそうだよな」
「早く行こう」
「だから何があるの?」
二人で来たほうが良かったと後悔しながら、椅子に座った人に近づく。
「やっぱり、青塚だ」
「よかった。けがしてない?」
「してないみたいだ。でも寝ちゃってるな」
「なんてのんきなやつだ。泉宮、お前は青塚を背負って先に外に出ろ。俺はもう少しここにいる」
「分かった。ほら、行くよ」
泉宮は青塚を縛った縄をほどき、背中に背負って縄で固定して、出口に向かって走り出した。
その時、泉宮は途中で倒れてしまった。
「泉宮!」
俺は急いで駆け寄る。息はしているが、ものすごい量の汗が泉宮から流れていた。恐らく脱水症状。いや、熱中症。泉宮と青塚の体が熱い。
詳しく言うと、青塚の周りの空間だけほかの場所よりも熱い。すると、義光がなにかに気づいた。
「影信、あそこに誰かいるよ」
「おい、誰だ」
義光の指を指すほうをみると、一人の男が立っていた。フードを被って。
「やっと来てくれたね、烏谷。三人でくるのは想定外だったが、上手くいったし、後はお前を殺すだけ」
「お前、火属性の魔法使いだな。何で俺を殺そうとするんだ」
「お前の首には多額の賞金がかかっているんだ。首をとれば、一獲千金というわけだ」
「俺は何もしてないぞ」
「それは、俺が罪を擦り付けたからだ。俺がお前を凶悪犯にしたのだ。途中でいなくなったからびっくりしたよ」
聞けば聞くほど腹が立つ。俺は杖を双刀に変えた。
『義光、お前は二人を見てろ。あいつは俺が片付ける』
『わかった』
俺は怒りに任せて走り出した。
左手には〈百鬼〉、触れた水を凍らせる。
右手には〈影縫〉はあらゆる魔法を断ち切ることができる。魔法の抹消だ。
相手は火玉を複数宙に浮かべて、それを飛ばしてきた。
俺はまっすぐ走っていたのを、円を書くように走った。
火玉は走り抜けた後ろで壁に当たって消滅していく。全ての火玉が無くなったところで、一気に距離を縮める。そして、〈百鬼〉を振り下ろす。俺の〈百鬼〉は見事に当たった。しかし、男は笑っていた。気味が悪い。
そういえば、さっきは全く火玉が当たっていなかった。いや、避けてはいるが、あまりにも外し過ぎている。
そう思った次の瞬間、建物のドアが開き、火が爆発的に燃え広がった。
【バッグドラフト】
ドアを開けた瞬間に化学反応による爆発が起こる現象だ。
なるほど、これが狙いだったのか。俺は氷をつくればよかったが、空気が乾いていて、不可能だった。
辺りは一瞬にして火の海となった。俺は三人を覆う闇をつくり、爆発から身を守った。
「義光、大丈夫か?」
「僕は大丈夫だよ。この二人も無事だ」
「良かった。あいつ、作戦が大胆すぎる。あんなのまともに受け止めたら死ぬぞ」
闇を解除し、周りを見る。
くそ、あいつはどこにいる。
すると、男が突然上から飛び掛かってきて、俺は仰向けに倒れてしまった。男は宙に火玉を飛ばし、足で俺を踏みつけた。
「もう完璧過ぎて何も言うことがない。どうだ、最後に言い残すことは?」
「俺のことを下にみてるだろ。そんな先入観は早く捨てたほうがいいぞ」
「生意気な!」
男は踏みつけていた足に力を入れ、さらに足に火が着いた。俺のお腹の部分が焼けていく。
「焼き殺してやる!」
「無駄だ!」
俺は〈百鬼〉を、俺の上に乗っている男の足にめがけて刺した。足に着いていた火は消えて、刀が刺さったままの傷口の隙間から血が流れていく。
「覚えておけ。人間の体は半分以上が水分でできてるんだ」
俺は凍結魔法を使った。
男の顔は凍傷によって腫れてきて、体温が低くなっていくのが、お腹から伝わってくる。
そしてついに、男はその場で絶望したかのように膝から崩れていった。
義光ら3人は、先に外に出ていた。
「お疲れさん、すっきりした?」
「まぁ、少し残念なのが、おもいっきりやれなかったことだな。2人は大丈夫?」
「2人とも寝てるよ」
「ほんとにのんきだな」
こうして俺らは、青塚と泉宮を家に送り、自分たちも家に帰った。
2
あのあと、消防隊による消火活動によって、無事に火は消された。
中には誰も居なくて、出火元も分からないまま、捜査は打ち切りになった。
この事件は、奇妙な事件としてニュースで大きく取り上げられ、教室でもこの話題でうるさくなった。
勿論、あの四人も。
「ももー!よかったー。もう会えないかと思ったー!」
「青塚、あのあと大丈夫だったのか?水分補給したか?」
「うん、えっと、昨日はごめんなさい」
「何で謝るんだ」
「みんなに迷惑かけたから。それに、あいちゃんに影信のこと言っちゃったから」
「もう気にするな。良かったよ、無事で」
「ちょっと!あたしも心配してよ!」
「お前は大丈夫だろ。勝手に倒れたんだから」
「急に熱くなったんですー。ところでさ、男はどこにいったの?」
「そういえば。影信、もしかして殺っちゃったのか?」
「殺ってねーよ」
「この世界はルールが多いんだから気をつけてよ」
「だから殺ってないって」
「おかしいな。魔法使いは死んだ後、体は消えて無くなる仕様だからそうだと思ったのに。なら誰が?」
結局、思いあたる人が見つからず、みんなは俺が犯人と決めつけて、この話を終わらせた。………おい。
今回はとても長くなってしまいました。次回からは、大体1500~2000文字におさめたいと思います。では、また次回もよろしくお願いします。