Doll get a heart
私は物心ついた時からすでに戦っていた。
魔術協会の実験失敗で産み出された異形の化け物。その後始末のために作られたのが『対魔術災害用魔法少女type3』の私。
『対魔術災害用魔法少女』は魔界の存続を揺るがしかねない規模の魔術災害が起こった時、臨時に作られる救済装置。
───異形の化け物を抹殺せよ───
私の中にあるのはこの命令だけ。
本能のままに魔界各地に散らばった化け物の末端達を駆逐する毎日。
私にはそれしかなかったし、それ以外必要なかった。
『対魔術用災害用魔法少女』はその体内に爆弾を抱えて生まれてくる。災害の『最深部』にまでたどり着くと災害と共に消えてなくなり、異形の化け物も、世界を救った魔女も、この世界から消えてなくなり人々はいつも通りの暮らしを取り戻す。
私はそのための道具。これまでの魔女達だってそうやって世界を救ってきた。だから私もそれに従う。そこに何の疑問も抱いてはいなかった。
「恭弥・・・あなたに出会うまでは。」
魔界で、5ヶ月に及ぶ戦いの果てに、異形の化け物本体を追い詰めた私は奴をこの世から消し去るべく爆弾を起動させた。
しかし、自身の身の危険を感じた異形の化け物は人間界に逃げ込んだの。
慌てて爆弾を緊急停止させたけれど、それはすでに私の体内で莫大な魔力を放っていて、爆発こそしなかったものの私に重症を負わせるのに十分な影響を与えてくれた。
痛い。苦しい。そんな感情よりもまず、浮かんだのは。
(追わないと。地の果てまでも追いかけてあの化け物を消し去らないと。)
という化け物に対しての殺意のみだった。
幸い爆弾は無事だったし、人間界へ渡るだけの魔力も残っている。後は人間界で魔力を充填できる場所を見つけ、休養をとれば確実に奴に止めをさせる。
そう確信をもって私は人間界への扉を開いた。
「そんなことが...」
俺はなんとか由奈の話についていく。どれもこれも現実のこととは思えない話だ。
「そして、恭弥と出会った」
由奈は一呼吸置いて再び話し始めた。