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扉の外へ  作者: いざぱんす
第2章
10/11

Doll get a heart 3

目が覚めると、私はベッドの上だった。

最近は毎日のように見る天井だ。

「どうしてここに…」

疑問はすぐに解消された。

「すー、すー…」

足下から寝息が聞こえてくる。

上半身を起こし確認すると、先ほどの青年がベッドに上体を預けるようにして眠っている。

「私は魔力不足で倒れたのだったか」

確認するように独り言をつぶやく。

「うーん」

青年は私の独り言で目が覚めたようだ。

青年は眠そうな目を擦りながら、こちらに笑顔を向ける。

「やっと起きた。あまりにもぐっすり寝てるもんだから目覚めないのかと思ったよ」

そう話しかける青年からは、明らかに人間界の者からとは思えない量の魔力があふれでていた。

私の中にほとんど魔力が無いということはやはりそういうことか。

私の『対魔法災害用魔法少女』としての力の大部分がこの青年に流れ込んでしまっている。

「えっと、ここが君の家ってことでいいのかな?救急車とかは呼んでいないけど、他に家族の人とかは?」

私は返答に窮した。自分が取るべき行動を考える。

「あ、えっと意識はある?」

「大丈夫よ」

私は生返事をしながら自分の状態を確認する。治癒しかけていた体が再び弱っている。これではろくに活動できはしない。

「名前」

「え?」

「だから、俺の名前は恭弥。君の名前を聞いてもいいかな」

「きょうや」

私は口の中で言葉を転がす。ああ、そうか。人間にはちゃんと名前があるんだ。私の名前は...。

「わからない」

「わからない?」

まずい、と思う。確かに私たちに名前なんてものは与えられていなかった。でもこんな答え方をしたら確実に疑われてしまう。

私は必死に次の言葉を探した。

「あ、いやごめんなさい。まだぼーっとしていて」

「本当に大丈夫?やっぱり救急車呼んだ方が...」

「いえ、しばらくすれば大丈夫。たまにこういうことあるから」

「そうなんだ。とりあえず、誰か帰ってくるまではここにいるよ。心配だし」

「ありがとう」

優しい人だと思った。

その時、頭の片隅を違和感が襲った?

優しい?

それは言葉として知っていても自然に感じたことのないものだった。


これが...心なの?


初めて向けられる暖かい感情。

今まで私に向けられる感情は冷酷に冷え切ったものばかりだった。

敵からは絶望と畏怖に染まった目で睨まれ、任務を達成し帰還すると表面上だけの賞賛。

どんなに褒められても感じてしまうのだ。

言葉の裏に身を潜めた、昏く静かで深い闇を。

だがこの男、いや、恭弥と呼ぶべきか。彼からは純粋で温かい感情が流れ込んでくる。

曇りのない真っ白な光だ。

「どうしたの?大丈夫?」

彼の言葉で我に返る。

そして、頬を一筋の雫が滴り落ちていることに気が付いた。

私は何が悲しいのだろう。

涙は悲しい時に出る。と何かで見た。

この感情は悲しさなのだろうか。

わからない、わからない、わからない。

何故優しさを感じて悲しくなっているのかわからない。

一滴、また一滴と涙が頬を流れ落ちる。

わからない、わからない。

「わからないよ・・・。」

喉からか細い声が漏れていた。

ふわり

何かに包み込まれるのを感じた。

・・・とても心地いい。

また、暖かな感情が流れ込んでくる。

さっきよりたくさんの暖かな感情。

なんだか眠くなってきた。

心地よさに身を委ね私は眠る。

この日私は人生で初めて、夢をみた。

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