第4話 ZXカリバー
コロシアムの中はとてつもなく大きくドームのような形になっていた、入り口から見て正面奥には受付、その受付の横には観客席につながっている階段があった。
「人が多いけど、何かあるの?」
「コレだよ」
そう言いタクマはチラシを1枚見せる。
「オープニングイベント、グランドカップ決勝?」
「そうだ、それもオープニングイベントだから全員参加・・・と言っても俺たちと相手チーム以外は観客席だがな」
タクマはそう言い受付を通り過ぎる。
「あ〜、アレさせるの?」
「あの、アレって?」
「ほら、そこに剣があるでしょ?」
シンジは指をさされた方を見ると床に剣が突き刺さっているのがあった。
「これは?」
「このゲームのプレイヤー全てに参加権利がある抽選イベントの1つ引き抜きってやつだ」
「引き抜き?」
「その剣はこの世界に1つしか存在しないと呼ばれる剣でな、ある特定のプレイヤーIDを持つ者のみ引き抜くことができる剣だ」
(特定のプレイヤーID)
「そいつを抜けた者は超幸運だがな」
「どうして?」
「さっきも言った通り引けるのは全プレイヤーの中で1人だけなんだ、RPGゲームとかでよくある勇者の剣抜くイベント、抽選会みたいなもんだ」
(なるほどね、でもそんなの俺が引けるのか?そこまで幸運の持ち主でもないし何ならタクマと共闘できるだけで運を使い切ってる気がするんだけど)
シンジは剣の持ち手を握ると剣が光り出した。
(えっ!?嘘!)
『大当たり!コーネリアコロシアム地区にてワールドウェポン、聖剣ZXカリバーを引き当てました!プレイヤー・シンジ様には副賞といたしましてこちら!サブウェポン、 ZXシューターをプレゼントさせてもらいます!』
「・・・まさか本当に当てるとはな」
「えっ!?タクマ分かって俺を連れてきたんじゃないの!?」
「そんなわけないに決まってるじゃないですか、さっきも言ったようにそのワールドウェポンを抜けるのはランダムで決まるんですよ?」
「でも本当に引いちゃうなんてね〜」
「ふーん、ワールドウェポンは固有スキルを付属する武器か」
「ねぇ、さっきから言ってるワールドウェポンって何?」
「ワールドウェポンとはこの世界に複製物の無い50種ある武器のことだ」
「複製物の無い武器?」
「要は量産されてない唯一無二の武器ってこと、そのうちの一種類がZXカリバーだ」
「初心者とは言えワールドウェポンを知らないってのも凄いですよ、最初の買い物とかしてればワールドウェポンって言う名前くらい出てくるはずですが?」
「それはこの世界に入って直ぐ買い物もできずに君をタクマの元まで送り届けたから何だけど?」
「そ、それは申し訳ないですけど!貴方も私を勝手に送り届けようとしたじゃ無いですか!」
2人の口喧嘩を見てタクマが笑いをこぼす。
「珍しいねタクマが笑うなんて」
「そうだな、いや悪い2人が異様に仲が良くてつい」
「「仲良くなんか無い!」」
(そういえば気になってたけど固有スキルって何のことだろ?)
「そう言えば固有スキルって?」
「そんなことも知らないんですか?」
「ミサキ、シンジは初心者なんだ、そればかりは知らなくて当然だろ?・・・アイとミサキはシンジに固有スキルについて教えといてくれないか?俺は受付で申し込みしてくる」
「分かった〜!」
アイがそういうとタクマは受付の方へ進んでいった
「それじゃ説明するね!固有スキルっていうのはプレイヤー全員が持つ個々によって違う特殊能力の事だよ!」
「一人一人違うのか?」
「うん!少なくともプロゲーマー組はそうだよ!一般組はまだ公開されてないけど、でも真時くんのスキルを見る限りはそうだと思うな〜!」
「固有スキルってどこ見ればいいの?」
「それはね、メニューのステータスってとこだよ、因みにミサキちゃんがいれば人の固有スキルも見ることできるんだよ!」
(そういえばさっきタクマも俺の固有スキルを見てたっけ?)
「ちなみに俺の固有スキルは?」
「えーっとね・・・不明?」
「不明!?」
「やっぱり変だよね?バグかな?どう思う?ミサキちゃん」
「そうですね、バグには見えません、流石にバグならもうちょっとややこしくなってると思うので、そういう仕様ですかね?」
(仕様っておい)
「因みにシンジさん、武器の装備適正全て0なんですけどそっちの方が気になりません?」
「装備適正?」
「そんなことも知らないんですか」
「ミサキちゃん!」
「・・・装備適正とはその名の通りどの装備が適しているかを表す数値、これは初期値がみんな決まっていて、また特訓をすることで数値を上げることが可能です」
「その数値って高ければ高いほど何かあるのか?」
「そうですね、高いほどその武器の装備時には攻撃力が上がり、またスキルを覚えることもできます」
「因みに最低値以下の場合は装備できないらしいんですけど・・・見るからに装備できてますよね?」
「あぁ、でも普通に持ててるぞ?」
(持った感じだと特別重いとか振り辛いとかは無いし、バグかな?)
「ちょっと!危ないから振らないで!」
「あ、ごめんごめん、でも俺は0からのスタートってことか」
「そうですね、念のため運営に報告しておきましょう」
「そうだね」
シンジはメニュー画面を開き、インフォメーション画面を出し、運営へ報告を終えるとある違和感を感じた。
(なんでだろ?ここに無いといけないものがない気がする。それに最初のメニュー画面より少しデザイン変わってる気がするし)
「あっ!シンジくん、タクマ帰ってきたよ!」
「説明の方は終わったか?」
「まぁ、それなりに」
(固有スキルと俺のバグくらいならだけど)
「それじゃ行くとするか」
「タクマ、俺装備適正がないみたいなんだ、もしかしたら足手まといになるかもしれない!それでも大丈夫?」
「その時は俺が1人多く倒すだけだ」
(か・・・カッコイイ!)
「またまた〜タクマったらカッコつけちゃって!でもタクマのそんなところ嫌いじゃないよ!」
「アイは少し黙っててください、今のカッコイイ台詞録音してるので」
「や、やめろ!お前ら!」
アイはタクマに抱きつき、ミサキはカメラで録音している。その様子を見ると真時は笑った。
「な、何だよお前まで」
「ごめんごめん、タクマって、テレビとかで見る時は凄く冷たい感じだけど本当は優しくて面白い人なんだなって」
「それ褒めてないだろ」
「確かにタクマは笑顔が足りてないもんね〜」
「でも、そこがお兄様の良いところです」
「そ、そうか・・・?」
「そうだね!」
(正直タクマがいなかったらZXカリバーを引けなかっただろうし)
「さてと、行くぞ」
「「「うん!」」」