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勇者の二軍  作者: せき
第三章 進撃の二軍
24/34

24話

 兎にも角にもウエストパレスを攻略し、魔界四天王の一柱を撃破した一行だったが。

 新たな問題に直面していた。


 首尾良く瓦礫の中から仲間を全員救出したまでは良かった。

 だが、イザベラが仲間に加わったことによって、魔物使いヌランが同行させるモンスターを、イザベラかダイスいずれか決めなければならなくなったのだ。

 イザベラとダイスが無言で火花を散らせあう現実から目を背けつつ、魔物使いヌランは賢者イオナに訊ねる。


「どうするよ、どっちを選んでも一悶着ありそうだけど」


「決まってるわ、イザベラを連れて行く」


 あっさりと答える賢者イオナに、ダイスがすかさず牙を剥く。


「なぜです、私の方が先に仲間になったのに、理由もなく降って沸いた後釜に取って変わられるのは我慢なりません!」


「大局的な戦略上の問題よ。あなた自身や、あなたの能力に非はないわ」


「そんな言葉では納得できません! 第一、ここであなたたちと分かれると言うことは、私は……」


 賢者イオナに詰め寄っていたダイスは、言葉を途切れさせた。

 本来、新たなモンスターを仲間に招き入れたとき、いずれかのモンスターは馬車に空きがあれば中で待機することになり、馬車に空きがなければモンスター牧場を自力で目指してもらうこととなる。

 だが今は馬車がなく、モンスター牧場は次元を越えた先だ。魔界に魔物使いが足を踏み入れたという文献が残っていないため、魔界で仲間にしたモンスターをモンスター牧場に向かわせたらどうなるのかは定かではないが、次元を単独で越えることは不可能なことだけは確かだ。立ち往生したモンスターは、一体どんな末路を辿るのか。そんなあまり楽しくない想像に、ダイスも及んだのだろう。

 悲痛な表情を浮かべるダイスを、賢者イオナは容赦なく突き放す。


「繰り返すけど、あなたに非はない。だけど、ここで私たちは選ばなくちゃいけない。なら、連れて行くのはイザベラよ。あなたは、モンスター牧場を目指して」


 ダイスは、すがるように魔物使いヌランを見る。だが、魔物使いヌランは俯いて視線を避けることしかできない。なんと言っても勇者代行は賢者イオナであり、決定権は彼女にあるのだから。

 今や余裕の表情を浮かべて侍セキの肩にしなだれかかるイザベラを忌々しげに一瞥してから、ダイスは決然と歩き出す。

 だが、それは、一行の元から去るためではなかった。

 ダイスは数歩先の、一段と積み重なったクリスタルの瓦礫の山に歩み寄る。

 差し伸べた手のひらから粉を振りかけて、呪文を唱え始める。

 次の瞬間、粉を振りかけられたクリスタルが宙を舞い、互いが接合し始めた。

 一行は突然の出来事にぽかんと口を開けて眺めていることしかできなかった。

 しばらくすると、クリスタルの瓦礫が、美しい馬車へと変貌を遂げていた。

 ダイスの意図を一瞬にして理解した賢者イオナは、頬を引きつらせながら問う。


「えっと、あなた、これに乗ってついてくるってこと?」


 こくりと頷くダイスに、賢者イオナは質問を重ねる。


「これが立派な馬車なのはわかるけど、誰がこれを引くのよ」


 賢者イオナの質問に、ダイスは当然とばかりに指をさす。その先には、侍セキに身を寄せるイザベラがいた。

 イザベラは目を見開いて、侍セキの肩から手を離す。


「は? 貴様何を申す? まさか妾を馬畜生と同じにするのか? ここで死にたいと?」


「ちょ、ちょっと待ちなよもう」


 つかつかと殺意と共にダイスに歩み寄ろうとしたイザベラを、魔物使いヌランが宥める。

 魔物使いに咎めるような視線を投げかけられれば、ダイスとてしゅんとするしかない。


「じゃあ、そいつ……」


 しおらしくも指を侍セキに振ったダイスだったが、真に受けて侍セキが馬車を引き始める前に、賢者イオナが首を横に振る。


「だめよ。パーティの誰かが馬車を引くなんて」


 ダイスは拗ねたように唇を曲げたかと思うと、翼を広げて飛んでいった。

 だが、ダイスはこのまま去るようなタマではない。

 一休みにもならない程度の時間で舞い戻って来たダイスは、顔面痣だらけのテラードラゴンを引き連れてきていた。


「彼が馬車を引いてくれるって」


 あっけらかんと告げるダイスに、テラードラゴンが子犬のような鳴き声と共に頭を垂れた。

 ダイスはテラードラゴンに馬車を引く段取りを簡単に教えると、自分はさっさとクリスタルの馬車に乗り込んだ。


「さ、ついて行くからどこへでもどうぞ」


 さすがの賢者イオナも一瞬反応に窮する。だが、物事を単純に考えれば、馬車を得たという事実は手放しに喜ぶべき事でしかない。


「良いわ、行きましょう」


「わーい、やったっ! ヌラン! わたし、何があっても離れないからねっ」


 無邪気を装って喜ぶダイスに身震いしたのは魔物使いヌランだけではない。その底知れぬ不気味さに心胆寒からしめながらも、賢者イオナは腹をくくる。

 能力、行動力、知性ともに、ダイスは抜群のものを持ち合わせている。その総合的な有用性を多いに証明したのだから。


 戦力は、整った。


 賢者イオナは皆に、改めて告げる。


「じゃ、まずは、集落に帰って温泉よ!」



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