虚像の背中
8ヶ月ぶりの更新は作者が内容を忘れてしまっているという状況から思いつきで行いました笑
僕はただでさえ1話に2000文字くらいしか書かないのにこんなに途絶え途絶えの連載しかできなくて……1話の文字数が多いのに毎日投稿していらっしゃる皆さまを本気で尊敬します笑
「しっあわせわあ〜♪ 歩いてこない♪ だから歩いて行くんだね〜♪ 1日1人♪ 3日で3人♪ 3人殺して大興奮♪♪」
高木は愉快に歌声をあげながらハンドルを切る。隣では恐怖に怯える少女が紐で縛られて涙を流す。
「おいおーい、そんな顔すんなよぉ。殺りたくなっちゃうだろう?」
高木が狂気的な笑みを浮かべてそう言うと、
「ーーへえ、思った以上に早く気づいたねえ。」
高木のポケットから着信音が流れてきた。見なくても相手が誰だかわかる。
「声を発したら殺すよ?」
号泣の少女に尚も笑顔のまま脅迫。
高木はスマホを取り出すと画面をスライドして着信に応じた。
「もっしも〜し、どうした柴ぁ?」
「高木さん、1つお聞きしたいことがあります。」
「言ってみたまえ。ボクと君の仲だろう?」
「……はい。失礼は重々承知の上なんですがーー高木さん、何故あなたが直々に少女を迎えに?」
「ーーフッ。」
その問いかけに高木はーー笑い声をあげる。
「アハハハハッ! ダメじゃないか柴ぁ。もっと恐れずに踏み込んだ質問しなきゃさあ。
ーー捕まえた少女をどうするつもりですか、てね。」
「ご指導ありがとうございます、先輩。ではもっと踏み込んだ質問をしますね。」
ーー瞬間、車外から銃声音が聞こえてきたのを認知したのと、車体が大きく揺れたのとは同時だった。
「うわお、人質もいるのにタイヤを撃つなんて、大胆♪」
口調は楽しそうに、手際は素早く、目には殺気を宿す。高木は鈴を荒々しく抱きかかえるとすぐに車から飛び降りる。
車はガードレールに突っ込むとそのままその奥の河原に落下して停止する。
「うむ、しかし人気のないところで実行した辺りかなり早い段階で捕捉されていて、タイミングを見計られていたわけだ。
さすがだねえ?」
見上げると並ぶ廃墟の1つに銃口を向ける柴が高木の視界に入る。
「ーー無視は酷いなあ。先輩だぞ?」
すかさず高木は銃弾を放つ。柴は飛び降りて尚も放たれ続ける銃弾を避けるべく、回避アクションをとりつつ高木に近づく。
「ーー質問です高木さん、最期に言い残すことはありますか?」
言ったとき、柴の銃口は高木の頭に突きつけられ、さらに高木が銃を持つ手は柴のもう片方の手によって押さえ込まれた。
「さすがだ、柴。やはりおまえはボクの自慢の後輩だよ。」
「その言葉、今聞きたくなかった。」
引き金を引けば、柴が少し指を動かせば高木の命は散る。そんな状況であるのにも関わらず余裕の態度をとる目の前の狂人に柴は奥歯を噛み締める。
「なんで……なんで高木さんがこんなこと!」
「なんでも何もないさ。そもそもボクは殺し屋だ。警察官よりよっぽどキャリアが長いのさ。」
その真実に柴は顔を歪めずにはいられなかった。
「じゃあ今までのは全部演技だったんですか? 俺の憧れた高木さんはーー!」
「アカデミー俳優並みの演技力だったろう?」
その一言で、柴は自分の中の何かが崩れ去るのを感じた。追いかけてきた背中を虚像だと知り、迷子になる。
心の中を支配する感情が恐怖なのか、不安なのか、怒りなのか、嫌悪なのか……それすらも分からなくなってしまう。
ただ水に溺れたように息が詰まる。
「何が目的だ?」
「ーーいいねえ、やる気の満ちた目だ。そーゆーの好きだよ。」
高木は薄笑い。その表情が柴の荒ぶる感情を綺麗に逆撫でする。
「ーーっ! 質問に答えろ!!」
激昂し、睨みつける。それでも尚高木の笑顔は消えない。
「釣りだよ、釣り。この子はそのためのエサだね。」
「ならもう役目は果たしたはずだ、その子を解放しろ。」
「まだまだ〜。ボクが釣りたいのはおまえじゃない、もっと大物だよ。」
高木は口元を舐め回す。
「俺じゃない……? だとしたら誰をーー」
「今トレンドの怪物だよ。」
「ーーっ!」
今トレンドの怪物ーー、それが意味するのはまさか、
「おっと、おしゃべりもここまでだね。」
刹那、高木は掴まれていた手を振りほどき柴を投げ飛ばす。そして拳銃を柴から奪う。
「また遊ぼう、柴。 と言ってもまあボクも人外と殺り合うのは初めてだから無事という保障はないんだけどね?」
言うと高木は怯えている少女を乱暴に抱き寄せ、銃を突きつける。
同時に、地面に伏せる柴は新たな人影を見る。
ーー否、それは人と呼ぶにはあまりに異様で異形な体を持っていた。顔ははっきりと人間のそれだが、漆黒の体と腕とは違う体の背後から伸びる数本の黒い何か。
映像でみたその化け物の名を確か、少年から聞いた。
「ネクスト、ヒューマン……!!」
現れたのは連続殺人を起こしている、まさにその男だった。




