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増田清隆の深刻な申告  作者: たまき りよすけ
アメとムチ
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アメとムチ4


清隆は、どうやらとてつもなく突拍子もないことを先輩に相談したようだと認識した。


それに対するみんなの反応は「解決のために応援してあげよう」というものだった。


こう言うと聞こえは良いが、要は他人事だと思って面白がっているのだ。


具体的にどうするわけでもなく「心の中でエールを送っているんだよ」という係長の話からもそれがよく分かる。


「そんな中、唯一動いてくれたのが課長補佐だったんだ」


「えっ、そうなんですか」


「補佐は、税務課の前は人事にいたからね。ちょうど清隆くんが試験を受けた時、人事として採用に関わっていたと思うよ」


「マジですか。自分、し、試験中はいっぱいいっぱいで、職員の顔とか覚えてないです」


「それは別にいいんじゃない」


「それで、なんで採用の時の作文なんですか」


「これが今回の、清隆くんのお悩み解決に役立つって思ったんでしょ」


「じ、人事から渡せって言われたからじゃないんですか」


「だから『ツンデレ』だって」


係長はフフンと鼻歌を歌って、役割を終えた鳥のように自分の席に戻っていった。


(あの人、何しに来たんだろう…)


じゃなくて、課長補佐が清隆のためにそんなことをしてくれていたのなら、改めてお礼を言わなければ。


今、このタイミングで行ったら、係長から話を聞いたことがバレバレだろう。


それは係長も望んでないはずだ。


わざわざ清隆の席にこっそり現れたのだから、課長補佐にも係長から聞いたことは伏せておこう。


でも、課長補佐にはなんて言えばいいだろう。


「ご迷惑おかけしています」とか「わざわざ自分のためにありがとうございました」とか。


なんと言っても冷たくあしらわれそうで怖かった。


そもそも、まだ悩みだって解決していないのに、お礼を言ってもいいのだろうか。


ここでお礼を言ったら、せっかくの厚意を台無しにしてしまうのではないか。


役に立ったかどうかも分からないまま、感謝の言葉だけを述べるのはちょっと違う気がする。


お礼を言うタイミングは、多分ここではない。


ちゃんと答えを出して、それからお礼のことも考えよう。そうすることが係長にとっても課長補佐にとっても、一番良い選択に違いない。


清隆にできる最善の選択だ。


これは、清隆が課長補佐に苦手意識を持っているので、補佐のところに行くのを先延ばしにしているというわけでは決してない。


(そう、先延ばしにしているわけではないっ…!)


自分が今、やるべきことは――。


「こんにちは、お客さま。いかがなさいましたか」


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