申告と親告2
「若年給付金と言っても結局、所得が多いとみなされますので、所得税も住民税も高くなります」
「はい」
「今までの住民税は、毎月の給与から天引きで納めていただいていると思いますが」
「給与明細で引かれている分ですよね」
「そうです。しかし今度は若年給付金がありますので、住民税を給与天引きにすると不都合が生じる場合があるんです」
「どういうことですか」
「住民税が引かれ過ぎて、手取りが少なくなる可能性があります」
「そんなに引かれるんですか」
「その他の控除で多少は変わりますが、来年度は間違いなく今までよりたくさんの住民税が課税されます」
「そうなんですか」
ここで自衛官のおっさんは、少しがっかりした顔を見せた。
そりゃ、若年給付金でお金が入ったと思ったら税金を払わないといけないなんて、誰だっていい気持ちはしないだろう。
でも、申告受付は税金の計算をするのが目的だ。
その後の住民税をしっかり払ってもらうためにも、この説明をすっ飛ばしてはいけない。
「それで若年給付金がある方には、通常の給与にかかる住民税は給与天引きし、若年給付金にかかる分は自分で納める方法があることをご案内しているんですよ」
「自分で納めるって、どういうことですか」
「納付書または口座振替で納めていただく方法です」
「なんとなく、それが良さそうですね」
「大体6月に納税通知書を発送しますので、若年給付金にかかる住民税は、それに同封された納付書でお支払いいただければ結構です」
「口座振替の手続きは、通知が届いてからでも大丈夫ですか」
「口座振替がご希望であれば、事前に手続きを済ませることをお勧めします」
「じゃあ、給料分の住民税はこれまで通り天引きで、若年給付金の分は口座振替でお願いします」
「かしこまりました。申告が終わりましたら、税務課の窓口をご案内いたします」
(よしよしよし、上手くいった!)
初めての若年給付金だったけれど、ちゃんと説明できた。
自衛官のおっさんも、清隆の説明を最後まで聞いてくれた。
途中で怒らせたり、話が脱線したりすることもなかった。当たり前のことかもしれないけれど、清隆には嬉しかった。
(なんだ、ちゃんと分かってもらえるじゃないか)




