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増田清隆の深刻な申告  作者: たまき りよすけ
ヒントと課題
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ヒントと課題4


「それでさっきの話だけど、俺でも坂口さんと同じことをしたと思うね」


「やっぱり。自分もそれがいいと思うんですけど、どうしてそれをするのか、確固とした理由みたいなものが欲しくて」


「真面目を通り越して面倒くさいな、お前」


「そんなこと言わないでください」


「その状況で住民税申告を案内する確固とした理由…」


「はい」


「そんな理由ないよ」


「えぇ?」


「自分が、それが一番良いって思うからそうするんだよ」


森元先輩も、坂口さんと同じことを言った。


自分が良いと思うことをする。


それはつまり、自分の思う『正しい申告』に従うってことだ。


でも清隆には、何が一番良いのか、自分はどうしたいと思うのか、その判断ができないのだ。


「自分が一番良いと思うって、どうやったら分かるんですか」


「そんなん、自分で考えなよ」


「考えたら分かります?」


「分かんない」


「…」


やっぱりさっき「森元先輩が歩み寄ってくれた」って思ったのは撤回する。


優しいと思ったこともナシにする。


「ごめんごめん。でも、考えなきゃ分かんないよ」


「自分、申告はこんなふうに取り扱うって基準を決めておくと良いと思うんですよね」


「また面倒なことを」


「多分、これからも判断に迷うことって絶対あると思います。その時自分の中に『正しい申告』があると、お客さまにもこうした方がいいですって、案内もしやすいかなと」


「それでさっきの『正しい申告』に繋がるわけね」


「そうです。あの、自分どうしたらいいですか?もうわけ分かんなくって」


清隆は、すがるような思いで森元先輩を見つめた。


分からないことを分からないままにしてはいけない。


この場合、ちょっと意味が違うかもしれないけれど、清隆一人でこの問題を抱え込むには大き過ぎた。


誰かの助けが必要だと思う。


森元先輩はいつになく真面目な顔をしたかと思うと、はっきりとした口調でこう言った。


「清隆くん、あのね」


「はい」


「俺に答えを求めるのが、そもそも間違っているっ」


「えぇー」


「『正しい申告』の答えは自分の中にしかないし、誰かの答えは自分の答えではない」


「うー」


「大丈夫。清隆くんならきっと見つけられるよ」


「でも、結局は自分で見つけろってことでしょ?」


「うーん。それなら今から俺が『申告』について、有り難ーい話をしてあげよう」


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