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増田清隆の深刻な申告  作者: たまき りよすけ
深刻な接客
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深刻な接客1

昨日の今日で、さすがの清隆も今朝はできれば余っている有給で仕事を休みたい衝動に駆られていた。


もう怒られるのは嫌だし、苦情を言われるのもごめんだった。


けれど申告期間中は、絶対に休めない。猫の手も借りたいほどの忙しさなのだ。


休む理由が風邪だったとしても、白い目で見られるだろう。インフルエンザなんてもってのほかだ。


数年前、インフルエンザで税務課職員の三分の一が休むということがあったそうだ。


誰が発端かは分からない。でもインフルエンザにかかると、他の人にうつしてはいけないという理由で、某市役所では五日間の病気休暇が認められる。


五日間は出勤してはいけないのだ。


季節労働で冬が一番忙しい税務課にとって、この事件は肝の冷える出来事だったと語り継がれている。


幸い、この大流行はまだ確定申告前だったため、なんとか業務を「回す」ことができたらしい。


でも流行時期が少しズレていたらと思うと、もはや恐怖でしかない。


この教訓は今の税務課にも生かされており、申告前には「インフルエンザの予防接種をするように」という無言の空気が流れていた。


でも、そんなことを言われても、仕事をしたくない日は誰にでもある。


行きたくないものは行きたくない。仕事に行く前から帰りたい。お布団で寝ておきたい。


(あと十二時間経っても家に帰れないんだよぉおお!)


清隆は何度も自分に負けそうになりながら、申告受付会場へ向かった。


「23番の番号札をお持ちの方、どうぞ」


「あの、来て早々申し訳ないんですが、ちょっと教えてください」


次の番号札を呼ぶと、初老の男性がやって来た。


白髪交じりの髪の毛で、額に皺のあるお客さまだった。目はギョロリと大きく、少し高圧的な印象を受けた。清隆の苦手なタイプだった。


「どのようなご用件でしょうか」


「年金が400万に満たない人は、確定申告する必要がないって聞いたんですけど」


「年金収入が400万円未満で、その他の所得が20万円以下の方は、所得税の確定申告は必要ありません。ただしそのような方でも、例えば還付を受ける場合は確定申告が必要です」


「なら、申告はいるんじゃないですか」


「還付を受けるかどうかは任意なので、してもしなくても結構です」


「じゃあ還付金がいらないのであれば、申告しなくてもいいんですね」


「還付申告について言えば、そうですね。ただし、住民税を安くするための控除を受ける方は、住民税申告をご案内しています」


「どういう控除ですか」


「例えば、国民健康保険や介護保険料の支払いがある場合、また生命保険や地震保険の支払いのある方は、申告していただくと住民税の控除に取ることができます」


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