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増田清隆の深刻な申告  作者: たまき りよすけ
先輩も深刻
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先輩も深刻4

「ところで清隆くん。住民税の均等割がかかる金額って、いくらか知ってる?」


「うちの市の場合、扶養に入っていても所得が28万円以上なら均等割がかかるんじゃなかったですか」


「そうだね。だから電話のお客さまも、来年ちゃんとご主人さんの扶養に入っていれば、パート収入で93万円までだったら、所得税も住民税も発生しないのよね~」


実はこの「扶養に入っていれば」という条件は非常に重要だ。


さっき言ったみたいに、お客さまが勝手に思い込んでいるだけで、実際には扶養に入っていないかもしれない。調べてみないと分からないとはこのことだ。


それに今年は扶養に入っていても、来年は逆に誰かを扶養にしているかもしれない。離婚して扶養から外れている可能性もある。


可能性がゼロじゃない以上「扶養に入っていれば」という条件は説明する上で必ず必要になってくるのだ。


「でも住民税の均等割がかからない基準って、市町村によって違いませんでした?」


「お、よく知ってるね」


「以前、他市から転入してきた人から『住民税が前より上がった!』って苦情を言われたことがあって、調べたことがあるんです」


「えらいね~」


「所得税は課税されなくても住民税は課税されることはあるし、住民税が発生しても扶養に入ることができる場合もある、ってことです」


「お客さまに説明するのは、これを理解するより難しい」


「里実さんでも、そんなふうに思う時があるんですね」


「当たり前だよ~。毎日悩んでるよ」


「本当ですか?」


「だって、お客さまに説明するのは難しいし、分かってもらえないと苦情を言われるし、そうなったら何を言っても話を聞いてもらえないし。


いかに分かりやすく説明できるかにかかってるんだな~って、いつも思うよ」


里実さんの言葉は、清隆にはとても意外だった。


里実さんは清隆よりずっとお客さまの対応が上手くて、言葉に詰まったり反応が遅れたりすることもない。


というか、お客さまとトラブルになったところをほとんど見たことがない。


これだけできれば接客も苦にならないだろうと思っていたのに、感じていることは清隆と全然変わらなかった。里実さんでさえ、自分と同じことで悩んでいたのだ。


どうすればお客さまに分かっていただけるか。どう伝えれば納得してもらえるのか。


最近はそんなことばかり考えている。というか、里実さんでさえ考え込んでしまう程の問題なのだから、清隆なら悩んで当然である。


百人が百人の伝え方、説明の仕方があるように、受け取り方も人それぞれだ。


Aと言ってダメな人もいれば、納得される方もいる。AがダメならBと言えば良いのかというと、そうではない人もいる。その人にあった説明ができればいいんだけれど、お客さまの捉え方には違いがある。


そこに正解はない。


だから困るし、頭を抱えてしまうのだ。


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