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「いろいろと、慣れない仕事で疲れているようですね、少しご褒美をあげましょう」
気づくと生首は、元の黒い球に戻っていた。
「ご褒美はいいから、早く帰してください。お願いします」
ここに来ると、この黒い球と関わると碌なことがない。もう関わりたくない。解放してほしい。
「人の好意は受けてとっておくものですよ。それじゃあ、その弱った心が壊れる前に、慣れを植え付けますね」
慣れってなんだ?
「人を殺すことに慣れた状態になってもらうんですよ。仕事って、やっぱ慣れが大事ですからね」
意味が分からない。怖い。やめてくれ。そんなことできるわけがない。
「あっ、そんなことできるわけないって思ってるでしょ。神様だからそれくらいできちゃうんです。神様って言っても、邪神なんですけどね。はい、終わり」
「あっ、あっ、あっ……」
大きな魔力の塊に包まれたと思うと、すぐに魔力は霧散した。特に何も変化を感じないが、確実に何かが起きている。あの魔力は、異常だ。何も起こらないわけがない。
「実は、これで二回目なんですよ。脳ミソをいじくるのは。おかしいと思いませんでした? 疑問を持たずに、ダンジョン運営を素直に行う自分を」
アイツが話しかけてくるが、言葉が頭に入らない。酔い潰れた時のように、意識がぼんやりとし、徐々に眠くなってくる。
「あぁ、もう時間切れか。もう少しゆっくりお話ししたかったんですけどね」
意識が遠のく中、アイツの声だけはやけにハッキりと認識できる。ただ、ようやくここから解放されるようで、その事実に少し安心しながら、僕は意識を手放した。
目が覚めると、僕は自室で布団に包まって寝ていた。体中が汗ばみ気持ち悪い。時計を見ると、もうすぐ夕方になる。ノワールに連れられてここに戻ってきたのが、お昼前ぐらいだったはずなので、だいぶ寝ていたようだ。
僕は布団から出ると、シャワーを浴びるため風呂場に向かった。熱いシャワーを浴びながら、先ほどの夢を思い返す。あの神と名乗った黒い球は、いったい何者で何のために僕にダンジョンマスターにしたのか。ダンジョンで集めた魔素エネルギーは、あの黒い玉が集めているようであったが、いったい何のために集めているのか。
目的はわからないが、考えても仕方がないように思えてきてしまう。そのような思考をしてしまう原因が、あの黒い球に脳へ干渉されたせいなのかもしれないと思うと、悪寒が走る。
頭はクリアになったが、なんだかどんよりとした気持ちになってしまう。こんなこと前にもあったな。ふとあちらの世界で「仕事」をしていた時のことを思い出し、あわてて思考を停止する。考えても答えが出ないことは考えない。目の前のやるべきことだけを考えて手を動かす。結局こちらに来ても、「仕事」への取り組み方は変わらないな。
頭が切り替わったところでシャワーを止め、僕は風呂から出た。
毎日更新をしてまいりましたが、しんどくなってきましたので、週1更新くらいになるかもです。




