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気付いたら、真っ白な空間に僕はいた。先ほどまでは、自室で横になっていたような気がする。そうだ、目の前で冒険者が殺されて……。いや、殺すように指示したのは僕だったな。少しづつ意識が覚醒してくる。
浮遊感に包まれ、全身の感覚が鈍くなったような感覚。自分が立っているのか、座っているのかよくわからない。わかることは、ここが一度来たことがある場所ということだ。きっと、アイツがくるだろう。
「えーと、神様でしたっけ? いるんでしょ?」
呼びかけてみると、目の前に黒い球が現れた。いや、最初からそこにあったのかもしれない。
「どうも、お久しぶりです。経営は順調そうですね」
「やっぱりあなたが原因だったんですね。おかげさまで、ノルマは達成できていますけど……」
もう二度と会うことはないと思っていた、僕をダンジョンマスターとしてあの世界に送り込んだ元凶。ここに来たのは、この球のせいなのだろうか。
「かなり余裕をもってノルマを達成されているようで。優秀なダンジョンマスターは貴重ですので、是非これからも頑張ってください」
球は喜んでいるようで、その感情がこちらにも流れ込んでくる。ちょっと腹が立つな。逆にこちらの感情をぶつけられないか。今の苛立ちを相手にぶつけるように意識しながらしゃべりかける。
「でも、人殺しをさせられることになるとは思いませんでしたけどね」
あれ?おかしいな。今、魔力を使った感覚がする。魔力が黒い球に流れていった。
「やだなぁ、そんなに怒らないで下さいよ。でも死ねば苦しみはそこで終わりです。優しいと思いませんか?」
何を言っているんだ? コイツは?
「騙されて。お金が無くなった人はずっと苦しいんですよ.貧乏になって、惨めな思いをしている人を見ましたよね? 自殺しちゃった人もいましたよね? 老後の貯えを無くして、息子に怒られているおじいちゃんを見て、かわいそうと思いましたよね?」
やめろ、やめてくれ……。黒い球が急に人の生首に変わる。僕が……、僕が騙した爺さんの顔だ。やめてくれ。そんな目で見ないでくれ。
「死ねば終わりです。苦しみは一瞬です。まぁ、あの冒険者は結局仲間と殺し合いをさせられて、日の光が届かない洞窟の中で地獄のような苦しみを味わったかもしれないですね。でも、殺したんで、それも終わりました」
爺さんの生首が急に、あの冒険者の生首に変わる。生首はありがとうと呟くと、あの日見た光景と同じように、頭部が潰れて目玉が飛び出した。
「マルチ商法に、オレオレ詐欺。あとは催眠商法でしたっけ? 随分手広くやっていたみたいですね」
「やめろ!頼むからやめろ。やめて……、やめてください……」
あのクソったれな日々を思い出させないでくれ。頼むから。
「別に責めてなんていないですよ。やだなぁ。今の職場の方が楽しいことを、思い出してほしかっただけなんですから」
夢なら覚めてほしい。罪悪感からこんな夢を見せているのか? これはなんなんだ?




