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「まずは、ダンジョンの入り口付近の建物等に魔術的な危険がないか調査を行う。アンリを中心に漆黒の翼の方でやってくれ。護衛は俺達アイアンナイトが受け持つ。ここまでは良いか?」
皆異論はないようで、無言で頷く。
「よし、次にダンジョンへの侵入だが先頭をモールラッドに任せる。罠に気をつけながら進んでくれ。次に漆黒の翼、殿はアイアンナイトの順で突入する。毎度一番危険なところを任せてすまないが、頼んだぞ、ピーター。」
「その分報酬は多く貰っている。任せろ。」
無表情のまま答えるピーターさん。顔は怖いがこういう時には心強く感じる。
「そして、レントのパーティーは入り口で待機だ。もしもの時はお前らだけでもギルドに戻って報告を頼む。俺達がダンジョンに潜ってから最低1時間は待っていて欲しいが、撤退の判断はお前達に任せる。異常を感じたら直ぐに撤退しろ。分かったな。」
「……! はい、分かりました。」
正直こんな不気味なダンジョンに潜りたくないと思っていたので、待機役を任されて安心した。普通のダンジョンであれば、未踏破区域に侵入することに何ら抵抗はない。何度も探索したこともあるし、特に浅い階層のダンジョンは低ランクのモンスターしかいないことが多い。引き際さえ間違えなければ、安全に潜ることは簡単に事前情報のないダンジョンでも簡単にできる。
しかし、俺の中での冒険者の勘というか、本能のようなものがこのダンジョンは危険だと告げている。
「あら、『臆病者』にはピッタリの役割ね。」
アンリが馬鹿にしてくるが、全く気にならない。馬鹿にされても、空気が読めなくても、常に確実で安全な選択を選び続けてきた。笑いものになる代わりに安全を取れるのであれば、ありがたく頂戴する。アンリに対してヘラヘラした笑いを浮かべながらちょっと困ったような顔をしてやり過ごす。いつものことだ。
そんな様子を見かねてか、ゲンさんが溜息をついて口を開いた。
「あのな、アンリ。忠告をしておくが、コイツを馬鹿にするのはやめておけ。恥をかくぞ。」
「ゲンさんだって、彼の事、『臆病者』と呼んでいたじゃない。何か問題でも?」
アンリがムッとした顔でゲンさんに抗議をする。別に気にしていないので流してくれよ、ゲンさん。
「お前は知らないと思うが、コイツらのここ3年間の依頼達成率知っているか。100%だぞ。B級の俺達ですら依頼の達成率は8割がいいとこだ。」
「そんなの簡単な依頼ばかり受けているからに決まってますわ。リーダーが臆病なんですもの。当然でしょ。」
「その通りですよ。よくわかりましたね。」
「うるせぇレント! お前は黙ってろ!」
その通りのことをその通りだと認めたら、怒鳴られてしまった。俺の話なんてどうでもいいので、さっさと依頼に取り掛かりたいのだが、藪蛇になるので黙っておく。
「簡単な依頼だけをこなすだけで、C級になんて上がれるわけないだろ。難しい依頼も結構こなしてこの達成率だ。しかも、コイツらここ1年以上は教会のお世話になっていないんだぞ! この意味が分かるか!」




