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 急にゲンさんに名前を呼ばれてドキッとした。


「ははは……。顔に出てましたかね?」


 ヘラヘラ笑いながら応じると、ゲンさんはニヤリと笑いながら頷いた。


「お前は顔に出やすい。それに『臆病者』の話を聞きたいのは俺だけじゃないはずだぞ。なぁ、ピーター。」


 無言のまま頷くピーターさん。臆病者。それが俺のあだ名だ。依頼は安全なモノのみを選び、決して危ない橋を渡らない。依頼をはじめる前には必ず情報を集め、戦闘になりそうな依頼の場合は強力なパーティーが味方にいない場合引き受けない。それが俺の、俺たちラッキーコインのやり方だ。依頼の成功率は高いのだが、冒険をしない冒険者と揶揄され、リーダーの俺にいつしか付けられたあだ名が『臆病者』だ。


「茶化さないで下さいよ。結構気にしているんですから……。」

「褒めてるんだぞ。そう、気を悪くするな。」


 どう考えれば『臆病者』が褒めたことになるのかはわからないが、本気で言っているようだ。


「もういいですよ……。それでゲンさん、一つ確認したいことがあります。今回の依頼は、ダンジョンの有無の確認と、ダンジョンを見つけた場合に持ち帰れるだけの情報を持ち帰ることですよね?」

「そうだ。まだモンスターの確認もできていないし、もう少し付き合ってもらうぞ。」

「そうですか。ただ、撤退ラインを決めておきたいです。できるだけ情報を持ち帰るのであれば、既にギルドに報告しても達成を認められる量の情報を得ています。多少物足りないことは否めませんが……。」

「あらビビッているのかしら? もう帰りたいのであれば、貴方達だけ帰って頂いてもこちらは構いませんわ。」


 そこまで、話すとアンリが割って入ってきた。ドヤ顔がムカつくんだよなぁ。


「黙れ。まだレントが喋ってるだろ。」

「あら、失礼しましたわ。臆病風が伝染するといけないと思いつい……。」


 ゲンさんがアンリを諫めると、ピーターさんも視線でアンリに抗議する。


「えっと、続けます。なんというか、ダンジョンに誘われているというか、危険な予感がするんです。入り口に城壁紛いなものがあるのに、見張りもいません。入ってくれと言わんばかりの状況じゃないですか。洞窟の中でこちらを迎撃する策というか罠があることを想像すると、こちらの準備が不足していると思いまして……。早めに切り上げるべきだと思っています。」


 後ろでアンリが、何よやっぱり帰りたいんじゃない、などとブツブツ言っているが今は無視だ。このダンジョン、不気味すぎる。今まで3か所のダンジョンに潜ったが、ここまでモンスターの気配を感じさせないダンジョンはなかった。むしろ建物や入り口の外側にもモンスターがおり、ダンジョンに侵入することを拒むような場所しかなかった。


「レントの意図はわかった。が、ここまで来てモンスターに会わずに帰るわけにはいかない。それが俺の判断だ。ダンジョンに侵入後、モンスターを1種以上確認するのが最低ラインとする。コレでいいか。」

「もう一つ、ダンジョン内でモンスターに遭遇できない場合も考えられます。探索時間は1時間以内としてもらいたいです。」

「いいだろう、魔時計は全員持っているな? 侵入後、モンスターと遭遇、または1時間以内に撤退とするぞ。それでは具体的な作戦を話すぞ、いいか。」



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