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「見つけたぞ。おそらくあれがダンジョンだ。」


 森を進むとぽっかりと木が生えていないエリアがあり、城壁のようなものが見える。どうやら岩壁の一部を囲うように建てられているようだ。


 二週間ほど前にダンジョンを捜索中のパーティーから行方不明者が出た。パーティー自体はソロやコンビが集まって組まれた臨時パーティーだったようだが、ダンジョンがあると予想(予想自体は教会の『占い』の結果という眉唾モノらしいが)されている場所での行方不明者、それもソロではあるがそこそこに経験を積んだ中級の斥候役が行方不明となったことで、本格的に探索を行うことになったそうだ。


 ダンジョンを絡みの依頼は報酬が多い。特にダンジョン自体を探したり、存在の有無を確認するような依頼は、ダンジョンが見つからないことも多く、危険が少ない割に報酬がいいため人気の依頼になる。我らがパーティー『ラッキーコイン』も日々の実績と信頼からか、見事ギルドから指定依頼を受けることができたのだが……。


「まさか本当にあるとはな。」

「なんだよレント。ビビッてんのかよ。」

「別に、そういうわけじゃないけどさ。未確認のダンジョンなんてヤベーじゃん。」


 相棒のロレンツが茶化してくる。ビビるというほどではないが、未踏破のダンジョンに潜るリスクは馬鹿にはできない。すでに発見済みのダンジョンであれば、事前にどんなモンスターがいるか、危険度や推奨の装備、用意すべき道具などの情報がギルド側から提供されるのだが今回はないのだ。毒消しを用意していなかったとか、そんな些細なことが生死につながる。

 

「静かにしろ……。モンスターに気付かれたらどうする。」

「すいません。ゲンさん。」

「分かったならいい。気を付けろ。」


 ロレンツのせいでゲンさんに怒られてしまった。ゲンさんは今回の探索に参加しているパーティーの中で一番ランクの高いB級パーティー『アイアンナイト』のリーダーだ。確か年齢は40過ぎくらい。オールバックにちょび髭を生やしたその顔は、どこぞの貴族を思わせる気品が漂うが、首から下は筋肉の塊であり、フルプレートの鎧を装備していても機敏に動き回る。元は城勤めの騎士だったらしいが、仲間数人と騎士を辞め、冒険者になったらしい。噂では城内の権力闘争に巻き込まれて城にいられなくなったと聞いたが、確かなことはわからない。


「すまんが、モールラッドに中の様子の確認をお願いしたい。ピーター、頼めるか?」

「ふむ、了解だ。」


 ゲンさんがC級パーティーのモールラッドに斥候を頼んでいる。モールラッドのパーティーは全員小柄だが、斥候に特化したベテラン腕利きの集団だ。リーダーであるピーターさんは、50過ぎのタレ目のおっさんなのだが、右の頬に大きな傷があり、常に無表情なため一目見ただけで忘れられない雰囲気を持っている。

 その戦闘スタイルも恐ろしく、体中のいたるところに仕込んだ暗器(20センチ程の先端の尖った鉄の棒、本人は『ペン』と呼んでいる)で敵対する者の急所に刺すことで獲物を仕留める。付いた異名が『ハリネズミ』だ。

 以前にモールラッドと盗賊ギルド制圧の依頼を受けた際に、両目両耳に『ペン』が刺さった盗賊の死体をみて、ゲロを吐きそうになった。なんでもその盗賊、ピーターさんに向かってチビと言ってしまったそうだ。モールラッドの前で『チビ』が禁句なのは冒険者間では有名な話なのだが、その山賊は知らなかったのだろうな。


 ピーターさんを先頭にモールラッドが、石壁に近づいていく。壁自体は城壁に似ているが、この位置から確認できる入り口は大きくなく、普通の家のドアと同じ大きさのドアしか見当たらない。しばらく壁の外側を調べていたようだが、他に入り口のようなものは確認できなかったようで、モールラッドはその小さなドアから壁の内側に侵入していった。


 モールラッドがダンジョンの中に入ってからしばらく立ったが、特に物音は聞こえてこない。敵モンスターがいないからだろうか。低ランクのモンスターであれば、物音を立てる前にピーターさんに処理されてしまうだろうが。


 30分くらいすると、ダンジョンの中からピーターさんたちが戻ってきた。全員でダンジョンから少し離れた場所に移動し、ピーターさんの報告を聞くこととなった。


 


 

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