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「かっ、解放してくれるんですか? お願いします! 命以外でしたらなんでも差し出します!」
「あばれるな!」
縛られた状態で必死に頭を下げようとして、ウィルは再度ステラに拳骨を落とされてしまった。ちょっとかわいそうだな。
「いや、難しいことをお願いするつもりはないんですよ。僕に服従して、うちのモンスターになってくれますか?」
モンスターはダンジョンマスターに攻撃できない。モンスターにしてしまえばこちらの安全は保障されるので、秘密を漏らさぬように命令し解放すれば良い。こちらの心配事はなくなり、ウィルは晴れて解放される。ウィンウィンの取引だ。しかし、ウィルの顔色は優れず、微妙な表情のままこちらを見ている。
「あっ、モンスターになった後は解放しますので、安心してください。こちらに絶対に危害を加えないという保証が欲しいだけですから。」
しばらくの沈黙の後、ウィルはモンスターになることを承諾した。
「分かりました。でもなるべく早く、帰らせてください。」
「ええ、できるだけそうします。ただ帰る前にいろいろ確認させてください。」
スマホを取り出し、アプリでウィルが本当にモンスターとなっているか確認する。一覧の中にウィルがを見つけた。これでひとまず安心だ。
「念のため二つ命令します。今後はうちのダンジョンに敵対したり、不利になるようなことをしないこと。あと、この部屋にいる3人には嘘をついたり誤魔化したりしないこと。いいですね?」
僕の問いかけにウィルはこくりと頷いた。緊張しているようにも見える。
「それじゃあステラさん、縄を解いてあげてください。」
「ああ、分かった。」
さて、どうするか。ステラが縄を解いている間にウィルを開放する前に、何か確認することはないかと考える。近場に村や町はないかとか、冒険者のような存在がこちらを攻撃するような心配はないかとか。貴重な外の情報を持っているのだ。なるべく多くのことを聞きたい。
「エージ様よろしいですか? 彼に少し聞きたいことがあるのですが。」
何から聞こうか迷っていると、ノワールから声をかけられた。ノワールも何か気になることがあるのだろうか。考えがまとまらない僕が聞くよりも、まず彼女に任せた方が良いだろうと思い先を促す。
「どうぞ、気になることがあれば聞いてみてください。」
「ありがとうございます。それでは、ウィルさん持ち物をすべて見せてもらってよろしいでしょうか。薬草やキノコを集めに来ていたということですが、どんなものが取れたのでしょうか。」
予想外の質問にちょっと驚いた。確かにどんなものが取れるか教えてもらうこととは悪いことではないと思うが。
ふぅと軽くため息を吐くと、ウィルはカード化した自分の持ち物をテーブルの上に並べだした。松明に、テント、弓矢など様々のカードがあるな。ナイフなんて無駄に6本も持っている。だがしかし、薬草や
キノコは見当たらない。というか、装備を見て感じたのだが、とても採取目的の装備には思えない。
「ウィルさん、あなたは何をするためにこの森に来たんですか。」
「あぁ、全部話すよ。新しいダンジョンがあるかも知れないと聞いて調査に来た。薬草とかキノコの話は嘘だ。」




