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クモのうえ

作者: 雪つむじ

それはそれは、とても綺麗なところでした。

光が差し。

空気は澄み。

足元は、どこまでもやわらかく。

全てを包み込むように。

広く、広く。

世界が、どこまでも広がっていて。

その果てが、次第に丸くなって。

裏側へと続いていることすら、疑いのない真実なのに。

歩いていけるような、気がしてなりませんでした。


遠くに歩いていくことができます。

遥か遠く、遥か遠くに。

折り畳まれた山並みと。

空へと続いていく、道が、見えています。

幾重にも、幾重にも。

幾本も、重ね合わせた。

道が、見えています。

きらきらと、輝いていて。

それは、それは、美しい道なのです。


歩いていると、シマが見えるのです。

黄色と、黒と。

交互にあらわれては、消えていく。

不思議なシマの向こうに、空は続いていきます。


広がっていく大地の果てに。

折りたたまれた世界があり。

そこから、白い滝が、流れ落ちていきます。

ただ、一か所、下へ、下へ、落ちていきます。


そこを見ることがなければ、自分が上にいるのだな、ということも。

この下に、あぁ、何かがあるのだな、ということも。

忘れてしまうような、幸せな時間が過ぎるのです。


その滝に。

ふっと、身を委ねてみたのです。

この、暮らしが嫌になったのではなく。

ただ、興味を持ってしまったから、委ねたのです。

思ったよりも、その滝は、細く、細く。

細いのに、どこまでも、途切れることがなく。

下に落ちるほどに、どんどん、絡まって。

この先に、何もないくらい、もうわからないくらいに、身動きが取れなくなって。

はじめて、過ちを犯したことに気付きます。


滝の先に、黒い、黒い、壺があって。

壺の上に、赤い、赤い、星が、光っています。

もう一度、クモの上に戻ろうと思っても。

叶うことはないのだなと。


ならば、いっそのこと。

その、クモになってしまうことは、できないのかな。

そう思って。


この体は、滝の流れから逃れるすべはないのに。

その端から、容を失って。


今度こそ。


さらに、高い、クモの上へ。

昇っていくのでした。

童話、にしては、暗いかな。

教訓、なんて、無いかな。

でも、気持ちは童話で。

頭の中では、イラスト付きで。

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