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神楽 −桜の舞い−

作者: 葵 嵐雪

「はぁ〜、お前が踊る?」

 冗談だろ

 そう思いながら達也は疑いの眼差しを送るが、瑞希はそんな視線を無視して嬉しそうに頷いた。

「子供のお前にそんな大役が務まるのかよ?」

「子供って、たっくんだって瑞希と同じ一〇歳じゃない。だからたっくんだって子供だよ」

 ワケの分からない理屈だが達也は少し悔しくなる。達也はそんな自分の感情を隠すかのように瑞希から目を離し、意地悪な笑みを浮かべる。

「まあ、せいぜい大勢の人の前で転ばないようにな」

「う〜、そんなドジしないよ」

 膨れる瑞希。だが付き合いが長い所為なのか達也は瑞希の顔に心配がある、と書いてあるかのようにその心情を察した。

「だいたいお前、大勢の人の前で踊るんだぞ。本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ、私だって毎日練習してるんだから。だから桜祭りはちゃんと神楽を舞って見せるよ」

 本当に大丈夫かよ。

 達也の心配も無理は無い。なにせ桜祭りといえば大勢の人が集まり、瑞希が舞う神楽は祭りのメインとして期待されているからだ。

 両端を桜に囲まれた舞台で巫女が神楽を奉納するのだから注目度が高い。そして何故か今年の祭りは神楽の巫女役として瑞希が選ばれた。

「だからたっくん、絶対見に来てね」

「気が向いたらな」

「うん」

 何故か嬉しそうに頷く瑞希。このやり取りもいつものことで、達也が瑞希と約束したことは全て「気が向いたらな」と答えて必ずその約束を守るからだ。

 その後、二人は夕暮れになるまで遊び続けて、そして別れた。



 桜祭り当日。それは凄い賑わいで、何処からこんなに人が来たんだと思うぐらい人込みで賑わっていた。

 だが達也はよくこの神社に遊びに来ており、当然のように抜け道を知っている。そして脇を抜けるようにして達也は舞台の一番前に陣取ることが出来た。

 周りにはカメラを掲げている人達が多く、とってもうっとうしかったが我慢するしかない。達也は舞台と客席を遮る竹の棒に時々押し付けられるように押されながら、その時を待ち続けた。

 そして和楽器を持った人達が舞台の奥に座ると、辺りは一気に静まりその時を待つ。ポンッと鼓が鳴り、演奏が開始される。

 演奏に合わせるように舞台袖から登場する瑞希。その姿は頭に榊の枝を二本挿して、両手には鈴と扇をもっていた。

 あいつ、あんなんだっけ。

 瑞希の巫女姿を見るのは初めてではない。だが達也は今の瑞希の姿に新鮮さを感じていた。

 瑞希はゆっくりと舞台の中央まで進み、そして神楽を舞い始めた。

 舞台は両端にある桜と共にライトアップされており、より瑞希を神秘的に見せる。さらに黒子が所々で桜の花びらを撒き散らし、瑞希をよりいっそう引き立たせる。

 なんか、凄く綺麗だ。

 達也は胸をドキドキさせながら瑞希を神楽に見入っている。顔が赤くなり体温が上昇しているにも関わらず、達也は瑞希の神楽を見続ける。

 いや、もう達也の目には瑞希しか映っていない。周りのカメラが鳴らすシャッター音や雑談などは一切、達也に耳には入らない。

 今の達也は瑞希の神楽を見続けるのが全てなのだ。

 そして神楽は終わり、辺りの人達は散り散りにその場から去っていく。だが達也はその場に留まり、未だに瑞希が舞っていた舞台を見ていた。

 胸のドキドキも顔の赤みも今だ消えないまま、達也はそこに立ち続けた。



 その後、自分を取り戻した達也は瑞希を探したが、結局その日は瑞希とは会うことが出来ず、ちょっとがっかりしながら帰宅した。



 翌日、学校が終わるといつもと同じように達也神社へと出かけていった。

 何故だが分からないが、今は少しでも瑞希に会いたくて思わず走り続ける。そして息を切らしながら、達也神社へと到着して、ちょうど瑞希が境内で一人立っていた。

 そして達也の姿を見つけると達也の元へと走り寄る。

「ねえねえ、昨日一番前で見てくれたよね。私たっくんの姿が見れて嬉しかったよ。それに上手に踊れたでしょ。……たっくん、なんでそんなに、はぁはぁいってるの?」

「うる…せいよ」

 昨日上手に神楽を舞えたのがよほど嬉しかったのか、一気に喋って来る瑞希に対して達也は息を切らしながも返事をして、本来なら手を荒い清める水場へ行き、流れてる水を杓子で受けて一気に飲み干した。

 そして大きく息を吐いた後、達也が落ち着いたと思ったのか再び瑞希は昨日の事を喋り出した。

「っで、っで、どうだった、私の神楽。上手に出来てた?」

「んっ、まあ、ドジはしなかったな」

「う〜、私だってがんばったんだよ。もうちょっと言うことは無いの?」

「別にねえよ」

「……というかたっくん、なんでさっきから私のほうを見ないの?」

「別に何でもねえよ。それよりお前、今日は昨日みたいに巫女服じゃないんだな」

 今の瑞希の格好は歳相応の可愛い服を着ており、別に変なところなど無い。

 だからなのか、瑞希は「う〜ん」と唸りながら考えた後、何かを思いついたようだ。

「たっくんって、もしかして巫女萌え?」

「はぁ〜、何だそれ?」

「お姉ちゃんがね。巫女が好きな人達のことをそう言うんだって、教えてくれたの」

「違うよ。バカ」

「バカって! バカっていうほうがバカなんだよ」

「お前だってバカバカいってるじゃねえか」

「う〜」

 唸る瑞希。達也はそんあ瑞希を楽しそうに見ていた。そして何故だが分からないが瑞希と過ごす時間がよりいっそう楽しくなり、達也は瑞希と過ごす時間が増えていく。

 そして達也が今抱いている感情に気付くのは、もう少し後の事になる。




 そんなワケで投稿短編第二段です。今回は初恋をテーマにしたつもりです。

 つまりちゃんと書くことが出来てるのかが心配。

 なので、何かしら意見があるようならいろいろともらえると嬉しいです。

 それでは今回はこの辺で、読んでくださってありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の2行が…。 自分なら、 達也は瑞希と過ごす時間が増えていく。 を、 自然と瑞希と過ごす時間が増えていった。 にすると思います。 最後のまとめ方を、読者に質問を投げかけるような表現も良い…
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