42 テイク・ア・ピクチャー
42 テイク・ア・ピクチャー
「あ、いたいた。荻野氏、荻野氏」
体育館へ向かおうという気持ちの中、荻野靖貴は昇降口付近で細谷稜に呼びとめられる。
「どうしたんですか?」
荻野はそう言いつつも、細谷の持っているカメラと腕章が目に入る。
「急遽、拙者ソフトボールに出る事になったのである。だから、これを預ける」
「え、あ、はい」
「ダイヤルはオートフォーカスにしてあるから、シャッターボタン押すだけでそれっぽい写真が撮れるから。まぁ、楽しんで」
カメラを受取った荻野の腕に細谷は腕章も付けた。
「あ、押すの、ここですよね」
されるがまま腕に腕章を付けられつつも、荻野は操作の確認をした。
「そう。これから拙者は陰キャの生き様をグラウンドレベルで見せてくるから。荻野氏はその腕章、汚さないように」
「はい、分かりました。ソフトボール、頑張って下さい」
「うむ。撮影の際はくれぐれも競技中の選手の邪魔だけにならないように、それだけは意識するんだぞ。お昼休み、部室で会おう」
細谷はそう言い放っては荻野から立ち去る。
荻野は細谷が短いスロープを下り、下駄箱で靴を履き替え、外へ出るまでをみていた。
細谷からは普通に、男らしさすら、荻野は感じ取っていた。
河本と約束したこともあり、荻野は前々日に写真部へと放課後に顔を出し、細谷と会話した。そこで、この二日間行われる球技大会で手伝えることがあれば言って下さいと、伝えたのだ。
細谷は細谷で、そんなやる気を見せてくれた一年生が嬉しくもあり、今自分がメインで使用しているカメラではないが、前に使っていた扱いやすい方のカメラをソフトボールに出るという理由を付けて荻野に貸したのである。生徒会から渡された大事にしている腕章も、久々に現れた荻野に期待して付けてあげたのである。
気持ちのはっきりした荻野は体育館へ向かった。
「成瀬学級委員」
すでに球技大会は始まっており、サッカーコートのあるグラウンドの方で、現在行われている試合の後の自分たちのクラスの番を待っていた成瀬萌は、クラスの男子から名前を呼ばれる。
「どうしたの?」
「オギーの姿が見えないんだけど」
「え」
それで肩書き付きで名前を呼ばれたのかと理解しつつも、クラスで固まっている中を見渡すが、確かに荻野はいなかった。隣りで試合を一緒に見ていた寺本利沙とも顔を見合わせるが、利沙も見てないという意思を、首を振って示した。
「あ、清田君、オギーどこにいるか知ってる?」
「オギー? あれ、そう言えば居ないな。つうか、グラウンドで見てない気がする」
「あ、そうなんだ。ありがとう」
清田にお礼を言いつつ、これは探してこなくてはと思う萌であった。
そこへ。
「体育館では二年生のバスケットボール。一年生のバレーボールが行われています。ハーフグラウンドでは……」
放送委員会による進行状況の案内が萌の耳に入り、二年生のバスケが引っ掛かる。
「私、体育館見てくる。試合の始まる前には戻ってくるから」
「行かなくて平気?」
利沙がそう言ってくれるのが嬉しい。
「ありがとう。大丈夫」
そう言いつつ、萌はもう小走りでグラウンドを掛け出した。
萌が体育館に付くと放送にあった通りの試合が行われおり、応援で盛り上がっている生徒の歓声が、人を探しに来た焦慮感を余計に募らされる。
これでは中々見つけられないと、壇上に登って体育館内全体を見渡した。
ほとんどが、試合中の自分のクラスの試合を応援している生徒たちである。壇上よりの、前方ではバレーが、中央には区切りのネットが張られ、後方でバスケの試合が行われている。
バスケの試合をしている生徒たちは二年生である。周りで見ている生徒のジャージのカラーも二年生ばかりで、あの中に混じっての見学は難しいように思う萌は、壇上以外の壁面のバスケットのゴールよりも高い位置に設けられている細い通路部分に目をやると、腰を屈めてカメラをバスケの試合に向けている生徒を発見する。
その生徒の着ている体操服は一年生のカラーの緑であり、同学年だと分かると、カメラを荻野が持っているイメージは皆無であるが、萌は幕内から階段を上り、そこへ向かうことにする。
萌に見つかった荻野は、その場所から、試合をする河本の写真を撮っていた。河本のバスケをする姿を見たいとは思っていたが、自分が出場するサッカーの試合の開始まで間もなくなのは知っているので、体育館へ見学に行こうか、どうしようか、迷っていたのである。ただ、久しぶりに試合でバスケをする河本はどうしても見ておきたい願望があり、そこへ細谷からカメラを渡されたので、写真に収めるという口実が体育館へ向かわせる決め手となった。
最初は、そういった正式にカメラと分類されるものを扱うことは初めてであったので、戸惑いもあったが、カメラを持って構え、ファインダーを覗き、シャッターを押すことを何度か行う内に、撮る楽しさを感じられるようにもなった。バスケの試合の中でシュートをする河本の動きに合わせて少しだけ早めにシャッターを押し、自分が撮りたい画が残せれば、その満足感を一人で高い位置から味わっていたのだ。
「いたいた、オギー、もう試合始まっちゃうよ!」
「え、あ、成瀬さん」
カメラの世界に没頭しつつあった荻野は唐突に声を掛けられ驚きもする。自分を探しにクラスの代表をこんな所まで来させてしまった、ということで申し訳ない気持ちにもなった。
萌は探し歩いた苛立ちから、今の言い方がすこしきつくなった、と、自分でも分かった。その上、本人にオギーなんて声を掛けるのは初めての事である。それでも、
「なんでカメラ構えてるの? その腕章……生徒会?」
萌は荻野の隣りで同じ様に屈み、その腕章に書いてある文字を声に出した。
「うん、そう、生徒会の広報関係で」
荻野は今の状況を大きく括って答えた。
「なんで荻野君が? あ、分かった。河本さんの後輩繋がりだ」
「え、河本さんのこと、知ってるの?」
萌の口から河本と名前が出たことに、荻野は素直に驚く。
「知ってるよ、クラスの代表で、生徒会のそういう集まりに出席してるから。聞いたよ、後輩なんでしょ? 中学の」
「うん」
「バスケ、一緒にやるって聞いたよ」
「うん。ってか、河本さん今、試合出てるよ、気づいてる?」
「え!? そうなんだ!」
その瞬間、萌の声が可愛くなったと荻野は思った。そのトーンの変化が、こないだ河本さんが自分をオギーと呼んだ理由はこのコが教えたのだろうとも理解し、自分の中にジャラシーが湧くのを感じた。
萌の見ている先には、バスケの試合をする河本がいた。その萌の見ている中、ボールを持った河本は圧倒的なスピードでドリブルをし、シュートを決めた。それに合わせて河本のクラスの応援する生徒たちが歓声をあげる。
「すごい……河本さんてバスケ、超うまい人だったんだ……」
バスケを良く知らないが、河本の動きが半端ない事は萌にも分かった。
「いや、でも、これ全盛期の動きじゃないけどね」
荻野は得意気になる。
「そうなの?」
「中学の時とか、大学生とかに混じってスリーオンスリーの大会で活躍してたから、あの人は」
河本の凄さが自分の事のように嬉しい荻野である。
「……そうなんだ……すごいんだね」
そう感想を呟いた萌を荻野は見た。バスケをプレイする河本に想いを馳せているようで、自分の視線にも気付いていない姿に、二人の間には、生徒会とクラスの代表以外の何かがあるのではないかと再度、勘繰る。
「あっ」
試合を見ていた萌が心配そうな声をあげる。荻野がそちらへ視線を移すと、河本が倒れていた。
「大丈夫、大丈夫、よくあるよ。貰ったファールっぽいし、あの相手の背の高い人、河本さんの友達っぽいよ、試合開始前から話ししてたし」
荻野の言う通りに、その背の高い相手クラスの生徒は手を差し出して、河本を立ち上がらせた。
萌にはその荻野の声が届いているのか、いないのか、ただ、胸の前で手を合わせている。膝をついて屈んでいることもあって祈るような姿勢に見えた。
バスケの試合では、河本がフリースローを打つ場面であった。
荻野がまた萌をみると、その祈りの姿勢のまま、目までつぶっている。
衝動的にカメラを向け、その姿を写真で撮った。
河本はフリースローを決めた。
「ちょっと、今、試合じゃなくて、私を撮った?」
「うん。もうオレ、サッカーの試合だから行かなくちゃ」
そういって、荻野はカメラと腕章を萌に渡そうとする。
「え、なんで私に渡すの?」
「お願い。このカメラと腕章、オレの命くらい大事だから持ってて、オレ走ってグランド行くから」
荻野は立ち上がっては言った通りに走っていった。
まったく、と思いつつ、試合に目を戻すと試合が終わり、河本のクラスが勝ったようで、盛り上がっていた。
萌も、回廊から階段を下り、幕内へと戻る。体育館内と歩く途中、行われている一年生のバレーの審判を遥が行っているのに気付き、試合が一時止まっている様子を確認すると、
「はるか!」
と、名前を呼んで手を振った。
それに気付いた遥も、萌に手を振り返した。
校庭で行われているサッカーの試合はまさに荻野のクラスが始まるという時点であり、荻野はギリギリ間に合った。
「お、来た来た、オギー、どこ行ってたんだよ」
そう清田に言われた荻野は、
「ウォーミングアップをね、してた」
と、自分のしていた事をまた大きい括りで答えた。
試合が開始されれば、荻野はそこそこ足に自信があるので、ボール巡り、駆け回った。
萌も体育館から戻ってくる。
「あ、萌、何そのカメラ」
利沙に持っているカメラについて当然、聞かれる。
「これさ、体育館でオギーに渡されたんだけど。時間なかったからちゃんと聞かなかったけど、生徒会の広報をしてるっぽい」
そう答えつつ、すでにクラスでの、いつもの自分の堅さでは無くなっていると自覚する萌である。
「へぇ、オギーってそんなことしてるんだ。試合してる姿、撮っちゃえば」
利沙もそんな返しをしてくれる。
「どうやるんだろ」
萌はカメラを構えてみる。
ファインダー越しに荻野を追う。
「ここ押せばきっと撮れるよ」
利沙がシャッターボタンの位置を教えてくれるので、そこに指を掛ける。
荻野はパスされ、転がって来たボールをダイレクトにシュートした。
萌はその瞬間をとらえた。
そのシュートはゴールから外れた。
「ああ、おしい」
利沙が萌の近くで声をあげる。
「今の場面撮った。なんか楽しいかも」
そういって萌はカメラから顔を離した。
その後は結局、荻野もある程度頑張りはしたが、相手クラスに点を決められて、一回戦で敗退してしまった。
「残念だったね」
萌は戻ってきた荻野に声を掛け、カメラを返した。
「あ、カメラありがとう」
荻野はそう答え、カメラと腕章を受け取る。
「オギーってカメラとか趣味な人、だったんだ?」
利沙が質問する。
「え、あ、このカメラ借り物で。あ、バスケさ、二回戦始まった放送あった?」
「あ、あったかも」
「ヤバ、二回戦始まってるかも。見たくない?」
荻野は、河本のバスケの試合が見たいので、もう気持ちはそっちに向かっている。
「それは見たいけど」
萌は答える。
「行こうよ」
荻野はカメラを抱え、体育館へ向かっていった。
「利沙も行こう。次のうちらの球技まで時間あるし」
「あ、うん」
萌も、利沙を誘い、二人は体育館へ歩き出す。
「河本さんがね、すごいんだ」
「河本さんて?」
「生徒会副会長の」
「あ、こないだ言ってた、お礼するって言ってた人か」
「うん」
体育館へ着くと、行われているバスケとバレーの試合で生徒たちが盛り上がっている中を、また荻野がいる所まで、萌は利沙を案内し、幕内から上がって行った。
時間が空いたのか、今度は他の生徒も何名かその回廊の部分にいるので、荻野は屈んでみるような事はせずに立ったまま柵に腕を置いてみていた。
「河本さん、活躍してるよ。点決めまくってる」
荻野は来た二人に説明する。
萌と利沙も、荻野と同じような姿勢で柵に手を置いた。
「勝ってる?」
「多分、勝ってる」
萌の質問に、その位置からでは得点ボードが見えないので荻野は勘で答えた。
「オギーと河本さんってどんな関係なの?」
利沙が試合を見ながら質問する。二人が騒いで口にする河本を、副会長ということしか知らない利沙は少し疎外感を受けているので情報を収受してみたくもなった。
「中学の時、一緒にバスケしてたんだ……あ、もう少し説明させて。部活とかでじゃなくて、バスケットコートのある公園の、そこにリングがあるから、ただ一緒にやってた、みたいな。それだけなんだけど」
試合を見ながら荻野が話す中、河本がまた点を決めた。
「……へぇ」
利沙は質問をしたのであるが、見ている河本の方に集中してしまい生返事になってしまう。
「河本さんのああいうプレイが凄すぎて目を離せなくなっちゃって」
「もしかして、それで一緒の高校に?」
それは萌が質問する。
「それは自分でもまだ答えを出してない。でもあの、ゲイとかじゃないで」
「なんかわかるかも」
ミニバスくらいの経験はある利沙は、その河本の動きの鋭さがなんとなくわかり、荻野の意見に耳を傾ければ、肯定的になる。
「成瀬さんは河本さんと結構話したり……仲良いの? 親しげだけど」
今度は逆に荻野が気になることを聞く。
「普通だよ……。話しやすい、とは思ってるけど。二人でどっか行ったとかはないよ」
荻野に聞かれた質問は、利沙にもまだ言ってはいないことなので、利沙にも誤解のないよう萌は答えようと努めた。
「ぶっちゃけ、オレまだ河本さんとそんな打ち解けてる気がしなくて。だから仲良さそうで羨ましいなって思っちゃった」
荻野は正直に答えた。
「そうなの?」
中学時代からの付き合いで、自分のクラスの試合よりも河本のバスケを見たがっているくせに、まだそんな関係なのかと茶化したくもなるが、男子の先輩後輩にも色々あるのだろうと萌は想像する。
「成瀬さんって、話しやすい雰囲気があるのかもね」
それはなんとなく荻野が思ったことである。
言われた萌は、確かにクラスでいる時よりも、河本や遥といる時の方が、自然に振る舞えると意識して分かっていたが、今、利沙と荻野といるこの時は、今までのクラスの自分よりは大分、気を使ってではなく普通に話せているとは実感している。
そんな二人の会話を聞きながらも、利沙は利沙で、知っていることと言えば生徒会の副会長というくらいで、何も接点もなく、どんな人なのかと考えたこともなかった河本という人物が、バスケの試合をする姿を見ては、体を動かすことの好きな利沙としては、あれだけ自由自在に動ければ楽しいだろうなぁと思うのであった。
河本のクラスは勝ちあがり、決勝進出となった。
回廊にいる三人は、決勝も観戦しようとなり、そのまま雑談していた。
荻野は持っているカメラが写真部のものであり、実は自分も在籍していることを話した。そんな部活の話しになったことで、萌と利沙は自分たちがなぜ高校では部活に入らなかったのかというような流れになり、その理由を考えつつも、なんとなく面倒、みたいな所に答えを持って行った。
話しをする内に、萌はもっと自然に話せるようになっていった。
三人が見ていた二年生のバスケットボールは決勝でも河本が活躍し、バスケは河本の所属するクラスが一位となった。
「河本さん、ロンバクしてくれないかなー」
試合終了で河本のクラスの勝ちが決まると、荻野はそう言った。
「ロンバク?」
萌はその意味を知らない。
「中学の頃、大会の試合で勝つと大学生のメンバーから見せちゃえとか言われて、小走りしてバック転やバック宙してくれたんだよね。それがカッコ良くて」
「すごい! そんなことまで河本さんってできるの? 見たい!」
萌は驚きつつも、目を輝かす。
「そう。体操習ってたからだって言うけど」
「絶対みたい! わたし下行って言おうかロンバクしてって」
「お願いだから、そんなこと絶対言わないで。ロンバクとか教えたのオレってバレるし、そしたら二度とオレが見てる前でやってくれなくなるから。期待しないでいればいつかまたやってくれると信じてるんだ」
荻野は懇願する。
「河本さんとオギーって不思議な関係なんだね」
利沙はそんな荻野をみて、感想を言う。
「わかった、言うのはよすよ、なんか大変だね」
萌もそんな感想を言い、それでも、河本を慕う、その荻野の姿に悪い気はしなかった。
お昼休みになり、約束通り、図書室の奥の写真部へカメラを返しに荻野は行った。
「ファッ!?」
荻野が撮った画像を確認した細谷はそんな驚きの声をあげる。
「どうしたんですか? 変ですか?」
どの写真なのか荻野からはわからないので焦ってしまう。
「なぜ、荻野氏にカメラを貸したのに、荻野氏が写っているのだ」
そういい、カメラの液晶で表示された画像を荻野に見せる。
「あ、それは試合に出てる間に、持ってて貰ったクラスのコに勝手に撮られてしまったんです」
「クラスのコ? 女子か?」
「ええ、まぁ」
「チっ、リア充が」
「でも、そんなんじゃないです」
「うわ、可愛い」
話しつつ、次の画像を確認した細谷がそんな声をあげる。
「え」
「誰、このコ」
それは、祈るような姿勢の萌の画像である。
「あ、それはクラスの、あの、成瀬萌さんです。その感じが可愛いんで撮っちゃいました。あ、さっきの自分の写真もそのコが撮ってくれました」
「なんだ、仲良いのかよ。リア充すぎるよ、荻野氏」
「ほんと、そんな仲良いとかまではないです」
「いや、でもこの写真最高だよ。この祈る感じがオレの中の権威のある賞を差し上げたくなる」
「あ、ありがとうございます」
「荻野氏がこの距離で撮ったってのもあるけど、このコの魅力が大きいね」
「……はい」
その後の画像を確認する細谷である。
段々、怪訝な顔つきになる細谷に荻野は不安になる。
「荻野氏」
「はい」
「カメラが良いからいい感じで撮れてるけど、被写体があとは全部、河本君ばっかだけど、君はホモか何か?」
「いえ、違います」
否定しつつも、構図のことを注意されるかと思っていたが、そうではないので荻野はどこかホッとした。
「まぁ合格だ。良い写真だ。こっち的にはもっと女子を撮ってくれれば、もっと良かったけど、撮りたいものを撮るってのは大事なことだ……上手だ」
どんな写真でも褒めようと決めていたことを忘れていた細谷は、思い出したように付け足した。
「ありがとうございます。写真を撮る楽しさ、実感しました。もっといろいろ撮ってみたいと思いました」
「うむ」
有望な一年生に細谷は嬉しくなった。
「ソフトボールはどうでした?」
荻野は良かれと思って質問した。
「え?」
「ソフトボール、出たんですよね?」
「あ、ああ。聞きたい? 陰キャラが張りきって球技大会でソフトボールに出場した結果、聞きたい?」
「……はい」
その様子に聞いちゃマズかったのかな、と思う荻野である。
「八番ライトで出て、一打席だけ回って来て、ファーストファールフライ。漢字三文字で表すなら一邪飛だ。守備機会はゼロ。クラスは負けた。以上。これでオレの夏は終わった」
「……細谷さん、まだ五月下旬です。暮春です。夏はこれからです」
写真を褒めてくれたこともあり、荻野は乗っかった。
「そうだな、ナイス突っ込み」
そういい、細谷は親指を立てて荻野に向けた。
完全にこの先輩と馴染んでるな、と思う荻野であった。
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