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micelle  作者: Hyro
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17 新入生歓迎会

 17 新入生歓迎会



 入学式から二日空けて、体育館では新入生歓迎会が行われる。

 歓迎会は二年、三年生も参加をする為、体育館には本年度の生徒が全員集まることになる。

 生徒会はその歓迎会の仕切りを行う。

 教師たちから見れば、毎年行われている光景ではあるのが、参加をする生徒たちの役割は毎回違うから、段取りよく行うには生徒会の手腕が必要なのである。

「十時から開始です。生徒会長の挨拶の後、吹奏楽部さんからの演奏で始まります。持ち時間は十五分です。その後合唱部さんです」

河本が新入生向けに歓迎の催し物を行う合唱部長、吹奏楽部長に開始の時間と持ち時間を伝える。簡単なことなのであるが、それを改めて言葉で言われておくのと、紙で説明されたきりなのでは大分動きが違ってくる。

 この二年の副会長の説明は随分と丁寧だな、と合唱部の部長である大塚真紀は思う。吹奏楽部長の水上亜美は演奏する曲の完成度を気にしつつも、自分たちに伝わったのを確認すると、部活動紹介で舞台袖に揃っている各部のキャプテン、主将、部長、リーダーと総称は違えども、各部の代表に説明している河本を目で追った。

 各部の代表の中にも、河本の、味付けのない必要なことだけを的確に伝えていくその姿を気に留めるものもいる。自分をまったく出していない、その黒子に徹した動きは逆に人の気をひいてしまいもする。ただ、それはほんの二、三分の話であり、合唱部も吹奏楽部も自分たちの演奏が始まればそっちに集中し、そんなこと忘れてしまう。

それぞれの部の代表たちも壇上で自分たちの部活のプレゼンに力を注ぐのだから、気に留めておく理由がない。

河本は誰に気に留められようが覚えてもらおうが関係はなかった。

ただ、この歓迎会が円滑に無事に終えることに務めているのである。

部活の紹介が行われている最中も、舞台袖で次の部の準備具合を確認し、そしていちいち、一瞬、竹清をみるのである。

そう、河本は竹清に何も不安な思いをさせたくないのである。その思いが、会長からの指示でもなく、誰から言われた訳でもないのに、きびきびと河本を右へ左へと走らせるのである。

他の役員たちが手伝おうにも河本がテキパキと動き回るので声すら掛けづらくさせていた。河本はその役員たちの優しさも理解はしていたが、まずは竹清生徒会長なのである。

こんなことがあった。

バレー部の男子が紹介を終えた後、女子バレー部への順番となった。男子キャプテンの身長が百九十センチ近くあった後の為、女子バレー部のキャプテンである酒井晴香が壇上のマイクの前に立つと、届かなかった。マイクの位置を直そうにも酒井晴香は話す事を書いた用紙を手に持っていた為、一瞬の躊躇いが生じた。

竹清は酒井晴香がマイクに向かう前にはその高さに気づいていたので調節しなくてはと思っていた。が、生徒会長として立場が動けなくさせていた。自分は生徒の代表なのである。そんなプライドを覗かせ、動くことに邪魔をした。晴香がどうにかしてくれるのではないかとの期待もあった。しかし、晴香の一瞬の躊躇いの様子は調節をこっちでやらなくてはと、思わせるから、袖から出ようした時である。

隣りにまで来ていた河本が手で竹清を制した。

その制し方は会長に対する気遣いがあった。すばやくマイクの前へ駆け寄ると高さを晴香へと合わせた。晴香の喉元あたりに視線を送り、どうぞというような目での会釈をして舞台袖に引き下がった。

別にそれで手際よくこなしたなどという得意げな表情をするわけでもなく、また舞台袖から会の進みを見続ける河本なのである。

「ありがとう、助かったよ」

竹清だけはそんな河本にでも声をかけられるのである。

その時だけ、まったく無表情でしかなかった河本の顔に、笑みが浮かぶのである。



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