探索開始
3日に1回は書きたかった
「…ここは…どこだ?」
あたりを見回すと木が生い茂るばかり。大きな森の中なのだろう。奥の方までは見えない。
とりあえず足はある。生きている。なるほど生きているっていいもんだ。
木の揺れる音が心地良い。空気もうまい。鳥のさえずりも聴こえる。うん。
「ここどこだよ!」
まさか転生早々に当てもなく森の中を彷徨う事になろうとは…
…歩き出して半日ぐらいたったか。ここが山の中なのだと分かった。
足元はなだらかな斜面になっており、途中で視界が開けて遠くの山の間に煙が見えた。さっき言ってた村のものなのか?
そして今は森の中。
思った以上に疲れて岩に腰掛ける。喉が乾いた。腹も減った。生きるって大変なんだと実感させられる。
「あいつ、絶対出すとこ間違えたな。俺また死ぬぜ。」
しかしやりかねない。俺はまだ森以外何も見ていない。
でもまあ、まだ戦場のど真ん中に出されるよりはましだったわけだが。
いや、こっちのがくるわ。
「疲れたー。飯食いてー。」
ぶつぶつ文句を言って歩く。さっき煙の見えた方角に。
そしてどれぐらい立ったか、日が暮れ始めた。
「あれもしかして野宿かこれ。結構やべえな。」
大きな木の根に入れそうな窪みを見つけ、ここで夜を明かすことにした。
そして、とうとう日は暮れた。
火の起こし方が分からなかったが、なぜか持ってたライターで火はついた。
持ち物がそのまんまで転生されたのはラッキーだった。しかし背負ってたカバンは無かったな。
それにしても、だいぶ村に近づいているはずなのだがとても静かだ。この森は静か過ぎる。
生き物がいないのか?普通狼の遠吠えとかさ、ベタだけどそんなん聞こえないかね。鈴虫くらい鳴いてんだろ。
聞こえるのは風が揺らす木々の音、起こした火の中で弾ける枝の音、腹の虫。
「知らね。寝よ。」
横になりパーカーのフードを被った。
『タッタッタ』
微かに。足音。鎧のあたるような音も。フードを払い、身体がゆっくり起き上がる。
人だ。まだ遠いが。
そしてハッとした。武器がない。ここは戦国時代。相手は刀。襲われたらとてもやばい。
善人であることを願うが、こんな状況に助け人が通りかかるか普通。
確実に足音は近づいてる。速い。
パンチは届くか。今のうち逃げるか。しかし道は暗くて見えない。
武器は…大きめな枝、ライター、、タバコ十数本、財布には小銭が少々、iPhoneは圏外…
あ、明かり見っけ!
逃げるを選択し森に向かってライトをつけた。と次の瞬間後ろから地鳴りのような声で、
『おい、人間!』
振り返ると後ろに見上げるほど大きな男が立っていた。
第一村人発見。
暗くて全貌は見えないが、その肌は黒く、口元には白い牙が光る。頭部には揺れる焚き火に照らされる角。
鬼ですね。
「…こ、ちわっす。」
『おめえ、ただの人間でねえな?』
ここは隙をついて逃げるか。戦うにしてもこの大鬼を俺ごとき倒せるか?話術には自信ないし、刀もないし、いっそ砂かけて、
『いいか、おめえ下手な真似すんな?森から弟子達がおめえを狙っとる。名手ぞろいだぞ。』
あダメだ。
『おいまず、おめえは何もんだ!』
まあ、死ぬぐれーだったら殺ってやろうじゃんか。
『ここは鬼の里だ。人が入れるわけねえんだ。おめえ、もしや妖怪だろ?』
妖怪はどっちだバケモノが。
『どこのもんだ?え、何か言ったらどうなんだ!』
大鬼の剣幕に少々困惑していると、森の奥から声が響いた。
『親方ー!こいつただ念力が無いだけじゃないっすかー?何となく森に迷い込んだって事っしょー!』
「それ!ただの遭難中なんで、見逃してください。」
『おい、本当か?』
しばらく考え込み、
『…んーまあ武器も持ってねえみてえだし、馬鹿野郎が哀れに遭難したと考えっと筋が通るってもんか!』
馬鹿は聞き捨てならないが、急に命の危機は脱したようだ。
『ん?おめえ迷子なんか。じゃあうち来い。夜には時々猛獣が出るんで野宿は危険だ。泊めてやる。』
「マジすか。ラッキー」
『特におめえみてえな念力のないやつはいい餌だ。俺らにとってもな!冗談だ。がはは!』
「ねんりき?」
『よし、おめえら帰んぞ!』
俺は大鬼に先導され夜道を歩き始めた。
iPhoneのライトを片手に。
思うように進まないなあ