非日常の誘い 神には関わるな 3
終わりは少しグロテスクな感じになります、苦手な方は、ご注意ください。
あれからしばらく経った11月。
友人の元に彼からメールが届いた。
友人はあの一件以来、怖がって、彼に対して自分から連絡することはなかった。
あのときも、競馬の予想で三人で盛り上がるつもりだったらしい。
もともとそんな会話から知り合いになったようだ。
そんな彼から、友人の携帯にメールが届いた。
「こないだの事覚えてるか?」
「やっぱり僕の神は本物だったよ。」
「でも」
「神は、ほかにも沢山いて、同じように気づいた人間が、これから取り合いをする事になると思う。」
意味が分からない。
この人はどうかしてる。
頭がおかしい。
と言いたかった、でも、こないだの件があった手前。
なんとも言えない、いやな感じがした。
「いや、こないだのも、絶対何かのイタズラかトリックで、テレビの件も事故だよ。」
「このメールだって手の込んだイタズラだよ。」
最終的には、彼は他の誰かとマジシャン対決でもするのではないか?
という、冗談のような結論が出て、メールも結局返さなかった。
それから1ヶ月くらいたった12月のある日。
友人の携帯に彼から、またメールが届いた。
「神に嫌われてしまったかもしれない。」
「でも、上手くいくと思う。」
「明日、それが解るよ。」
「夜中の2時に、港区の○○製油所跡地においでよ。」
「見せたいものがある^-^」
友人の顔色が悪い。
私達は行かなかったら、あのニュースキャスターと同じ目に合うのだろうか?
このメールは命令なんだろうか?
メールの文面とは裏腹の威圧感、私達にはどうしようもない絶望感がのしかかった。
なんで、関わってしまったんだろう。
友人を恨んだ。
どの道行っても、いいことはないだろうと思った。
こんな事は妄想かもしれないけれど、でも、もし行かなかったら、ひょっとしたら同じやり方で。
殺されるかもしれない。
多分、二人とも同じ事を考えていたと思う。
妄想だ、騙されるな。
こんなことを考えるから、私は以前もあんな目にあったのだ、ということ。
これ以上、関わらなければいいんだ。
この病的な思考が、これまでの恐怖の遠因ではないか。
でも、だめだった、私は友人を説得できなかった。
私達は結局その場所に行くことにした。
付近に車を止め、不審者と思われぬよう、人目に注意しながら。
二人でコソコソと指示された場所に向かう。
真冬の真夜中。
雲ひとつない夜空。
悲しいかな、星は美しくて。
キンキンに冷えた空気が、肌を刺して。
寒さで冴えた頭は、くりかえし、恐怖と、ばかばかしさを訴える。
行き先は携帯のGPSで、かなり細かい場所まで指定されていて。
どこを歩けばいいのかも、メールにきっちり記載してあった。
初めて来る場所とは思えない足取りで、指示された場所に向かう。
しばらく歩くと、工場跡地のはずなのに、敷地内に、照明なのか、ランプというのか。
明かりのついている所があり。
遠目から、うっすらと、立ち上る湯気が見えた。
なんだろう
赤い
「真っ赤だ・・・」
友人の声がした
絶句した。
どうしようもない。
めちゃくちゃ。
多分人間だったはずのものが。
まるで上から垂直に押しつぶされたように。
水溜りのように広く。
地面に広がっていて、湯気がうっすら上がっている。
だれだ、かれだ、いやべつのひとかも、つぶれたんだ どうして
見た瞬間、二人とも逆方向に走り出した。
もう関わりたくないーーーー
何が起きていたのかもわからない、とにかく関わりたくない。
離れなければ、忘れなければ。
警察にも連絡できなかった、どう説明すればいいのかわからない・・・
その日は二人でガタガタ震えて夜を明かした。
翌日友人は携帯を解約していた。
見えない所で何があったかはわからない、知らない。
この話はここで終わり。
とにかくもう、考えてはいけない事なんだ。