非日常の誘い 神には関わるな 2
神を証明する。
彼の言い分はこうだった。
「これからいくつか、神の力で奇跡を起こす。」
「それが他人の信用にたるものなら、僕はやはり神を飼っていることになる。」
ばからしいと思った。
空中浮遊でもするんだろうか?
「飼う」
という表現もなんだか気になるし。
部屋には大きな水槽があり、彼は指差した。
水槽の中には、うっすら青く光る、正四面体のクラゲのような物が浮かんでいる。
「あれが神だ」
と、彼は言った。
光源もないのに、うっすらと青く光る。
クラゲだと思った。
最初の奇跡はすぐに実現した。
テレビの競馬中継の順位を、彼は全て言い当てた。
すべて、一等からビリまで、全レース全て。
勘が良いという次元ではなくて。
台本を読むようにスラスラと言い当てた。
友人も驚いていた、蒼白だった。
なんというか、この人を利用して、という邪険な発想以前に怖いと思った。
ちょっと、本当に怖い人かもしれない。
ひょっとしたら録画かも知れない、そう思った。
「ひょっとして、録画だったりして?」
引きつった笑顔で尋ねた。
彼は不機嫌そうな顔をして。
「なら、なら別の事をする。」
と言った。
数時間ほど待たされた後。
テレビのチャンネルを変える。
夕方のニュースがやっている。
内容は確かに今日の出来事、ニュースキャスターが生放送で内容を告げている。
彼がテレビを指差すと
キャスターは無表情のまま、前のめりに倒れた
私と友人は言葉を失って。
でも、これ以上何か言えば、彼はもっとおかしな事をしでかすかも知れない。
次の矛先は自分達かもしれない。
数分前とはまったく違う。
どこか現実感の無い恐怖感。
そんな気持ちで画面を見つめていた。
時間が遅く感じる・・・。
テレビは軽やかな音楽をBGMにして、画面一杯に放送休止のテロップを写し出している。
「信じてもらえたかな?」
そこからは必死に、生返事の会話をして、友人と一緒に逃げるように彼の家を出た。
「催眠術のようなものだったんじゃないか?」
と、帰り道、お互いに、必死に、弁明したが、結論はでなかった。
ニュースキャスターは心臓発作で、死ぬことは無かった。
続