表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/28

呪い 1

利子視点

私は、職業として、占い師をしている。


もともと、諫早の家系は、代々が霊能者のような事をしていて。


私は長女だったので、小さい頃は、出雲やら青森やらに、一人で修行に出されたりもした。


もっとも、私が跡取りになる事はなかったけれど・・・。




 私には実力がなかった、特に祓う方の能力がなかった。


探るのは特異なほど、得意だったけれど、私の家系、もとい、協会の維持構成に必要な人員には当てはまらなかったらしい。


私も、あんな事を代々生業にしている集団は大嫌いだったし。


小さい頃は、もっとアイドルとか、お花屋さんとか、お姫様とかケーキ屋さんとか・・・


・・・・・とにかく。


夜中に、使用前の卒塔婆をマイク代わりにして、アイドルのように読経したことも絶対内緒だ。


・・・・じゃなくて。





 私は学生時代、今よりもっと多感だった頃、自分の能力を、私自身のアイデンティティのように周りに吹聴していた事がある。


その時は、占いなんかよりもっぱら、心霊がらみの相談の方が喜ばれた。


私は、視ることや、たぐる、ことについては、家系の中でも、異様に思われるほど長けていたから。


今思えば、あまり踏み込んではいけない所まで、当時は視ていたし、それをそのまま本人に伝えたりもした。


そんな頃。



 友人の姉に、一人、心霊現象で悩まされている人がいると聞いた。


新婚の姉だ、私は彼女と、彼女の姉の新居へ招かれ、相談を受けた。


視ればすぐに分かった。




彼女の姉は、殺意を持って呪われている。


結果として、遅かれ早かれ死ぬだろう。


まるで大きな百足のようなモノが、彼女の姉の体にとぐろを巻いているのだ。


百足の足は、彼女の姉の皮膚に無数の穴を空けながら、そしてその顔は、今にも首元に食いかかろうとする形相だった。


私は、自身を、ある種の経験豊富な人間だと自覚していたけれど、こんなモノは今まで見たことない。



百足は、それ自体が因果の糸にように、尾を長くしていた。


無意識にその先を視た私は、あまりにも近しいその因果に驚く。


呪っている本人は、今、一緒にいる妹。


さすがにこの時は、私はすぐ伝えるべきなのか迷った。


友人は多分、私が、もっともらしい嘘でもつくと思ったに違いない。


その時理解したのだ、私は結局ピエロだ、そういった役回りを期待されて、ここへ連れてこられたのだ。


心底腹が立った。


「分からない」


とでも伝えて、帰ってしまおうかと思った。



 でも、彼女の姉の衰弱は本当に酷かったし。


人道的な考え、とは剥離している事には気づいていたけれど。


一体、どんな方法で、私の友人は彼女の姉に呪いをかけたのか。


それは、その原理に対する好奇心は、私をこの場に留まらせる理由になった。



 あれほどの強い呪いを、周りに、私にさえ気付かせもせず展開する。


もしそんな事が出来れば。


私の友人は、呪術者としても、それを隠す術者としても、私を遥かに上回る。


私は、そんな人間と今まで身近にいたという恐ろしさと、どこか嫉妬めいた感情に支配された。


無論、彼女が呪いの術者だったら、の話なのだけれど。


もしそうだとすれば、私もその標的になる可能性は十分にある。




「お菓子を作るんです・・・、クリームを・・かき混ぜるでしょ?」


「そうすると、ボウルの中のクリームから、人の顔が・・。」


「たぷっ」


「と出てきて。」


「口の部分をパクパクさせながら。」


「死ね、死ね、死ね、死ね。」


「って何度も、言うんです。」




「玄関の呼び鈴、が鳴るでしょ・・・」


「それで、インターホンに出ると、カメラにはだれも写らないんですけど。」


「大音量で、死ね!! 死ね!! 死ねぇ!!!! って・・・。」


「ぁぁぁぁああああァァァァァあああああ!!!!」




「お姉ちゃん!落ち着いて!!」


「きっとこの家のせいだよ!、こんなこと、引っ越してからなんだから!!」


「ねぇ利子!! ・・・どうすればいいの!?」



まるで茶番、でも起きている事態は深刻だ、このままでは友人の姉は確実に死ぬ。



「・・・・難しいけど、探ってみる・・。」


「あと、あんたはあんまりお姉ちゃんと一緒にいちゃダメだからね!」


「お姉ちゃんは、旦那さんに付き添ってもらって・・・。」




そう伝えて、その日は友人宅を後にした。


呪いの原理を私は知りたかったし、なぜあそこまでされるのか分からないけれど。


彼女の姉の事も気がかりだった・・・・。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ