waste 3
バイトは上がり。
交代の店員とは、軽めに挨拶して、店を出る。
店には、自転車で通っていた。
「帰り道に、コンビニで肉まん買おうかな」
なんて考えながら、置き場へ向かう。
やっぱり夜番というか、夜更かしは、体に良くない。
ちょっと、ふらついた足取りの自分がいた。
途中、店の駐車場で、エンジンをかけたままの車が一台見えた。
ちょっと高そうな、シルバーの、2ドアの、スポーツカーのような型。
車は詳しくないので、どれも一緒に見えるけれど。
なんとなく、高そうな車だなぁ、なんて思って見ていた。
車内にいるのはあの女だった。
ナビの画面に照らされて、顔の所だけ、ぼうっと浮かび上がっている。
「車でDVD見てるのかよ。」
独り言、自分では、冷静なつもり。
通りすがりに、中の女性と目が合うと、彼女は血相を変えて。
車から出てきた。
また嫌な目に会うんだろうか?
いやだ・・・
「あの!ちょっと、話いいかな!?」
深夜に逆ナン、いやそんなわけない、なんて思う以上に、さっきのレジの展開からして関わりたくなかった。
「えっ!?、いやあの用事があるのですいません・・」
早口、手を正面で左右にバタバタして、明らかに、自分のほうが挙動不審な動きをしていたと思う。
彼女が一方的に話かけて来る。
「私、あなたみたいな人、いままで見たことない、初めて見たの。」
「変な意味じゃなくて、さっき、頷いてたから、きっと分かってくれると思って!」
彼女も早口、自分はスタスタと駐輪場に向かう足取りを止められずに、歩き続ける。
彼女も並んで歩いてくる、キャッチセールスの勧誘みたいだ。
ちょっと早足で、振り切ろうとしたときに、少し距離が離れた彼女が、大きめな声で言葉を投げた
「足首の糸が! まだあの踏み切りに繋がってる!」
「あそこにはあんまり行かないほうがいいよ!!」
立ち止まってしまった。
忘れていた事を思いだしてしまった。
「他にも! 沢山繋がってる!」
彼女の、声のトーンが少し落ちる。
「中には危ないのも、いくつかある・・」
「私なら、君にアドバイスが出来ると思う」
私は、今までの事も全部見透かされたような気持ちになって。
救いを求める犬のような顔になって、振り向いた。
「うまく、言えた・・・」
ほっとしたような、優しい顔で、彼女が言った。
なにより先に、友人の事を話そうと思った。
うっすらと白む空、朝日に照らされて、まるで女神のように見えた。