waste 2
真冬の2月。
自分また、ビデオ屋のアルバイトをしていた。
あれから数々の就職活動をしてみてはいたものの。
昨今の事情か、特に経験もスキルも無い自分を使ってくれる場所は、なかなか見つからない。
すっかり夜型になってしまった自分には。
結局、自給そこそこ、作業が楽、慣れている。
との理由でまた、今度は、隣の町のビデオ屋で、深夜のアルバイトをする事にしていた。
ビデオ屋、と言うと語弊があるけれど、今は殆どDVDか、BDに置き換わっている。
ただし店の感じは古い、以前潰れた店を再改装しました、といった感じ。
ここは前の店の系列で、そう言われれば、24時間営業もちょっと珍しいかもしれない。
なぜかアダルトな作品の品揃えが豊富で、最初はかなり驚いた。
今日も深夜の店内、1時、2時を回ると辺りは閑散として。
自分と、もう一人の店員と、店内で二人ぼっちになることも珍しくない。
たまに、去年の怖い客の事や、強盗が来たらどうしようなんて考える。
そんな中、一人の女性が来店した。
身長は高く、パンツスーツで、スラッとした体系、黒髪長髪で、出るところはしっかり出ている。
「仕事の出来る女」
そんな感じの客。
怖い感じは全然しない。
しばらくして、レジに向かってスタスタと女性が歩いてくる。
それはもう、深夜のビデオ屋の店内なのに、都会の町を颯爽と歩くような感じで。
彼女の、さぞ充実した毎日を想像して、ちょっと嫉妬のような情けない気持ちを覚えた。
「しかし、こんな平日の、こんな時間帯にやってくる女性客は、大抵そういった趣味のアダルト作品などをチョイスするのだ!」
なんでナレーションを頭に流して、自分を慰めた。
DVD作品を数枚、彼女は差し出す。
バーコードをスキャンする、どれどれ・・・
「ピッ」
流行の海外ドラマ1
「ピッ」
流行の海外ドラマ2
「ピッ」
流行の海外ドラマ3
以上、三本。
普通じゃのう・・・・
と、ちょっと残念な気持ち、頭の中は、おやじだった。
「一本新作なので、二泊三日になりますが、よろしいてすか?」
答えて、女性の顔を見る。
蒼白だ。
お化けでも見るかのような目で。
目をぱっちり見開いて、こちらを呆然と直視している。
深夜の女性客、あまり良い思い出がない・・・
でも、以前よりかなり胆の据わっていた自分は、普通に接客を続ける。
「あの、一本新作なので、二泊三日になりますが、よろしいですか?」
女性は我に帰って、ちょっと顔を赤らめて、恥ずかしそうに早口で、答える。
「あっ、大丈夫ですよ・・・!」
清算を終える。
とたん、彼女が唐突に話しかけてくる。
「あの、よく危ない目にあったりしませんか・・?」
「いえ、いきなりごめんなさい!」
「その・・・」
「結構、変なもの見えたりする人でしょ?」
うわぁ、と思った。
眩暈がした。
あれは妄想だとか、幻覚だとかで済ませようとしていた過去の事が、一気にフラッシュバックして。
一瞬、意識が、ぐにゃぁ、として、立ちくらみのような感じになった。
「・・・・・」
うなづいて、引きつった笑顔をしたと思う。
彼女も、自分に話しかけた事を後悔したような感じで、その後は特に会話のないまま。
お互い気まずそうにして、彼女はそのままDVDの入った袋を受け取って店を出た。
後、一時間で上がりだ・・・
がんばろう!
そう思って自分を励ました。
先日の、友人の事が気がかりだった。