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waste 1

また少し、実験的な内容です。

「人生紙吹雪っ。」



・・・・・



散ってどうする友人よ。




「なんか間違ってない?」


返す。


「いや、似たようなもんでしょ、この年でフリーターだよ俺。」


「人生紙ふぶきッ!!」


強めに叫ぶ。


「俺もじゃん・・やめてぇ・・」


弱々しく返す。




 私も今年から仲間入りしたので、返す言葉が見当たらない。


小学校時代からの幼馴染、かつ、地元で暮らす友人。


団地の件やら、思い出したくも無い変人の件やら、面白い話と一緒に、いつも何かしら問題を持ってくる友人。


最近、少し様子がおかしい、怒りっぽくなって、不機嫌な日が多い。


私たちは同じ境遇なので、一緒に遊ぶ日が多い、変人の件にもめげなかった彼だったが、最近は少し変なのだ。


とにかく楽しそうに人生を振舞う彼なのに、最近はバイトの愚痴ばかり。


たしかに、年も年だから、いろいろ焦っているんじゃないか、と自分への戒めをこめて納得してみたものの。


やっぱりおかしい、性格が変わってきているようにも思えた。




 ある日、友人と一緒に出かけた先で、夕方の事。


冬は日が落ちるのが早くて、行く鳥もどこか寂しげに、夕暮れの町の稜線に消える。


二人分の影が先に伸びて、影もどこか寂しげに歩く・・・



・・・・・?




 何かおかしい、友人の影だけが、何かに無理やり引っ張られるように伸びている、身長は私の方が高いのに。


立ち居地の関係だろうか、最初は思った。


でもやはり変だ、頭の先だけが、まるでつねったほっぺたのように、引っ張られたように先に伸びている。



「最近、なんか変なことあった?」


私は、それとなく勘ぐるように、でもあっけらかんと、尋ねてみた。


友人は立ち止まった。



「実はさ、こないだ墓参りに行ったんだよね、なんというか、先祖に謝るというか・・・今の状態をさ・・・」


「そんな感じでさ、親戚にも、親にも言わないで、一人で。」



「親の車で行ったけどね! 足ないしっ!」


ちょっと「あはっ」と惚ける友人、いつもの感じだ。




「クズすなぁ~」


自虐的なことや、おかしな事を言ったときは、こう返すのが二人のルールだ。




彼は、彼なりに自責を感じているんだと分かった、いつも楽しげに振舞う彼だけど、やはりどこかでは、今の生活に後ろめたさを感じていたのだ。


「えらいじゃん!」


「立派!」


「御利益あるよ!」



自分なりに、彼を元気付けたかったけれど、なかなか言葉が浮かばない。




「ごめん、今日は帰るわ!」


友人はいきなり叫んで、そのまま来た方向とは逆向きに走り出した。





・・・・ひょっとしたら、もう会えないんじゃないか、そんな予感がした。




呼び止めることは出来なかった。


言葉が見つからなかった。


思い過ごしだ、きっとそうだ。


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