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 仕事をしていた頃。


朝も早くから、夜は深夜まで、ずっとデスクでパソコンに向かう毎日。


たびたび上司に不調を訴えていた私。


「弱いから。」


「それは甘えだと思う。」


と言われ、その通りだとも思ったが。


結局、体も心も壊してしまった。


ひょっとしたら、私の体験している事は、この時に調子を悪くした、自分の脳が原因かもしれない。


と、思う事がよくある。




 ある時、どうしようもなくなった私は。


いま「流行」のメンタルクリニックに、すがるように訪れた。


どうしようも無かった、朝起きても頭の中が真っ白。


服の着替え方すら、どうすればいいか、わけが分からなくなるざまだった。



 

 後から分かった事なのだが、こういった病院には何種類かあるらしく。


行けばとにかく薬と診断書を出してくれる所。


時間をかけて、薬やら、認知療法やら、箱庭やらなんやらで、自分の性格から、きっちり治そうとしてくれる所。


自分の行ったところは前者だった、診断書と、薬。


診察時間は10分くらい。


「とにかく薬を飲んで寝ろ」


言い方は優しかったが、要約すると、こんな感じだった。


結局、2ヶ月間休職して、退職を余儀なくされた。




 これだけだと、只の苦労話になってしまう。


今思うと、の話ではあるけれど。


その時に不思議な物を見た。


今思えば、あれからおかしな物を見たりするようになったかもしれない。




 待合室には、数人の患者がいた。


見た感じ全く元気そうな人もいたし、本当に目が虚ろで、会話も、歩くこともままならない。


といった感じの方もみえた。


当時、自分は人目にはどちら側に見えただろう・・・。


そんな中、一人が診察室に呼ばれて、よたよたと歩きながら自分の座っているソファの前を通過した。




 彼の背中から、糸のようなものが、ぷらりと出ているのが見えた。


風も無いのにはためいて、背中の部分ではロープぐらいの太さに見えたそれは。


床に着くぐらいには糸くらいにの細さになり。


どこかに繋がっているのか、でもそれは、床の途中で見えなくなった。


老人には数本。


よく見ると、一見元気そうに見えるもう一人の患者の肩あたりからも一本、同じものが出ている。




 たまに、空を見上げた時に見える、紐みたいな、目の動きと一緒について来るミジンコみないたやつだと思っていた。


その時はボロボロで、それどころではなかったし、どうでもよかった。




 病院には、それから何回も通っていた。


予約の時間や、出される薬の日数の関係なのか。


いつも、同じ患者と待合室で遭遇していた。




 ある時から、糸のたくさん付いていた方の患者をぱたりと見かけなくなった。


いつだったか、顔色のいい時期があったので、何度か言葉を交わした。


一ヶ月くらい経って、心配になって、彼の事を主治医に軽く尋ねてみた。



「プライバシーに関わることなので・・」



当然だけど、教えてはくれなかった。



「ただ、よくない選択をされる方は、私が診察した中でも、何人もみえます」



少し小声で、主治医はボソっとささやいた。




 私は、体の調子はかなり良くなって、主治医とも冗談を交わすくらいだったので。


少し気を許して、あんなことを口走ったのか。


では、ひょっとしたら、と思ったけれど、それからは、あまり考えないようにした。


そのときは、自分の事で精一杯だった。




 それからかなり経ったある日、その事を思い出した時から、自分にもその「糸」が付いているのではないかと思った。


たまに、風呂上りに、裸で洗面台の鏡の前で探してみた。


そんな物は自分の体からは出ていない、大丈夫だと思う、考えすぎか。



 それとも、自分の目には見えないものなのだろうか。




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