電車の少女 1
「墓参りに行こう。」
8月のある日、姉と話していた。
私は今、母と姉と三人暮らしで。
父とは離婚している。
どうしょもない父親だったので。
正直生きている内は会いたくない。
でも、父方の祖母・祖父には恩がある。
むかし、母が病気をして、入院していた事がある。
その時に、一年ほど、父方の実家に預けられたのだ。
祖母は優しくて、当時の自分はわがままだった。
面倒を見てくれた祖母に対して、私は、見知らぬ土地にいるストレスからか。
ひどい事を沢山言った。
それでも、祖母は優しかった。
私が高校生の頃、まだ父と同居している頃に。
祖父も、祖母も、他界した。
母は今でも、父方の祖父や祖母の事を、父と同じ目で見ている。
よく思っていないのだ。
だから、墓参りは姉と二人、行くことにした。
高速を使って車で二時間、はっきり言って、ど田舎だ。
焼き物で有名な所なので、それなり知名度はあるけれど。
でも、景色は、自分が預けられていた頃と、何も変わらない。
友人が以前、研修で訪れたどこかの街の事を、不謹慎なことに。
「時に忘れられた町・・」
と表現していた。
ここも同じだと思う。
父の実家には入らなかった、親戚の人とも会いたくないし。
多分、家はほったらかし、幽霊屋敷のようになっているかもしれない。
考えると胸が痛い。
墓参りを終えて、そのまま他県の友人と約束があると言う姉とは、最寄の駅で別れた。
自分には少し楽しみな事があった。
帰り道は鉄道で帰ることにしていたのだ。
「田舎の電車」
写真が趣味な自分には絶好のチャンスだと思った。
電車賃も片道なら半額だし。
嫌な思い出は忘れて、ちょっとうきうきしていた。
続