nightswimming 2
夜の学校。
といっても、校舎は古めかしい訳でもなくて。
見た目はまだまだ綺麗なもの、懐かしい白い壁。
年々校舎を増築して。
敷地内に。
まるで、城か要塞のように、ポコポコと、記憶には無い建物が建っていた。
友人の家は、中学校の側門の向かいにあり。
昔、学校が終わって。
「彼の家で遊ぼう!」
と言ったときは。
正門ではなく、閉まっている側門を飛び越えて。
そのまま彼の家に直行した。
ほかにも、時間ギリギリで遅刻しそうになった時。
校門で待ち構える体育教師を、遠目で目視して。
学校前の十字路を。
「回避っ!!」
とばかりに直角に曲がり。
側門をひょいっと飛び越えて、そのまま、そ知らぬ顔で教室に向かった事もあった。
学校を見るたびに、色々な事を思い出す。
決して、楽しかったと言える学生生活ではなかったけれど。
今、思い出せば、笑えるような事ばかりに思えた。
昔のことを思い出しながら。
昔のように側門を。
ひょいっと、飛び越える友人。
私は。
「どっこいしょ」
だった。
時間が流れたな、と思った。
防犯の為、当然、校舎には鍵がかかっていた。
二人とも予想はしていたけれど。
友人は。
「ちぇっ!」
とばかりにプールの方へ向かった。
本当に昔に戻ったみたいだった。
二人して、ニヤニヤ笑って。
プールの方へ走った。
フェンスをよじ登って。
水が張ってある。
月明りに照らされて。
夜目にも大分慣れた私には。
水面は宝石を散りばめたように、キラキラ輝いて見えた。
プールサイドには人影があった。
3人連れ、自分達と同じクチといった感じだった。
手を上げて。
「お互い内緒なっ!」
といった感じで挨拶する友人。
向こうも、手を上げて。
「おっす!」
といった感じだ。
夜中なので、声は出さない。
すぐに、特にやることもなくなって。
最初の盛り上がりが少し冷めた頃。
今の、現実の自分に戻るような、ちょっとさみしい気持ちがじわじわとこみ上げた時。
3人組の一人が、ぽーんとプールに飛び込んだ。
・・・・
それを見ていた友人も。
「おっしゃ!」
とばかりに飛び込む
「ザバーン!!」
大きな音が一回響く。
友人と、3人の内、飛び込んだ一人は、声を出さずにニヤニヤ笑いあって。
それを見ていた自分も、声を殺しながら、腹を抱えて笑った。
ちょっとまずいことしたな、と、さすがに友人も思ったのか。
プールをあがって、三人に手を振った後。
彼はびしょびしょで、それでも二人してニヤニヤ笑いながら。
学校を後にして、その後、すぐ向かいの彼の家でまた、朝まで飲んだ。
明け方、うっすらと明るくなる頃。
雑魚寝しながら、彼が言った。
「あいつ、飛び込んだ時、音がしなかったんだよな。」
「なんだか服装も髪型も、昔のヤンキーみたいだったしなぁ。」
「幽霊かな?」
冗談交じりだったけれど、そういえば確かに、と思った。
でも、怖いとは思わなかった。
だれかの思い出と一緒に遊んだような気持ちだった。
翌日昼頃、友人の家を後にして。
友人はその二日後、勤務地へ戻っていった。
「次は年末だなぁ」
そう言って別れた。